玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

戦争はしたくない

2014年09月17日 | 日記
 台所にゴキブリが出没して、気味が悪いので、粘着シート型捕虫器を置いてあるが、これがさっぱり効き目がない。そこで「ゴキブリ凍止ジェット」という、マイナス七十五度の冷凍ガスを噴射する新兵器を買って試してみた。
 夜中にシンク内をうろちょろする大きな一匹を発見、すぐさま近くに置いてあったジェットを吹きつける。ゴキブリは一瞬で凍りついて動けなくなる。さらに駄目押しの噴射で、見事に仕留めた。その間、わずか五秒であった。
 この新兵器は直接肌に噴射すれば凍傷になりかねないが、基本的に無毒で、台所で使用するにはまことに合理的である。しかも、一定の距離をおいて使用するから、ゴキブリを殺すことへの嫌悪感もない。理想的な新兵器である。
 ところで、ベランダの物干し場近くに、アシナガバチが巣を作っていると家人が言うので、見てみると直径十五センチほどの巨大な巣に、無数のハチがたむろしている。アシナガバチはスズメバチほど凶暴ではないので、退治するほどではないと思うが、「洗濯物に入ったら危ない」と家人が言うので、仕方なくやっつけることにした。
「ゴキジェットでやってみよう」ということになり、早速一メートルくらいの距離から噴射してみる。一瞬で凍りつくかと思いきや、ハチたちは巣から飛び立って逃げてしまう。「ゴキジェットではダメだ」。地を這うものには効いても、空を飛ぶものには効き目がないのだ。
 では、ということで、薬局へ「ハチジェット」を買いに走った。スズメバチにも効くという「ダブルジェット」を買い求めて、すぐに実行。こちらは殺虫剤で毒性がある。一噴き、二噴きで、ハチがボロボロ落ちてくる。ものすごい兵器だ。成虫が二十五匹、幼虫が十五匹ほど死骸と化した。
「巣に戻ってきたハチも駆除!」と書いてある。持続性があるのだ。あまりの効果に恐ろしくなった。翌日、虐殺をまぬがれた一匹が巣の周辺を飛んでいた。「こいつも巣に残った毒でやられるだろう」と思うと、罪悪感にかられた。戦争はしたくない。

越後タイムス8月25日号「週末点描」より)


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