先週、クガ兄の作『フロムホットボックス』をユイ姉が歌った。ちょっと聴いた感じでは、おネェちゃんが隣に座ってくれる飲み屋で、彼女らは商売上の優しさなのに、それに惚れてしまいそうになる男が、「これはいかん、帰ろう。」という内容であった。
「その唄、クガ兄の実体験なの?」と訊いた。
「うん、そうだね。あの人、そういう店好きだったから。お金も無いくせに。」
ユイ姉は今週も島にいる。久しぶりだからのんびりしたいとのことで、先週の金曜日に来ているから今日で八日目、店は信頼できる従業員に任せているとのこと。確定申告なんてのも済んで、忙しさは過ぎたとのこと。明後日には帰る予定になっている。
「まあ、人間の男はバカだよな。コロッと騙されて、無い金もつぎ込んでしまうくらいになるからね。ここにも一人いるけど。」と言って、私はケダマンを見る。そう言われて彼は、「うん、いかにも、俺こそがコロッと騙されるバカだ。」と思っているのか、強く頷いて、胸を張る。どうも、それを自慢すべきことだと思っているらしい。
「ホントさあ。ウフソーさあ。見てて腹立つよ。何で私が稼いだお金を他所の女に使うんだよ!ってね。まったく。それが離婚の原因にもなったわけさあ。」
「ふん、ふん、ふん。だけど、その場限りの擬似恋愛なんてのも楽しいぜ。」とケダマンが言う。なるほど、その場限りの恋愛は男の勲章ってことみたいだ。
「そうかねぇ。独身だったらまだ許されるかもしれないけど、女房がいて、女房のお金で浮気するんだよ。私はサイテーと思うさあ。あっ、そういえばさあ、似たような唄、もう一つあるよ。『ホットボックス』は踏み止まるけど、この唄は手練手管にコロッといっちゃうって唄でさ、私からすればとても腹の立つ唄さあ。そんな唄作って、女房の前で歌う奴だったんだよ。まったく。」とユイ姉は言って、ピアノに向かった。
その唄の題は『酔っ払ったネコ』で、それを歌い終わってから、
「昔のことだから今は歌えるけど、思い出したらやっぱ、ちょっと腹立つね。気分変えようっと。」と言い、その後、スタンダードの曲をいくつか続けた。
演奏が終わって、カウンターに戻ってきたユイ姉に、
「酔っ払ったネコって、ネコも酔っ払うのか?」なんて、ケダマンが的外れなことを訊く。その質問はまったくどうでもいいのだが、そこから、ガジ丸が酔わないという話になり、大酒飲みの話になり、誰が一番酒に強いかっていう話題で盛り上がった。
「酒豪と言えばマミナだけど、たくさん飲むには飲むが、飲んだら酔うし、酔ったらすぐ寝てしまうし、彼女が一番ということは無いな。」(私)
「長いこと飲み屋のママをしているユイ姉はどうなんだ?」(ケダ)
「私?私は強くは無いね。ビールをジョッキに4杯くらいかね、限度は。」
「マナはどうなの?」(私)
「私は弱いと思う。飲み屋で働いていた時も、飲んでいる振りをしてたよ。」
「ジラースーは、最近はあまり多くは飲まないけど、若い頃は強かったね。」(私)
ケダマンと私もよく飲むが、よく飲むの”よく”は回数であって、量では無い。少々飲んで、ほとんど毎回酔っている。シバイサー博士は四六時中飲んでいて強いようだが、いつも目がとろーんとしているので、常にいくらか酔っていると思われる。
「おそらく、ガジ丸とモク魔王が1、2を争うだろうな。あいつらいくら飲んでも酔わないもんな。ネコ2匹が大酒豪だな。」という結論に、だいたい達した。
記:ゑんちゅ小僧 2008.5.9 →音楽(酔っ払った猫)