ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

Aランチ

2013年03月22日 | 飲食:食べ物(料理)

 ドライブインレストランの主役

 昨年(2012年)11月、埼玉の友人KRが沖縄旅行中、その1日(前の晩から翌日の夕方まで)を、宮崎出身沖縄在の共通の友人KYがKRの相手をした。
 その昼過ぎにKRからメールがあった。要約すると「昨夜深酒したせいもあるが食えねぇ、ルビーのAランチ、ボリュームが凄い」といった内容。
 ルビーとはレストランの名前、私の実家から歩いて行ける距離なので、私もよく知っている店、もうここ30年ほどはご無沙汰だが、若い頃は何度か行っている。
 Aランチとはメニューの名前、和食でいうところの松定食のようなもの。AがあればBもCもある。和食でいえば竹と梅があるようなもの。スープ(クリーム系が多い)、サラダ、ライスまたはパンが付き、大きな皿に肉系料理がいくつか載っているもの。

 今はあまり見ないドライブインレストラン、・・・いつごろから少なくなったのか記憶にないが、私が若い頃(30年くらい前)まではあちらこちらにあった。ドライブインレストランとは何ぞや?と改めて調べてみると、広辞苑にドライブインがあった。1に「自動車に乗ったまま見物・食事・買物などのできる映画館・食堂・商店など」、2に「主に自動車旅行者を対象として、道路ぞいに設けた食堂・土産物店」のことで、ここで言うドライブインは「2」の意味、ドライブインレストランはその食堂の方。ドライブインレストランについては次回に詳しく紹介するとして、ここではAランチ。

 子供の頃、ドライブインレストランに連れて行って貰うことが稀にあった。稀なのは特別ということ、その辺りの大衆食堂に比べると値段が高いので親としてもそうしょっちゅうは連れて行けないのであった。食べざかりの子供としては「今日はレストランで飯だ」と聞くと、それだけでもうウキウキワクワク、涎も垂れるのであった。
 ドライブインレストランで食いたい憧れのメニューと言えば決まっていた。Aランチ。親の懐具合でBランチやCランチになることもあったが、「何にする?」と問われれば、涎を拭いながら「Aランチ!」と当然のごとく叫んだ。
  私が記憶している当時のランチ(AかBかCかまでは覚えていない)の中味は、鶏の骨付きもも肉のフライ、ビーフステーキ、トンカツ、ハンバーグなど。どれも子供が大好きなものだ。少年はむしゃぶりついた。スープもご飯(またはパン)もサラダも全部腹に入れる。量が多いので食い終わると腹がパンパンに膨れた。

 上述の、KRがAランチを食った店ルビーは「ドライブイン」の付かないレストランだったと記憶しているが、AランチもBランチもCランチも置いていた。値段は確か1000円以内だったと覚えている。「安い、旨い、量が多い」で評判だったと思う。
 オジサンとなって消化器官の衰えた私にとっては量が多い、それも肉系の量が多いのはさほど魅力的では無い。ではあるがAランチ、懐かしい響きだ。でも、懐かしいとは思っても、喩えドライブインレストランに入ったとしても、きっと注文はしない。
 

 記:2013.3.17 ガジ丸 →沖縄の飲食目次


味噌汁

2013年03月08日 | 飲食:食べ物(料理)

 我は主役なり

 東京で5年間暮らした、といってももう35年ほども昔の話だが、その経験から、といってももう昔のことなので正確に覚えているわけではないが、食堂でメニューの食べ物、例えば野菜炒めとかショウガ焼きとかを頼むと、それ一品しか出てこなかった。ライスは別途注文しなければならなかった。「それが普通だろう」と東京の人は思うかもしれないが、ウチナーンチュは違う。沖縄の食堂では頼まなくてもライスは付いていた。
 ご飯を食べたい時、東京の食堂では例えば、「豚肉ショウガ焼きとライス」などと注文する。ライスを注文するとたいてい味噌汁も付いてきた。「何でライスは注文しないと出てこないのに、味噌汁は注文しなくても出てくるんだ?」と、遥か南のど田舎の、復帰して間もない頃の、沖縄の青年は思ったのであった。

