無知の成せる自慢
ガジ丸HPを始める前までの私は、子供の頃も含めてずっと、虫などに興味を持っていなかった。だから、この1年でだいぶ覚えはしたが、虫の名前をあまり知らずにいた。名前は知っていても、その実物を知らずにいたものも多い。アゲハチョウ、モンキチョウ、モンシロチョウ、ヤンマトンボ、クマゼミ、アブラゼミなど、チョウやトンボやセミなど実物を見る機会は多くても、どれが何やらはずっと知らずにいた。
バッタの仲間も同じで、トノサマバッタなんて有名バッタも、名前は知っているが、どれがトノサマバッタなのかは知らなかった。なのであるが、ただ一つ、ショウリョウバッタだけは、「これはショウリョウバッタである」と言明できたのである。ショウリョウバッタは、バッタの中では特徴のある形をしていて判りやすいからである。ところが、前に撮った写真で、これはショウリョウバッタの仲間であろうと思ったバッタが、調べてみると違うバッタであった。オンブバッタという名前だった。もしかしたら子供の頃、オンブバッタを捕まえて「これはショウリョウバッタだ」と、私は自慢 していたかもしれない。
以上の文、書いたのは9年近く前。それ以降、ショウリョウバッタもオンブバッタも何度も観察している。虫などに興味を持っていなかった私でも、今は両者を区別できるようになっている。・・・が、ショウリョウバッタモドキという種があり、それは沖縄にも普通に生息しているらしい。もしかしたら私は、ショウリョウバッタモドキを捕まえて「これはショウリョウバッタだ」と自慢しているかもしれない。
ショウリョウバッタ(精霊蝗虫):直翅目の昆虫
バッタ科 本州以南、南西諸島、東南アジア、南欧に分布 方言名:シェー
名前の由来は資料が無く不明。漢字の蝗虫は広辞苑にあったが、バッタという名の由来も不明。精霊も広辞苑から、ショウリョウトンボという項目が広辞苑にあり、「精霊祭のころに多く現れるので」と由来が書かれてある。精霊祭はお盆の頃、本種の出現も夏なので、同じ理由で精霊と付いたのかもしれない。正確なところは不明。
このバッタは形が独特なので、子供の頃から私もその名前を知っていた。文献に「キチキチバッタという俗称がある」というのを見て、さらに懐かしく思う。そうだ、確かにキチキチバッタという名でも呼んでいた。雄が飛ぶ時にそういう音を出す。
体長雄42ミリ内外、雌72ミリ内外。体色は緑色型と褐色型があり、なお、個体によって多少の色彩変異もあるとのこと。オンブバッタは雄が雌よりずっと小さいが、本種もまた、雄は雌より一回り小さく、やや細身とのこと。出現は5月から11月。
八重山産
記:ガジ丸 2005.12.5 →沖縄の動物目次
訂正追記:2014.10.11
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『琉球列島の鳴く虫たち』大城安弘著、鳴く虫会発行