もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

外交の変質?

2025年03月29日 | 外交
 トランプ政権発の関税戦争の行方が目まぐるしい。
 各国首脳は相次いでトランプ大統領と電話会談して、何とか自国への打撃を回避・軽減しようと躍起であるし、報復措置を示唆し牽制してもいる。
 我が石破総理も電話会談はできないながら「全ての選択肢がある」と述べるものの、選択肢については「手の内を見せる」と沈黙している。
 本日の産経抄では、先日の日米首脳会談に同席した人の印象では、総理は「始終「紙」を読んで、会話・会談では無かった」とされ、さらには、外務省高官の話として、「今、総理に話されると不必要な言質を与えかねない」ために、電話会談されないことを期待されているようである。
 従来型の外交や首脳会談では、事務方で合意できたことを首脳同士が握手・発表して手打ちを演出する体であったが、ウクライナ・ガザ紛争における停戦・休戦交渉やEUの有志国構想を観ると、トップの意志やトップ間の合意事項を事務方が具現化するという図式に変化しているように思われる。
 各国首脳と石破総理の違いは何だろうか。
 各国首脳は、政治生命を賭けて「おいそれとはアメリカの軍門に下らぬ決意を以て」行動しているのに対して、石破総理はこれまで同様に官僚の根回し・下交渉に固執しているように思える。今回の関税戦争では、石破氏と同様な手法を以て下交渉では関税の適用除外に半ば成功しかけた国もあるが、トランプ氏の呟き一つで下交渉の合意が露と消え失せた例もある。外交のベースを、外務官僚の下交渉に依存していた日本外交は、下交渉が通じないトランプ外交に対しては、今のところ無力であるように思える。
 戦後、日本が国際的にも認知される復興を成し得たのは、スピードには欠けるものの優秀な官僚の存在が大きいのは事実で、政治家は官僚の示した途を歩けば大過なかったであろう。しかしながら外交も軍事と同じく、結果責任を選挙で問われる政治家が行なうことが世界の常識で、これまでの日本の文官(官僚)統制外交は、世界基準には合致しないものであるように思える。
 世界は、ヒットラー型とも形容できるトランプ・プーチン・習近平の3氏に蹂躙されている。小粒ながら狂気においては前3者に引けを取らぬ金正恩氏もいる。このトップダウン型の指揮官に立ち向かうためには、時間を掛けて合意を探るボトムアップ外交が力負けすることは避けられないように思える。
 出でよ!!高市総理。

グルーズを眺める

2025年03月27日 | 美術
 通院の待ち時間に私設美術館収録のグルーズを眺めている。
 Wikipedia《ジャン=バティスト・グルーズ(1725 - 1805年)は、フランスの画家。宮廷風俗を描いた同時代の他の画家と違い,市民生活に題材を求めた風俗画を描くことで絶大な人気を誇っていたが、フランス革命後には新古典主義の台頭によって業界での評価は低下したが大衆的な名声は最晩年まで持続した》と解説されている。
 「村の花嫁」は代表作の一つとされているが、自分は「女性の頭の研究」が好きである。目の下の隈らしき陰影と寄せた眉根、男の不実を詰る演歌の一節が浮かぶ。

女性の頭の研究(メトロポリタン美術館)
村の花嫁(ルーヴル美術館)

甘えん坊(エルミタージュ美術館)
自画像(ルーヴル美術館)

