ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

マルチの効果も限界

2013年08月09日 | 通信-環境・自然

 先ず、言葉の説明から。マルチとはマルチ商法、マルチタレントといった「多数の」とか「多面的な」という意味のマルチでは無く、農業用語のマルチングの略。「広義には、農作物の根ぎわを藁や草などで覆う・・・(中略)・・・特に地温上昇による促成、雑草防除などのために、ビニールで耕地を広く覆う栽培法をいう」(広辞苑)のこと。引用が長くなったが、普通は「特に・・・」以降のビニールで覆うことで、私の場合は「広義では・・・」の根際を藁や草などで覆うとなっている。

  「雨が降らないよー」と農夫が嘆いても、「降ってくれよー」と祈っても、雨は降ってくれない。畑はあちらこちらで深い地割れが起き、地面が割れるついでに植物の根も割って、作物は枯れるもの、枯れないまでも実を着けないものとなっている。乾燥に強いとされているラッカセイも数株が枯れてしまっているが、ラッカセイは逞しく育てようと、植えた当初から水やりをしていない。それで数株が枯れただけなので「まぁ、いいか」と今も水をやっていない。収穫までもう少しだ、頑張ってねと祈ってはいる。

  雨の降らない夏だが、今年はまた、例年になく暑い。倭国では35度を超える猛暑日なんて日もあるようだが、沖縄で35度を超えたのは観測史上無いのではないかと思う。34度を超えるのがひと夏に1回か2回あるかどうかだったと思う。
 「思う」だけではいけないので調べてみた。沖縄気象台の記録によると、那覇市の2003年から2012年までの10年間の7月8月、620日間の毎日の最高気温は、33度台が83日、34度台が16日、35度台も2日あった。34度台がひと夏に1~2回というのは当たっていたが、35度台も10年間で2日はあったようだ。
 ところが、しつこいようだが今年は暑い。7月は33度台が14日、34度台が1日で平均は平年値を上回っている。8月になるとさらに暑くなり、昨日までの8日間で33度台が5日、34度台が3日(35度に近い日が2日)と恐ろしいばかりの暑さだ。

  気温が高い、つまり太陽光線が強いと地温が上がる。地温が上がると地中の水分が蒸発して地割れが起きることになる。地温が上がるとまた、作物の根が傷む。根が傷むと枯れたり、育ちが悪くなったり、実を着けなくなったりする。農夫は生きていけない。なら、地温が上がらないためにどうしたらいいかというと、冒頭に挙げたマルチ。
 なっぴばるには11の畝を立てており、今、その内の3畝にラッカセイ、1畝にビートを植えており、あとはニラやオクラなどがポツンポツンと少々あり、概ねは背の低い雑草を中心に草は生えっ放し。ただ、ラッカセイとビートのある4畝は除草をしており、ラッカセイの畝はすべて裸土だが、ビートの畝は刈り草(主にチガヤ)でマルチした。
          
          

 除草の効果は、太陽が作物に十分当たり、風通しが良くなるというプラス面と、土が裸になり乾燥を速めるというマイナス面がある。なので、マルチをして乾燥を遅らせる必要がある。確かに、マルチをしてあるビートの畝はその効果が発揮されていた。ではあったが、あんまり暑くて、あんまり雨が降らなくて、マルチの効果もついに限界に近付きつつあるようだ。敷き草を取り除くと、そこも地割れが起き始めていた。
          

 記:2013.8.9 島乃ガジ丸


ヤシガニ

2013年08月09日 | 動物:魚貝類

 野趣カニ

 私はかつて、ヤシガニを食った記憶がある。記憶はしかし、定かでは無い。「かつて」というのはいつごろかというと、おそらく30年ほど前。初めて八重山の旅をした時だと思う。初めて西表島へ行き、珍しいものをあれこれ御馳走になった時だと思う。が、その頃は日記をつけていない時代(数年続いている)だったので、確かめようが無い。
 ヤシガニの味も微かに記憶にある。肉は普通のカニ(タラバとかズワイとか)に比べて硬めだった。普通のカニに比べて水分が少なくパサパサだったが、味は濃厚だった。などという記憶だが、やはりこれも本当かどうか確かめようが無い。

  去年の秋、宮古諸島オヤジ二人旅へ出かけた時、同行の友人Kはさほど乗り気ではなかったが、「ヤシガニを食う」ことも私の目的の一つであった。食ったことがあるという私の定かでは無い記憶が、食べてみればはっきりするかもしれないと思ったのだ。
 であったが、宮古島での夜は、宿泊した宿での食事が、他の宿泊客や近所の人たちも加わって楽しかったのと、ホテルに泊まった時の夜は、入った飲み屋が面白い飲み屋だったということもあって、「ヤシガニを食う」目的はすっかり失念してしまった。

 ヤシガニは食えなかったが、野生の写真を撮ることはできた。野生ではあったが、既に死んでいた。いつ死んだか分からないものを拾って食おうとは私は思わなかった。ヤシガニはただでさえ中毒を起こす場合があるということを私は知っており、しかもまだ甲長が4センチほどの子ガニ、中毒のリスクをかけるほど食べる身も無いのであった。

 
 ヤシガニ(椰子蟹):甲殻類
 オカヤドカリ科の甲殻類 与論島以南~インド太平洋に広く分布 方言名:アンマク
 名前の由来を明記した資料は無いが、「ココヤシやタコノキに登って果実を食う」と広辞苑にある。ヤシの実を食べるからヤシガニ(椰子蟹)ということであろう。
 方言名はアンマクの他いくつもある。アンマクは沖縄、宮古ではマクガン、八重山ではマッコン、モーヤンなどと呼ばれているようだ。その由来についてはどれも不明。
 海岸に近い陸上に生息し、主にアダンの林の中に穴を掘って住む。文献にはアダンの他、ココヤシ、タコノキの名もあったが、沖縄では海岸近くの林というとほぼアダン。「ココヤシやタコノキに登って果実を食う」という広辞苑の記載も、沖縄では「主にアダンの果実を食う」と書き代えて良いと思う。ただし、ココヤシもタコノキも海浜植物で沖縄の海岸に多く植栽されているので、ヤシガニはきっとどれも食べている。
 成体は貝殻を背負っていないがヤドカリの仲間。殻を持たない代わり頭胸甲や腹甲が硬く丈夫になっている。幼生時代は海で過ごす。夜行性で、昼間は穴の中など暗い所に隠れていて、夜間に活動し、ヤシやアダンに登って食事する。巨大なハサミは強力。
 甲長10~15センチほどで、体重は1キロを越すものもある。食用となりカニ似た味とのこと。だが、まれに毒化したものがあり、中毒を起こすことがあるとのこと。

 記:2013.7.26 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
 『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『サンゴ礁の生き物』奥谷喬司編著、株式会社山と渓谷社発行