 東京の食堂でも、○○定食と名のあるメニューを頼むとライスは付いていた。ライスだけで無く味噌汁も付いていた。その味噌汁も、ライスを注文した時付いてくる味噌汁もたいていは汁碗に入ったワカメとか豆腐の味噌汁であった。
 我が家でも、母が作る味噌汁にはワカメとか豆腐の味噌汁もあったが、どちらかというと、豚肉や、時には鶏肉やポークランチョンミート(スパムとか最近では言う)の入った味噌汁が多かった。味噌汁には肉の脂がたいてい浮いていた。
 あっさり系の好きな私は倭国風の味噌汁を好んだが、父は脂の浮いた味噌汁を好んだ。ウチナーンチュの多くはおそらく父と同じであろう。父はオーハンブシーが好物であった。オーハ(葉っぱ)ンブシー(煮込み)とは葉もの野菜、キャベツとかチンゲンサイとかをたっぷり、脂身の付いた豚肉、手でちぎり入れた島豆腐の入った味噌汁。

 倭国にも豚肉の入った味噌汁はあった(今もあるはず)。それは豚汁という名で呼ばれていた(今もそうであるはず)。角切りの豚バラ肉、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、長ネギなどが具材。冬の食べ物という印象を私は持っている。体が温まる料理であった。
  沖縄の大衆食堂には味噌汁というメニューが年中無休で置いてある。倭国のような汁碗に入ったワカメや豆腐の味噌汁では無い。沖縄の大衆食堂のメニューとなっている味噌汁はメインディッシュとなるものである。丼に入った豚汁に似たもの。
 味噌汁を注文すると、何も言わずともライスは付いて来る。時には漬物も付いて来る。丼の味噌汁をオカズにご飯を食べる。味噌汁は主役だ。脂の浮いた味噌汁が好きなウチナーンチュ、脂を摂取して元気を付け、暑い夏も寒い冬も乗り切るわけだ。

 なお、味噌汁についての広辞苑の説明は「野菜・豆腐などを実として、出し汁に味噌を溶かしたもの」となっている。主役とか脇役とかの区別は無いようだ。
 

 記:2013.3.8 ガジ丸 →沖縄の飲食目次


煮付け

2012年09月28日 | 飲食:食べ物(料理)

 煮付けというメニュー

 先日、埼玉の友人Kが遊びに来て、9月9日から14日まで『宮古諸島オヤジ二人旅』を一緒した。初日は宮古島泊り。宮古島に着いたのはお昼前だったので、ホテルに荷物を預け、近くの食堂へ昼飯を食いに行った。Kが選んだ店は普通の食堂。
 そこでKは、その店の(正式な名称は忘れたが)スペシャル宮古ソバを注文した。スペシャルの所以はソバの上に乗っている具材、豚三枚肉(ラフテ風味付け)、ソーキ(豚の骨付きあばら肉)、軟骨ソーキ(同部位の軟骨部分)、足ティビチ(豚足)、カマボコなど。ボリュームたっぷりだ。野菜はほんの少しの刻みネギのみ。
 私は沖縄ソバ(宮古ソバ、八重山ソバ等も含め)が好物では無いので、ソバ専門店では無い食堂に入って沖縄ソバを頼むことはあまり無い。概ねご飯ものを注文する。そして、もしその店にそのメニューがあればたいてい選ぶメニューがある。煮付けと言う。

 沖縄の食堂には倭国では見かけないメニューがいくつもある。ゴーヤーチャンプルー、ナ-ベーラーウブシー、ソーミンタシヤーなどなど、概ね、野菜と島豆腐と豚肉、またはポークランチョンミート(スパムとかチューリップとか)を一緒に炒めたり、炒め煮したもの。テビチ汁、ソーキ汁なども含め、それらは名前からしてウチナーグチ(沖縄口)なので、沖縄独特の野菜を使った沖縄独特の料理だな、と想像できると思う。
 沖縄の食堂にはまた、名前は和語だが「その中身は何?」と疑問に思うであろうメニューもある。例えば「おかず」、「味噌汁」なんてのがある。「おかず?ってご飯の副食になるものはみんなオカズでしょ?」と思うはず。「味噌汁?って、定食頼んだら普通付いて来るあの味噌汁?それが主役のメニューって何?」と思うはず。
 「おかず」や「味噌汁」については、いつか述べることにして、もう一つ、「これの中味はいったい何?」と思うであろうメニューがある。それは「煮付け」。