慣用句の恐ろしさ

2025年03月26日 | 社会・政治問題
 高校で使用される教科書検定での検定意見等が公表された。
 気になったのは、徴用工問題の記述で「半島からの連行」という表現が「動員」に訂正されたということである。政府は、2021年4月に維新の馬場代表の質問書への答弁書として強制的なニュアンスを持つ「連行」を「動員」とすることを閣議決定し、日本の主張を明確にしている。資料的にも、強制連行しなくても募集を掛ければ所要以上の応募があって、選考に苦慮する程であったことが明白となっている。一方、朝鮮にあっても合格者がを遠方に出稼ぎする身を案じるよりも高額な報酬を羨む気持ちの方が強かったことも明らかにされている。
 史実はさておき、驚かされたのは検定意見を付けられた出版元の編集責任者が「単純に表記が曖昧だった。政治的な意図をもって入れたというより、用語の使い方で確認を怠った」と述べているらしいことである。長年にわたって日韓のトゲとなっている問題に対して、執筆時のリードタイムを勘案しても、閣議決定から1年以上も経過していること、教科書検定で数年に亘って問題視されていること、等を考えると、単に執筆者や校閲者の単純ミスではないように思える。執筆者は「確信犯」的に「連行」文言を使用し、校閲者は四半世紀も繰り返し使用された「徴用工の強制連行」という言葉が刷り込まれていたために見逃した」が真相であろうと推測している。
 今、町行く人々に「慰安婦・徴用工という言葉から連想するのは?」と問いかけたら、100%近くが「強制連行」と答えるであろう。言葉や数字が独り歩きを始めると、如何に明白な反対資料や正論を以てしても、訂正は容易ではない。対処療法は、人口に流布・膾炙するよりもできるだけ早く正確な数字や語句を提示する事しかないように思えるので、2021年の閣議決定は遅すぎたと云えるのではないだろうか。
 海上自衛隊の上級司令部には、発簡文書を浄書する前に「文書審査」という手続きが必要である。自分が経験した文書審査では、審査の女神とも称したい女性職員から懇切丁寧ではあるが辛辣な御指導を賜るのが常であった。女神様は「てにおは」「句読点」はおろか、用語の意味、受け手の誤解を招きやすい字句にも精通しており、既に決済を受けた文書でも「決裁者に報告して訂正しなさい」と突き返されたこともあった。
 出版会社にも同様の校閲エキスパートが存在するのは確実であろうと思えるので、今回の教科書編集責任者の「見逃し」発言も些かに眉唾にも思えるが、人件費節約のあおりでエキスパートを解雇したために不名誉な結果を招いたのかも知れない。

コロンビア大学の助成停止に思う

2025年03月25日 | 社会・政治問題
 トランプ政権は、コロンビア大学に対する助成金590億円の支給を停止したそうである。
 支給停止の理由は、先のパレスチナ紐帯デモによって、反ユダヤ教育活動が適切に行われていないことであるとされている。
 590億円と云う助成額にも驚いたが、同大学の年間授業料が1000万円を超えるとされていたことにも驚かされた。一般的にアメリカの私立大学の授業料は高額ではあるが、卒業生の寄付によって運営されている基金を持つ大学が多く、成績優秀者に対しては基金の給付奨学金を得る道が整備されているために、成績優秀者が貧困のために大学教育を受けられないという事例は少ないとされていた。しかしながら奨学金を獲得できなかった凡庸な学生は出世払い的ローンを組むそうで、大卒資格が就職・出世に直接結び付かない社会構造であれば、ローン返済もままならない大卒者も多いとされている。
 現在、日本でも社会構造が変化し、昭和の常識「大卒=幹部候補」は無くなったが、それでも大学進学率は高まっているものの、校名・学部を選ばなければ、全大学の定員は全員が進学できるキャパシティであるとされている。
 コロンビア大学の助成停止は、大学の自治を損ないかねないという意見があるが、大学の自治とは何かが良く分からない。学長や教授の選任における自由度か、教育理念や研究テーマに対する自由を指しているのだろうか。学生運動華やかりし頃、学内の秩序維持のために機動隊が導入された際は、大学自治の危機と大騒ぎしたものであるが、反対意見の多くは越前の一向宗自治的な「学内の治外法権扱い」に等しいものであった。識者の大学自治危機懸念は、よもや治外法権的扱いではないだろうが、助成金を貰い続ければ政権の意向に関係なく教育ができるが、助成金が途絶えると交付再開を願って我意に反して面従腹背の教育になりかねないとするものであろうか。
 研究テーマに対する干渉についていえば、日本学術会議の「武器・戦術研究拒否」の方が遥かに大学の自治と学問の自由を損なっているように思うのだが。

