先週土曜日の模合(相互扶助的飲み会)はお初の場所で行われたが、我々の模合では滅多にないことがあった。その滅多に無いことの一つに私はとても感動した。何に感動したかと言うと酒、酒の泡盛、泡盛のクース(古酒)。しかし、これについては話が長くなるので別の機会に譲るとして、その日のもう一つの滅多に無いことについて。
オッサンばかりの席に若い美女がゲストとして参加した。これが滅多に無いこと。彼女とは、私以外のオッサン達は皆初対面。つまり、私の知人であり、私が連れて行った。私から誘ったのでは無い。彼女の希望であった。しかしながら、彼女だって、多少のセクハラがあるかもしれない、洗練ということを知らない沖縄のしょぼくれたオッサン達と酒を飲んで、恋したい頃の大切な時間を過ごすほどスットコドッコイでは無い。
彼女の目的は酒でも無く、オッサン達のささやかなセクハラをサラリとかわすテクニックを披露するためでも無かった。のんびりとした南の島で「明日の風は明日吹くさあ」とのほほんとしたウチナーンチュの、「もう、いつ死んでもいいや」という年齢に至っているオッサン達にごく真面目な、確固とした信念を伝えるためであった。
その確固たる信念とは「拡散防止」。
核拡散防止条約なるものがある。何のことか私もだいたい知っていて私なりの理解もあるが、広辞苑の説明では「核兵器保有国の増加を防止し、保有国が非保有国に核爆発装置や核分裂物質を提供せず、非保有国が取得しないことを目的とする条約」となる。私の理解を少し付け加えると、「核保有国が軍事的にその優位を保持するため、非保有国が取得するのを阻止する条約」となる。多くの国が核を持ってしまうと、その中の政情不安などこぞの国が「えーいっ!後は野となれ山となれ」と突発的に核爆弾を発射してしまうかもしれない。そういう不安があると枕を高くして寝られないから、という理由。
「1968年調印、70年発効。日本は70年調印、76年批准」ともある。イランやイラクは加盟しているのか、お隣の北の方の国は加盟しているんだろうかと少し気になって、現在どれくらいの国が加盟しているかネットで調べてみた。
2007年7月時点で190カ国が締約国となっている。 主な未加盟の国はインド、パキスタン、イスラエル、そして、お隣の北の国は1993年に脱退。大丈夫かな?
いやいや、話が長く脱線したが、彼女の言う「拡散防止」はそれでは無い。
福島の汚染瓦礫を受け入れるよう政府が各自治体に要請している。沖縄県や那覇市も汚染瓦礫の受け入れを検討しているらしい。「いいんじゃないの」と私は思う。喜びも悲しみも分かち合えばいいさあ、困った時はお互い様さあと思う。そのついでに、沖縄の基地負担も全国で分かち合ったらいいさあとも思ったりしながら彼女の話を聞く。
「汚染瓦礫が全国に運ばれて全国が汚染されたら、汚染地域の人々は日本に逃げ場が無くなるのです。いざとなったらあそこへ行けばいいと、少なくとも心の安全地帯はあって欲しいのです。沖縄だけでも安全であって欲しいのです」と彼女は言う。「そうか」と私は合点した。「ただちに健康に影響があるわけでは無い」と言われても、じゃあ、10年後には影響があるのか?これから生まれる子供たちには影響があるのか?何が起こるか不安を抱えたまま生きろと言うのか?ってことだ。安全地帯は必要だ。
記:2012.3.16 島乃ガジ丸