高野和明「ジェノサイド」角川書店刊
このミステリーがすごい! 2012年、週刊文春ミステリーベスト10国内部門、第2回山田風太郎賞、その他ベストテン入り多数
映画の原作、または映画そのものを見ているような舞台装置、場面構成でテンポよく展開する。ハリウッドが好きそうな近未来ものである。現代の最大権力アメリカ大統領とその側近周辺と、エイリアンもどきの突然生まれた超知能との戦いがはじまる。
そこに難病開発と、ミステリアスな研究者の死が絡み、CIA、公安警察の圧力が掛かり一層複雑化する。権力者の陥りそうな判断ミス、CIAや軍部が誤りそうな行動形式、その掌の中で動く傭兵。大きな権力が保身に走り、慎重に邪魔者を消そうとする。それを市民がかいくぐり、小さな正義を実現しようとする。
色々な対比が示され興味をいやが上にも引く。内容を詳しく述べると著者に失礼なのでやめるが、最終的には超人類が勝利する。日本人がこれだけのスケールの小説を書けたかと思うとグローバル時代でも日本は大丈夫だと変なところで安心した。とにかく面白い。ジェームスボンドのいない007を見たような感じだ。一読をお勧めする。