ミサイル発射ボタンの国有化

2025年03月24日 | 防衛
 長射程ミサイルの発射権限を原則的に日本が持つ計画を統合作戦司令部が策定していることが報じられた。
 現在は、射程1000Km超の巡航ミサイルやスタンドオフミサイルを発射する場合には、ハ―ド・ソフトの両面からアメリカの同意が無いと打てない。言い換えれば、政府が国民の生命・財産を守るために防衛出動を決断をしても、その遂行に不可欠の武器使用にはアメリカの同意・協力を得る必要があって、タイムリーに所要の兵器を使用できない可能性があることを意味している。
 現在、西側各国は、EUの有志国連合構想を始めとして、アメリカの背信とも云えるトランプドクトリンに抗すべき方策を模索している。今回の発射権限国有化にも同様の思惑を持った政権の意を受けて、制服側が実質作業に当ったと思うので単に国家安全保障戦略に記載されている「我が国が主たる責任を以て」の具現以上の意味を持つと考えたい。
 しかしながら、この当然すぎる措置についても、ニュースソースが「複数の政府関係者」とされているのは、将に画竜点睛を欠くものに思える。通常、政府関係者とは総理秘書官等とされているので、比較的低位のレベルから観測気球を飛ばすという従来の姑息な手法に依っているのであろうが、武力の行使に繋がる大事の将来であれば、総理大臣、少なくとも官房長官が正式に会見を開いて発表すべき事案と思うし、防衛戦略の如何を国民に説明して理解を求めるのが、シビリアンコントロールの王道である。
 ミサイル発射権限の委譲については、アメリカもおいそれとは応じないであろうことから、石破政権に対する内外圧は大きいであろうが、万が一にも「統合作戦司令部の独走」等の逃げ口上を口にすれば、自ら政治生命を失うことになることを自覚して欲しいものである。
 商品券問題で支持率20%近くまで下落した石破総理であれば、ミサイルの引き金を取り戻す防衛戦略の転換深化は起死回生の一助にはなったであろうに、根回し政争しか学んでいない政治屋には無理な注文であろうか。
 米韓合同軍の指揮権をアメリから取り戻すことは、韓国の悲願であるが、朝鮮戦争後70年を経ても悲願のままである。
 最後に蛇足を、
・「政府高官」:官邸トップの官房長官
・「政府筋・官邸筋」:内閣官房副長官 (政務)
・「政府関係者」:総理秘書官等    が通例であるらしい

F-47戦闘機を知る

2025年03月23日 | アメリカ
 アメリカの次世代戦闘機の導入・制式採用が報じられた。
 新戦闘機は、ステルス機能を強化するとともに無人戦闘機と共同戦術が取れるもので、名称はF-47と報じられた。F-35の次がF-47?と思ったが、第47代トランプ大統領に因んでの命名とされていた。
 改めて米軍用機の命名規則を調べると、《1962年以降は、任務タイプを示す英文字・ハイフン・軍における命名番号・サブタイプを示す英文字が入る》となっているが、軍における命名番号は連番であることを要しないようでF-22からF-35に飛んで、更に今回のF-47に飛ぶ歴史を持っている。F-22から飛んだF-35にも何等かの理由があるのだろうが、そこまでは分からなかった。
 律儀で几帳面な日本人は、帝国時代は九七式艦上攻撃機や零式艦上戦闘機のように制式採用した皇紀念を冠し、自衛隊にあってもF1⇒F2、C1⇒C2のように連番で示したり、20式5.56mm小銃や61式⇒74式⇒90式⇒10式戦車のように制式採用した西暦年を冠して命名(呼称)されている。
 良く次世代戦闘機と呼ばれるが、報道では現在の新鋭戦闘機は第5世代で、F-47は第6世代戦闘機、日英で共同開発している戦闘機も第6世代であるらしい。
 F-47に話を戻すと、友邦に売却・供与する場合には、その能力を10%程度落とすとされていた。アメリカの優位を保つとともに防諜・機密保持上やむを得ないものであるのだろう。
 安物買いの自分の例では、購入した白物家電を使用する際、取説を読んで「こんな機能もあるのか!!」と試すと機能しない。よくよく見ると小さな字で購入機種よりも数万円高額な機種の機能と書かれており、がっかりすることが多いが、戦闘機にあっても同様の事態があるのかと笑ってしまった。

