
真保祐一「デパートへ行こう!」講談社文庫 2009年単行本刊
真保祐一「ローカル線でゆこう!」講談社文庫2013年単行本刊
ゆこう!シリーズの第二、第三弾である。中身はガラッと変わっているが、エンターテイメントとしてはかなりの出来である。企業小説得意の著者らしく、背景描写も適確である。お陰で旅の合間、特に飛行機で移動のときなど重宝した。
前書は東京の老舗デパートの閉店後の暗闇に期せずして色々な人間が忍び込む。或いは居残る。その中にはお飾り社長を始め、訳あり警備員、復讐心に燃えた女性店員、生きる余裕をなくした中年男、家出高校生カップル、転落しかかっている元刑事などなど、少し積み込み過ぎのきらいもあるがとにかく賑やかな登場人物である。
なんとかこれらの登場人物がつじつまを合わせてハッピーエンドにもってゆく。これは大変な力量である。この点ではむしろ後者のほうがスッキリしている。傾いているローカル線の再建に、社長として抜擢された新幹線のアテンダントと県から派遣された役人が、手を組んで立ち向かう。そこに再建を妨げる謎の事件が頻発し、政治や個人の恨みが絡んでくるという、これも少しこんがらかり過ぎではあるが、それなりに面白い。
2冊とも旅先でのエンターテイメントとして十分楽しめた。