 「煮付け」、広辞苑に「煮付」の表記で載っている。「煮付けること。また、煮付けたもの。」とある。「煮付ける」とは何ぞや?で広辞苑、「野菜や魚肉などを調味した汁がしみこんで味がつくように煮る。」とのこと。沖縄の「煮付け」もその通り。
 倭国なら、例えば「カレイの煮付」、「鶏肉の煮付」、「ダイコンの煮付」などと材料の名前が前に付くであろうが、沖縄の「煮付け」には材料名が無い。なので、「いったい何の煮付けなの?」と、知らない人は戸惑う。しかし、私のように知っている人は何ら戸惑うことは無い。「肉や野菜を煮付けた料理である」と認識できている。
 どんな肉や野菜を煮付けたのかは店によって違うが、概ねは、豚肉(三枚肉とかソーキとか)、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、結び昆布、島豆腐(または揚げ豆腐)、コンニャク、チキアギ(揚げカマボコ)などが入っている。
  味付けは砂糖と醤油が基本。なので、店によって味の差(上手下手は多少ある)はあまり無い。であるが、「どんな肉や野菜を煮付けたのかは店によって違う」ので、この店はどんな具材を煮付けているのであろうかと楽しみある。よって、その店にそのメニューがあればたいてい「煮付け」なるメニューを私は頼んでいる。

 宮古島の、Kが昼食に選んだ普通の食堂で、私が注文した「煮付け」は、これまで私が食べた「煮付け」の中でも断トツに材料の種類が多かった。三枚肉、テビチ、ソーキ、軟骨ソーキという肉類、厚揚げ、ゴボウ、ダイコン、ジャガイモ、ニンジン、ヤマイモ、カボチャ、ピーマン、結び昆布など野菜も豊富。美味しかった。
 

 記:2012.9.28 ガジ丸 →沖縄の飲食目次


マッシュポテト

2012年04月20日 | 飲食:食べ物(料理)

 アメリカ食の一つ

 私の小さな畑で今年収穫したジャガイモは、商品になりそうな大きさのものだけで約90個、種イモは20個だったので、種イモ1個からだいたい4~5個できたことになる。そのうち約40個は親戚友人たちにあげたので私の食料となったのは約50個、ジャガイモが主食になったのは3月5日から、これを書いている今日は4月6日、ジャガイモはまだ数日分は残っているので、ジャガイモが私の主食になったのは約1ヶ月、50個が1ヶ月分だったことになる。種イモがいくらだったか忘れたが、まあ、千円はしなかっただろう。全部自分で消費すれば、千円で1ヶ月半位は生きて行けるわけだ。

 私は、週に2日の出勤日には弁当を持って行き、1日3食となるが、その他の日は1日2食である。朝食はその日一日のエネルギーに使われるもの、夕食は寝ている(体が休んでいる)間に体が必要とする養分を摂取するものという考えである。出勤日は、概ね事務仕事なのだが、その日突然現場仕事(肉体労働)ということがあるので、それに備えてのもの。肉体労働はエネルギーを激しく使う。昼飯抜きだと夕方まで持たないのだ。
 一週間に16食、その毎食毎食がジャガイモだったわけでは無い。弁当はジャガイモ、夜の肴にもジャガイモは出てきたが、ソバ、ウドン、スパゲッティーなどの麺類やパンもこの一ヶ月の間に数える位は食べている。「ジャガイモだけだと飽きるから」というわけでは無く、「ジャガイモだけだと楽しく無いから」という理由による。

 一ヶ月の経験から、ジャガイモを主食にしても飽きることは無いという結論を得た。私は将来、甘藷(サツマイモ)を主食にして生きていこうと計画しているが、3月4月の二ヶ月間はジャガイモ月間にしてもいいなと思った。
 私のジャガイモは完全無農薬有機栽培である、といっても、ジャガイモは元々病害虫の少ない作物で、私のジャガイモにはカメムシが少しいて、葉を少し齧っているくらい。肝心の土中の芋もいくらかは何者かに齧られた跡はあったが、気にならない程度。
 無農薬有機栽培のジャガイモは皮ごと食う。たわしで表面の泥をきれいに落とし、その後は、そのまま蒸す、煮る、スライスして焼くなどして食う。この中ではスライスして焼くが一番旨い。表面に少々の焦げ目が付いてパリっとなった位の焼き具合、塩を振って、あるいはスライスチーズを乗せて食べる。蒸したものも旨い。甘味が出る。

  蒸した(普通は茹でた)ジャガイモを皮ごと(普通は皮無し)潰して、練る。これにハムやタマネギ、茹でタマゴを加え、マヨネーズで和えるとポテトサラダになる。私の好きな食べ物の一つだが、今回のジャガイモ月間では、それは1度しか作らなかった。ポテトサラダは主食には不向きだからだ。パンのおかず、ワインの肴に向く。
 蒸したジャガイモを皮ごと潰して、練る。それをそのまま食う。塩も胡椒も要らない。味付けは要らないがおかずは要る。他の野菜の漬物や目刺がおかずとなる。
 普通は皮無しで、普通は茹でたジャガイモを潰して、練る。これに味付けしたものをマッシュポテトと言う。青い箱に入った、平たい白い粒を器に移し、それにお湯をかけて、練って、あれこれ味付けした(概ねマヨネーズ味)ものを子供の頃たまに食べていた。それがウチナーンチュのマッシュポテト、アメリカからやってきた食文化の一つだ。

