玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

地方銀行の行方

2013年08月02日 | 日記
 銀行の“預貸率”というものがあって、貸出残高を預金残高で割った率のことを言う。バブル期にはこれが一○○%ということもあった。つまり、預金者から集めたお金を全部貸し出しに回していたということである。当然貸出金利息の方が預金利息より大きいから、それだけ儲かったわけだ。
 この預貸率が日本ではバブル期以降下がり続けていて、特に大都市よりも地方の方が低くなっている。地方の景気低迷で借り手がいないからだ。地方銀行では預貸率が五○%を切っているところもある。これで商売になるのだろうかと思ってしまうが、銀行は国債を中心とした有価証券運用でしのいでいるのだ。だから、地方銀行の方が有価証券運用の比率が高いという。
 ところで地方銀行では預金が少しずつ増えていって、貸出金が少しずつ減っていく傾向が続いている。心配になってしまうが、預貸率が一挙に改善される可能性があるという話を聞いた。なぜかと言うと、地方銀行の預金がある時一斉に、都市銀行に移行する日がくるからだ。
 つまり地方銀行の預金の多くは高齢者、それも高度成長期に多くかせいだ現在の高齢者のものであり、彼らが死んでいく時、その預金は田舎を出て大都市で暮らす彼らの子供達の預金へと移行するということに他ならない。
 そういう時代に、地方銀行はどうするのだろう。今まで潤沢に集めることのできた預金を集められなくなるではないか。貸出金の原資も少なくなるし、有価証券を運用して利益を確保することもできなくなる。
 まあ、縁のない世界の話だから、要らぬ心配かも知れない。しかし、地方の人口減少と都市集中は近い将来、劇的な影響を及ぼしかねないということを意味するのかも知れない。

越後タイムス6月25日「週末点描」より)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 奇怪な名前 | トップ | 誰もが驚いた »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事