長引く不況によって私の勤める会社も収入がガタ落ちし、元々変則雇用の私は週休3日であったが、2009年8月からは週休4日となり、2010年3月からは週休5日となる。週休5日の給料は5、6万円しか無い。毎月が赤字生活となった。
その赤字をいくらかでも埋めるべく、まあ、週に休みが4日間もあるという時間の余裕もあったので、2009年9月から親戚の土地を借りて野菜作りを始めた。
その土地は元々畑だったわけじゃなく、宅地であった。現状は雑草生え放題の土地。先ずは除草から始める。地上部を刈り取って、そのあと耕しながら雑草の根の除去、石ころの除去などを行う。雑草だらけ石ころだらけだった土地に堆肥を混入して、先ずはたったの5坪程だが、野菜の苗を植え付けたのは年明け2010年1月となった。
しかし、その年の春、父の具合が悪くなり、介護をし、入院し、葬式がありなどして、また、財産の相続届けが煩雑で多くの時間を費やしたこともあり、畑は放ったらかしになった。雑草だらけの畑に逆戻りしてしまった。で、また一からやり直しとなる。
翌2011年の冬から畑作業をコツコツ始め、春には念願の畑小屋も完成し、園路作りも順調に進んで行った。ところが5月、旧アパートでのシロアリ騒動、実家へ一時引っ越し、現アパートへの引っ越しなどがあり、夏には、またも畑は雑草だらけとなる。
雑草が蔓延る畑、炎天下で汗びっしょりになりながら草抜きをしている時に、「あー、来る日も来る日も草抜きばかり、もう嫌だ!」と太陽の熱に頭が爆発し、そしてふと、魔がさした。「除草剤を使おう」と。除草剤を使ったのは、敷地内の、畑にはしていない個所である樹木の下、園路、刈草置場などで、そこも全面散布したわけでは無く、狙いは主にコウブシとハイキビであったが、それでも、夏の間に数回は撒いた。
「過去は振り返らねぇ」とカッコ良く生きたいのだが、私は時々過去を想い出し、「あーぁ」とため息をつき、後悔することがある。除草剤も後悔となった。
今年になって、ヤンバル(山原と書く、沖縄島中北部の通称)の無農薬有機栽培農家、Iさん、Tさんと会い、その話を聞く機会を何度か得ている。先週木曜日(12日)に4度目の訪問をした。栽培技術の他、有機栽培の良さなどを教えて貰っている。
「無農薬有機栽培の作物が人間の健康にとっていかに大事であるか」をIさんやTさんは語る。健康な野菜を食べることによって健康な体が作られるということだ。「さもありなん」と私も思う。思いはするが、不健康野菜を食べ続けるとどうなるか、健康野菜を食べ続けるとどうなるかといった実験をしたことが無いので、ここではっきり「健康野菜は体の健康にもいいよ」と結論できない。ので、「いいらしいよ」としておく。
去年の夏、除草剤を使ったが、それを後悔し、反省した。で、それ以降、私の畑にはいつでもどこにでも雑草が生えている。おそらくもう、畑に撒かれた除草剤もその毒性を失っているに違いない。よって、私の畑の野菜は健康野菜である、としておく。
ただ、私が健康なのは我が畑の健康野菜を食っているからとは、結論できない。元々体が丈夫だからかもしれないし、呑気に生きていてストレスがほとんど無いせいかもしれない。あるいは、沖縄の風土が私の心身に合っていて、それに助けられているのかもしれない。ただ一つ言わせてもらえれば、「健康野菜は美味しい」、これは間違いない。
記:2012.4.20 島乃ガジ丸