ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

草の匂いのする里

2013年04月19日 | 通信-環境・自然

 実家は那覇市の街中にあり、生活に便利である。便利とは、バス停が近い、モノレールの駅までも徒歩10分程、徒歩5分圏内には3つの銀行、郵便局、2つのコンビニ、いくつもの飲み屋、食い物屋、いくつもの病院、ひとつの小学校がある。
  徒歩5分を少し超えた所に中規模の公園があり、そこまで行けばデイゴやガジュマルの木に出会え、草の匂いを嗅ぐことができる。が、実家の周りはコンクリートとアスファルトに囲まれている。庭のある家も少なく、庭があったとしても玄関前のほんの小さなスペースしかない。実家の北隣はその小さなスペースにツツジなどを植えているが、南隣と東隣の家、そして私の実家の敷地には土の地面がほとんど無い。
 隣家との間は隙間も小さい。3軒とも1~2m前後しか無い。よって、実家の西は道路に面して明るいが、隣家のある北、東、南に面した部屋はいつも暗い。 

 先月、千葉に住む弟が帰省した際、「定年になったら沖縄に帰ろうかと考えている」と彼が言うので、「なら、この家を残しておいて、ここに住めば?」と私は提案した。弟の答えは「この家は暗い」であった。暗いので住みたくないということだ。
 私は、暗さはあまり気にならなかった。私の部屋が他の部屋に比べて比較的明るかったせいかもしれない。そういえば、居間や食堂、トイレなどは昼間でも電灯が必要で、弟の部屋なんかはそんな中でも特に暗かった。私が実家に住む気になれないのは、暗いからというのでは無く、実家の敷地には土の地面がほとんど無い、という理由である。

 従姉の息子の女房M女は美人で賢い私好みの女性で、よくメールのやり取りをし、たまには会って話もする。彼女とは楽しい時間を過ごせる。であるが、彼女には大きな欠点が2つある。1つは「酒が飲めない」で、もう1つは「虫が苦手」。「苦手」はアリさえも嫌がるほど。小さな蛾が体に着いただけでギャーギャー言う。
 飲みに行く以外にデートアイテムが無いという私にも問題があるが、酒が飲めないのでデートに誘えない。また、虫が苦手なので土いじりも難しい。草の間、地面の上、地中にたくさんの虫がいる私の畑でお手伝いなんて、とても無理。というわけで、彼女と私は共有できる時間をほとんど持てない。よって、メル友付き合いとなる。残念だが。
 「大地は命の糧、草の匂いは命の息吹」だと私は思うのだが、虫が嫌いで野良仕事もできず、草原を歩き回ることもできない、そんな人は今、きっと増えているのだろう。コンクリートとアスファルトの社会が育て上げた人種なのかもしれない。
          

  私が小学一年まで住んでいた家は庭があり、祖父がトマトやトウモロコシなどを育てていた。小学二年の時に今の実家に引っ越した。その頃、周りの道路がアスファルト舗装され始めた。それでもまだ、2軒隣には空き地があり、草が茂っていた。徒歩5分ほども行くと、小金森という名のちょっとした森があり、少年たちはコーラル(サンゴ石灰岩)敷きの道を歩いて小金森へ入り、木に登り、草に埋もれ、泥んこになって帰った。
 私が土の地面に愛着を持っているのは、そのような子供の頃の幸せな体験があったからかもしれない。土に触れていると安心感を得られる。草の匂いを嗅いでいると気持ちが良い。私の終の棲家は草の匂いのする里以外には無いと思っている。
          

 記:2013.4.19 島乃ガジ丸


ミズスマシ

2013年04月19日 | 動物:昆虫-甲虫目

 スイスイ世間を渡る

 「良い歌だね、面白い歌だね」といった評価をくれる人が片手で数えるほどしかいないので、その歌が世間に出ることは無く、この先出ることもほとんど期待できないけれど、私はこれまで、たくさんの歌を作っている。作詞作曲している。
 歌作りは高校の頃からやっていて、その当時のもの、歌詞を書いたノートも楽譜も消え失せているが、それでもまだその内のいくつかは覚えている。その後、大学生になってからも創作は続け、その中のいくつかは歌詞を書いたノートも楽譜も残っている。

  大学生になってから作った作品の一つに『ミズスマシ』というタイトルの歌があって、それは歌詞も曲もほぼ完全に私の脳が記憶している。曲を記憶しているのは何度も演奏したから。歌詞を記憶しているのは、その歌の歌詞がごく短いから。
 すいすい すいすい 風のように
 すいすい すいすい 一人ぼっちで
 世間を渡って行くのさ おいらミズスマシ
 歌詞はたったこれだけ。その前に延々と楽器だけの演奏があって、最後にこれだけを歌うという作品。これを当時結成したばかりのバンドのリーダーが気に入って、練習曲の一つとなった。で、私がボーカル(作った人の自己責任)となって何度も演奏した。

 じつはその歌、今さら訂正するのも申し訳ないことであるが、タイトルのミズスマシについて私の誤認があった。当時のバンドリーダーKは、楕円形のミズスマシがスイスイと軽やかに水上を流れている光景を想像したかもしれないが、私の頭にあったミズスマシはアメンボであった。私はずっと、アメンボのことをミズスマシと思っていたのだ。そうで無いことい気付いたのは、このHPで昆虫を紹介するようになった数年前の事。

 
 ミズスマシ(水澄まし):甲虫目の昆虫
 ミズスマシ科 琉球列島、台湾、中国、東南アジアなどに分布 方言名:不詳
 ミズスマシは「ミズスマシ科の甲虫の総称」とのことだが、語源については資料が無く不明。澄ましは「洗い浄めること」(広辞苑)のことだが、別に「平気な様子をする」(同)という意味もある。水面を平然と走り回るということで私は納得。
 池沼や水田、水たまりなどの止水域で見られ、たいてい集団となっている。氷の上を自在に滑り回るスケーターのように水面を滑るようにぐるぐる動き回っている。ほとんど水面上で生活しているようだが、水中に潜ることもできる。
 ミズスマシの仲間は沖縄に4種が分布するとのこと。オキナワオオミズスマシ、ツマキレオオミズスマシ、オオミズスマシ、ヒメミズスマシとある。この中でオキナワオオミズスマシの体長は15~20ミリあり、日本最大のミズスマシとのこと。文献にはもう一種ツマキレオオミズスマシも載っており、その体調は8ミリ内外とのこと。
 体は流線型で、上から見るとラグビーボールを縦半分に割った形。ミズスマシの仲間は複眼が上下2対に分かれ、水中と水上を同時に見ることができるとのこと。
 成虫は周年見ることができる。なお、写真はどの種であるか判別できなかった。

 記:2013.4.8 ガジ丸 →沖縄の動物目次