玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

長期入院と幻覚(10)

2016年10月20日 | 日記

「天井生命維持装置」
後かたづけの夢は天井ばかりを見上げて暮らす入院患者にとっては、ありがちな夢なのであろう。ただし、後かたづけの夢もこれから紹介する「天井生命維持装置」の夢も突拍子もないもので、あまりにクリアで忘れることの出来ない夢の一つである。
 まず、私は大きな建物の最上階に担ぎ込まれ、相変わらずベッドの中で天井を眺めている。今回の天井はかなり変わっている。天井一面に触肢のような、あるいは管のような、どう見ても動物に由来する器官が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。それはゆっくりではあるが確実な速度である目的を持って蠢いている。
 視界の左上隅に裸の人物が膝を抱えてうずくまっている。蠢く管は彼に繋がっているのだ。管が彼に栄養分を与えていることが分かる。私にはこの人物が、意識など無くてもかまわないから、管につながれることによって、一定期間生命を保証されることに同意したということが分かっている。
そうしなければ死んでしまうということなのだが、意識が無ければ生きていても死んでいるのと同じことで、どうしてそんなことに同意したのか、私は不思議に思っている。
 管の量は半端ではなく、その蠕動はベッドに寝た私を圧迫する。時々垂れ下がってきて私に触れようとするが、決してそこまではいかない。何かの意識をそれらの管が持っているのではないかと思わせるものがある。
 突然視界の真ん中に部屋が現れる。かなり広い部屋で、そこでは一般市民向けのイベントが行われているようだ。なぜはっきりしないのかというと「鮮度抜群の居酒屋」の夢でもそうであったように、私がその部屋を真下から見ているのであるからだ。私にはそこに集まった人々の足の裏やお尻しか見えないのだ。
 このままではよく見えないので、視界をリセットする。そうすると視界が90度回転して、普通の角度から見えるようになる。親子連れなどが大勢集まっていて、やはり何かのイベントのようだ。「鮮度抜群の居酒屋」の時と同じように、視界が回転するのではなく、部屋が90度回転するのである。
 その部屋は蠢く管の集合の真ん中に四角く出現していて、何かちょうどモニターを見ているような感じである。それでもリセットによって部屋が90度回転するという認識に変わりはない。


 

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