 マッシュポテトが広辞苑にある。mashed potatoesと書く。「ジャガイモをゆでて裏漉ししたもの。バター・牛乳などを加え、肉・魚の料理の付合せとする」とのこと。
 

 記:2012.4.6 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ソーミン汁

2011年04月04日 | 飲食:食べ物(料理)

 ルーイぞうめん

 ウドンやソバのかけウドンやかけソバのように、茹でたソーメンに熱い出汁をかけたものを沖縄では(一般的かどうか?少なくとも私の周辺では)ソーミンジル(汁)と言う。正式には何と言うのかを調べると、『沖縄大百科事典』に「ルーイぞうめん」とあった。「ルーイぞうめん」と表記されているが、ウチナーグチ(沖縄口)では「そうめん」はソーミンなので、おそらく発音は「ルーイソーミン」だと思われる。
 『沖縄大百科事典』の「ルーイぞうめん」の説明は、「茹でたソーメンの上に豚肉、昆布、椎茸、薄焼き卵などを乗せ、熱い汁を注ぐ・・・(中略)・・・結婚式や誕生祝いなどめでたい時によく出される」であった。倭国のニュウメン(煮麺)に近いものかもしれない。私の母は、豚肉と鰹節で出汁をとって、塩と醤油で味付けした汁を使い、豚肉、椎茸、細切りした薄焼き卵、青ネギを乗せた。確か、何かの行事の時に出た。

  「ルーイソーミン」の「ルーイ」、私は初めて聞くウチナーグチ、何のこっちゃ?と思って調べる。ruuhwiが沖縄語事典にあって、「竜樋」と字があてられ、「首里場内、瑞泉門の下にある竜の形をした樋」とのこと。そこの水が大変美味しいとのこと。「そこの水のように大変美味しいから」なのか、その場所で宴会があり、そこで初めて披露された料理だからなのか、名前の由来は、資料が無く不明。
 ちなみに、「樋」とは、「水を導き送る長い管」(広辞苑)、または「とい」(〃)のことを言うが、沖縄語の「樋」は「樋川」の川を略したものと思われる。「樋川」はヒージャーと読み、「水の湧き出るところ」(沖縄語辞典)という意味を持つ。ルーイは知らなかったが、ヒージャーは山羊という意味で子供の頃から何度も耳にしていて、今でも普通に口から出る言葉だが、「水の湧き出るところ」という意味でもよく知っている。
 
 正式にはルーイぞうめんという名前だが、私も、私の親も、親戚も、友人知人の誰もルーイぞうめんと言ったことは無いし、聞いたことも無い。庶民の呼び名はソーミン汁、私の母もよく作っていた。母の作るソーミン汁は美味しかった。
  実家を出て一人暮らしを始めてからは、母のソーミン汁を食べる機会も減って、その存在も忘れかけていたのだが、今から3年前(2007年)、料理屋さんで、お口直しみたいにしてソーミン汁が出され、久々に食べた。見た目は母の作るソーミン汁と一緒、それなりに美味しかったのだが、母のものとは少し違う。何か一味足りない。
 今年9月の模合(正当な理由のある飲み会)は、メンバーのMTの家で行われた。MTの女房のMMは料理上手(若い頃から沖縄料理は上手かった、私の母には及ばないが)である。その日、彼女のソーミン汁が最後に出された。料理屋で出されたソーミン汁に負けない美味しさ、だけどやはり、母のものとは少し違う。何か一味足りない。

 母が三年前に、父が今年亡くなって誰も住む人のいなくなった実家に、お中元やお歳暮で頂いたソーメンがたくさんあった。ソーメンにも賞味期限がある。で、持って帰って、食べている。お陰で、芋食って生きて行こうという芋生活ができずにいる。
 9月以降、芋の代わりにソーメンを食っている。ソーメンをいろいろ工夫して食っているが、ソーミン汁も数回作った。豚肉から出汁を取り、カツオ出汁も加えて、塩と醤油で味を調えて・・・という母の作り方を真似て作っているが、何度やっても母のものとは少し違う。何か一味足りない。きっと何かコツがあるのだろう。今となっては遅いが、生きてる間に、主婦歴50余年の母の技を習っておくべきだった。
 
 

 記:ガジ丸 2010.10.24 →沖縄の飲食目次