ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

他人の活躍

2010年04月09日 | 通信-社会・生活

 先週土曜日のお昼後、近くのスーパーへ買い物に出かけた。そのスーパー、土曜日曜はたいてい混んでいて、駐車場も空きが少ないのだが、この日は入り口近くにも空きがあって、すぐに停められた。店内に入ると客も少ない。レジも並んでいない。もう一ついつもと違うことがあった。店内に流れる音楽が野球の中継放送になっていた。
 夏の高校野球、沖縄の興南高校が決勝に進出し、その決勝戦が行われていたのだ。決勝戦に進出したというのは前日のニュースで知っていたが、決勝戦のことはすっかり忘れていた。私に郷土愛が無いというわけでは無い。戦う本人達やその身内の人達にとっては大いに喜ばしいことであろうが、興南高校が優勝したからといって、私の幸せには何の影響も及ぼさないと思っているだけだ。実際、何の影響も無い。
 スーパーから図書館へ向かった。信じられない(信じられる人もいるかもしれないが)ことに、図書館でも、いつもの静かな音楽では無く、野球の実況を流していた。そこで閃いた。「今なら道路も空いているに違いない。今のうちにHの店に行こう。」と決め、そこへ向かう。Hの店のHPアップ作業を毎週やっている。その作業に。
 H夫妻は、私とは違って郷土の野球少年を我が身内のことのように思うタイプだ。それでもまさか、店を閉めて家で野球観戦なんてことはあるまい、きっと、店内でテレビを観ているか、ラジオを聴いているかしているだろう、と踏んだ。が、しかし、私の予想は外れた。店には貼り紙があり、出張中とある。「出張?夫婦揃って出張?何処へ?」と思いつつ電話する。「家で野球観てるさぁ、あんたもこっちへおいで。」とのこと。

 私はH夫妻の誘いをお断りして末吉公園へ向かった。土曜日の午後はゲートボールのお年寄り、散歩する人、家族連れで遊びに来ている人たちなどで、いつもなら少々煩い末吉公園だが、今日は空いているに違いない。のんびりと散策できるに違いない。
 Hの店から末吉公園へはルートがいくつかある。その日は、いつもは通らないルートを選んだ。そのルートは最も近道だが、混んでいる交差点を経由しなければならない。なので、混雑の嫌いな私が普段避けているルート。ただ、その、常に混んでいる交差点が、興南高校の決勝戦でどうなっているかに興味があった。
 「郷土の高校が甲子園で決勝戦をやっている」威力は、常に混んでいる交差点にも影響を及ぼしていた。すんなりと抜けられた。「郷土の高校が甲子園で決勝戦をやっている」威力は、予想通り、末吉公園にも影響を及ぼしていた。1時間ほど散策している間に私が見かけたのはたったの7人だけであった。家族連れはいなかった。

  私も若い頃はスポーツ観戦に熱中した。高校野球(沖縄の高校の試合に限る)、プロ野球(贔屓の選手、球団に限る)、大相撲(贔屓の関取に限る)、プロボクシング(沖縄の選手、または日本の選手のタイトルマッチに限る)などに熱中した。
 しかし、オジサンという歳になって、「応援するチームや選手が勝ったからといって、俺の幸せには何の影響も及ぼさない。」ということを知ってからは、少なくとも熱中はしなくなった。より身近なチームや選手に感情移入して「その選手は自分である」錯覚ができなくなったのだ。「他人の活躍だ」と思ってしまう。しかしそれでも、宮里藍やイチローが活躍することは望んでいる。他人の幸せを妬むほど捻くれてはいない。
          

 記:2010.4.9 島乃ガジ丸