F96?!

 F100ならば「F5ジュニア」の異名で知られた、Nikonのフィルム方式SLRの最後を飾った名サブ機だ。F86ならば「セイバー」の愛称で親しまれ、日本の航空自衛隊でも活躍したノースアメリカン社製のジェット戦闘機だし、F91ならば、ガンダムだ!じゃ、F96って・・・。
 
 もったいぶって、すみません。タイトルの「F96」は、カメラのレンズの開放時の明るさと同時に絞りの量を示す「F値」が96だと言うことです。

 実は先週の土曜日に、写真家の南川三治郎氏の写真展「世界遺産巡礼の道を行く ―熊野古道―」を見て、展示会場に隣接したホールで行われた、氏の講演を聞いたのでした。講演会に付き物の「質疑応答」は氏の希望により展示会場で写真を見ながら行われました。

注:この写真展についてはこちら。同名の写真集については郷秋<Gauche>が3月3日に書いた記事をご覧ください。

 「質疑応答」開始から小一時間、質問の人の列が切れ、そろそろ引き上げようかという南川氏に、郷秋<Gauche>は撮影に使用したという「ディアドルフ8×20」について聞いてみました。

Q1:8×10(「エイト・バイ・テン」と読み、8インチ×10インチのシートフィルムを使う大判カメラ)は知っていましたが、8×20と言うのは初めて知りました。当初からパノラマ的な写真撮影のために作られたカメラなのですか。
A1:そうです。世界に3台しかなく、撮影に耐えられる状態のカメラはこれだけです。(当日、写真展会場に「ディアドルフ8×20」が三脚に据えた状態で展示してあった)

Q2:フィルムは特注ですか?
A2:そうです。富士フィルムに特別にカットしてもらっています。(8×10用の長尺のフィルムを倍の長さでカットしてもらっているものと思われます)

Q3:周辺光量落ち(写真の四隅が暗くなること)もなく、隅々までピントが合い、余りにも緻密な表現なので驚いています。いま、カメラには300mmのFUJINONが装着されていますが、8×20にも十分なだけのイメージサークルが確保されているのでしょうか。
A3:いや、96まで絞っていますから。(「F92」とおっしゃったような気もするが、倍数関係から行けば、96のはず)

 驚きました。絞りが「96」だって。郷秋<Gauche>が持っているレンズの最大絞り値は32(Ai 200mm f4S)。96というと、32から更に3段階絞った状態です。フィルムの銘柄を聞き忘れましたが、ベルビア50だったとすると、相当天気の良い日を選んで撮影しても、シャッタースピードは1/15秒とか1/8秒のはず。

 風景や仏像は2秒だろうが4秒だろうが動かないからいいけれど、人が写っている写真では、「ダゲレオタイプ」時代よろしく、「はい、動かないで」なんて言いながら撮影したのでしょうか。もっとも、すべての写真を8×20で撮影したわけではなく、8×10や4×5(「しのご」と読み、4インチ×5インチのフィルムのこと。これは、今でも写真スタジオなので使われていることがある)も使っているとのこと。これならば、絞り22くらいだったかも。

 ただし、8×10のフィルムを縦に2枚並べて10×16として人を撮影しているものもありましたから、やっぱり、「撮りますよ。しばらく動かないで」といった、「ダゲレオタイプ」時代かレントゲン写真撮影時並みの声がかかっていたのかも知れませね。

 このところ、200mm(300mm相当)F2.8開放のボケで喜んでいる郷秋<Gauche>ですが、世の中にはF値3桁に近いところで表現する写真があることに驚いた郷秋<Gauche>なのでもありました。まいった、マイッタ。
 

 今日の一枚は、南川氏に刺激されたわけではないが、郷秋<Gauche>にしては珍しくF22まで絞って撮影した「桜三昧」。さすがにF22まで絞ると、ISO100ならシャッタースピードは1/10秒となるところだが、いつもISO400で撮影している郷秋<Gauche>の場合は1/40秒。レンズの手振れ補正はONになっているが、それでもブレ防止のために一脚を使用した。(4月21日、多摩森林科学園にて。Nikon D300 / AF-S VR Zoom-Nikkor 70-200mm f/2.8G IF-ED)
コメント ( 0 ) | Trackback (  )