過日、ラジオを聴いていたら本の紹介をやっていて、その時紹介された本が何だったか忘れたが、同じ作者による2、3年前に刊行された『察しない男、説明しない女』の話に私の耳は反応した。日常は動植物の図鑑しか読まず、本屋に行かなくなって5、6年となる私は当然、その題の本の存在も知らず、噂も聞いておらず、当然読んでもいない。
何故、私の耳が反応したかというと、「あっ、それだよそれ、それが俺の結婚できない理由だよ」と思ったから。「察しない」という点では、私は男の中の男である。
子供の頃から理数系(勉強は大嫌いだったが数学は得意な方であった)の私の脳は、日常のほとんどを論理的思考している。真っ直ぐ立って、真っ直ぐ前を見て、真っ直ぐ歩いてきた私は、常に直球を待っているので変化球に弱い。変化球に私は気付かない。
付き合っている女性がいた頃、彼女が急に不機嫌になったりしてもそれが何故なのか男脳の私には全く判らない。「どうした?」と訊いても彼女は説明しない。説明しないので男脳の私は数学の問題が解けなかった時のようにイラっとする。そういったことが2度目3度目となると面倒臭いので放っておく。放っておくと女性はさらに不機嫌になる。私はさらにイラっとする。ちっとも楽しくない。で、「別れよう」となる。
女性と付き合って、女性脳に翻弄されながらも耐えに耐えて何とか女性脳を少しずつ理解できるようになって、イラっとすることも減って行き、楽しい付き合いができるようになる。女性脳を理解できるようになることは幸せな結婚をし、幸せな結婚を長続きさせるための男の修業なのかもしれない。その修業を怠けてきた私、だから結婚できない。
『察しない男、説明しない女』をネットで検索してみた。本を紹介するサイトに、
男と女はこんなに違う!
男は結果を重視する/女は過程を重視する
男はナンバーワンになりたい/女はオンリーワンになりたい
男は日常が好き/女は記念日が好き
男は「初めての男」になりたい/女は「最後の女」になりたい
男は使えないものを集める/女は使えそうなものを捨てられない
男は子どもでいたい/女は女でいたい
などというのがあった。これを見ると、私は男の中の男では無いようだ。私は過程が楽しい、オンリーワンでいい、初めてでも最後でもどうでもいい、使えないものを集めない、子供でいたくない。この6項目の内、私が当てはまるのは「日常が好き」だけ。
そうだよ、私の脳は全くの男脳ではないのだ。デートしている時、彼女が寒そうにしていたらそれを察することができる。そして、自分の着ている上着の半分を彼女の肩に掛け彼女の肩を抱く。そんな優しさも持っているのだ。そうだよ、私が結婚できない理由は他にあるはずなのだ。見た目の問題とか、経済力の問題とかいったものだ。
「察する男」とは、もしかしたら相手を思いやる優しさの他、相手を思う時間を惜しまない余裕と寛容を持った男なのかもしれない。私に優しさは少々あるが、余裕と寛容がまったく不足している。「説明しない女」にイラッとするのはそれが理由になっていると思われる。だから結婚できない。後期オジサンとなった今、結婚は諦めているが。
記:2017.4.21 島乃ガジ丸
沖縄のサザエ
若い頃、キャンプによく行っていた。キャンプ仲間にはダイビングを趣味とするものが多くいて、時には彼らが収獲してきた海産物を食べる機会もあった。彼らが「サザエ」と呼んでいたものも何度か口にした。確かにそれはサザエの味だったが、概ねはワタの部分に砂が混じっていて、砂を噛んで不快な気分になることがあった。
「ヤマトゥ(大和:倭国のこと)のものと違って砂が混じっているね」と訊くと、
「ヤマトゥのものは岩場に生息しているけど、沖縄のものは砂場にいるものも多いから砂を含んでいるんだ。ヤマトゥのものとは形も違うよ。」とダイバーの1人が答えた。
「形?どこが?」
「ヤマトゥのものはツノがあるけど、沖縄のものには無いんだ」
「ツノが無い」と聞いて、「南のものはのんびり生きていて怒ったりしないからツノも生えないんだ」と私は勝手に想像していたが、今回調べると、ヤマトゥのサザエと沖縄のサザエは種が違うということが判った。沖縄のものはチョウセンサザエという種。
写真は2007年9月のもの。前日、釣りや潮干狩りを趣味としている従姉夫婦から頂いたもの。それから10年近くが経った今年(2017年)4月、その写真と図鑑とを照らし合わせてチョウセンサザエと判明した。そして、10年近くも私はサザエを食べていないということも判明した。食べたいなぁ、けど、高いだろうなぁ。
我が身の貧乏を嘆いてもしょうがない。今回、もう1つ発見があった。畑関連、新居関連で大工仕事もよくやる私、大工道具の名前も建材金具の名前も多く知っている。ネジは当然良く使うので知っているが、その漢字表記を初めて知った。広辞苑によると、螺子・捻子・捩子・螺旋の4つとなっていた。その中の最初の螺子の螺は、サザエを調べている時に螺という字が「うずまき状の貝」を指すことを知り、さらに広辞苑を深入りした結果そこからネジが螺子と書くことまで知った。サザエは食えていないけれど、こういう知識を得ることでも私は幸せを感じている。そんな年齢になったようである。
チョウセンサザエ(朝鮮栄螺)
リュウテンサザエ科の巻貝 九州南部~西太平洋熱帯域に分布 方言名:マーンナ
名前の由来は資料が無く不明。サザエの漢字表記は広辞苑にあり、栄は「さかえる、はえる、はなやかさ」といった意。螺はニシと読み、「うずまき状の貝。巻き貝。」(広辞苑)を指す。サザエの類は巻貝なので螺、巻貝の中でも美味なので栄とついたのかもしれない。栄を何故サザと読むかについては不明。本種の分布は上記の通り「九州南部~西太平洋熱帯域」なので、何故本種にチョウセン(朝鮮)とつくかも不明。
沖縄にはリュウテンサザエ科の巻貝が10属19種生息するらしいが、図鑑を見る限りでは、本種は他の種と異なり表面が凸凹していて、私の写真が本種であると判った。
サザエとほぼ同じ大きさだが、サザエにある棘状突起が本種には無い。見た目はその違いがあるが、サザエと同じく肉は食べて美味しい。
潮間帯から水深20m以内の珊瑚礁や岩礁に生息する。殻高90ミリ内外、殻径70ミリ内外の巻貝。形は拳状。殻口は銀白色の真珠光沢がある。
調理されたチョウセンサザエ
記:2017.4.12 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『サンゴ礁の生き物』奥谷喬司編著、株式会社山と渓谷社発行