進水式考

2025年03月22日 | 天皇・皇室
 愛子内親王殿下がジャパンマリンユナイテッド磯子工場(横浜市)で行われた公船の命名・進水式に臨まれた。
 進水したのは文科省所管の国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する極域研究船で、式典では「みらいⅱ」と命名された後に内親王が支綱を切断されて進水した。
 JAMSTECの進水式にはこれまでも清子内親王、佳子内親王が御臨席されたと知ったが、これ以外の公船の進水に皇族の何方が御臨席されたのかは知ることができなかった。
 進水式は、建造船台から滑り落ちる船台進水と建造ドックに注水するドック進水に分けられる。近年では、艦船の大型化等によって船台進水は少なくなっているが、支綱切断とともにくす玉が割れて船が滑り始める船台進水の方が遥かにドラマチックである。自分も本来ならば船台進水の数日前には着任できる一次艤装員に指名されたものの、後任者の都合で進水式までに赴任できずという残念の経験がある。
 自分が入隊直後に勤務した呉では、海軍工廠跡地を自衛隊係留桟橋゚と呉造船所が受継いだために両者隣接していたこともあってか、造船所で民間船の進水式がある場合には進水と同時に汽笛を鳴らして「仲間の誕生」を祝うという麗しい風習があった。後年、検査修理中の三菱下関造船所では建造船オーナーから船台進水式に招待されたこともあった。
 船は女性であるとして女性代名詞で呼ばれる慣例から、進水は女性の手によってなされるのが一般的である。豪華客船クイーンエリザベスは女王陛下が進水させ、アメリカの歴代空母は大統領夫人が進水させる。日本でも、民間船はオーナー夫人が支綱を切断することが多いと聞いているが、残念なことに護衛艦では、概ね防衛副大臣が支綱を切断して進水させるので、艦は誕生時から祝意に薄い鬼子的な扱いをされている現状である。内親王による進水は無理としても、せめて総理夫人によって進水出来ないだろうか。とはいえ、自衛隊の最高指揮官である事すら知らなかった鳩山由紀夫氏とその夫人による進水には大きな疑問が残るが。
 JAMSTEC(ジャムステック)についても勉強した。冒頭にも書いたように文部科学省所管の国立研究開発法人で、調査船や潜水船などで海洋、大陸棚、深海などを観測研究するとともに、スーパーコンピュータで気候変動や地震などに関するシミュレーション研究をする機関であることを知った。
 保有している有人潜水調査船「しんかい6500」は有名であるが、その他にも深海潜水調査船支援母船「よこすか」を始め、「みらい」「かいめい」「新青丸」「ちきゅう」「白鳳丸」各船を含む多くの研究所を持っている。今回進水した「みらいⅱ」は砕氷能力も持っているとされるので、北極航路と新北前舩の開発に大きく貢献するもののように思える。
 ともあれ、「未来ⅱ」の将来に栄光あれ。


EUの本気度-2

2025年03月21日 | 防衛
 トランプ政権はNATO軍司令官の地位を放棄する意向であることが報じられた。
 発足以来NATO軍司令官は米陸軍大将が務めることが続いていたが、トランプ政権がそれを放棄することは、NATOに対するアメリカの思惑・意向・関与を低下させる意味を込めているのであろう。
 19日にはEU欧州委員会が「欧州防衛の備え」と題した白書を公開し、先に発表していた総額130兆円に及ぶ欧州再軍備の基本路線と具体策を明確にした。軍備強化は、ミサイル防衛、ドローン開発などを列挙し、更に弾薬等の継戦消耗品についても共同生産・調達することとされている。
 フランスのマクロン大統領が、欧州域に有志国連合を結成してフランスの核を提供すると表明したのは、つい10日程前であるにも拘わらず、これほどの準備が整っているとは思わなかった。推測であるが、アメリカ離反時の欧州防衛に関するプランBシナリオ(作戦計画)は、”もしトラ”対応策ではなく、遥か以前から各国首脳の鍵付きデスクに保管されていたものであろう。
 驚嘆すべきは、トランプ大統領のNATOに対する意思表明に先手を打つ形で動き出したことであるが、その根底には日本を含めたアジア人種では入り込めない白人種の情報ネットワークがあったものであろうか。
 既にトランプ大統領は、日米安保について「こんな(片務性)物を、誰が作ったのか」とブラフを切り、政権内部では在日米軍の縮小が検討されているとも伝えられているが、商品券にかまける国会・商品券回収に忙殺される官邸は、ブラフ等の真意を本気で理解しようとしていないように思える。
 北へ備える米韓連合司令部は、米軍が司令官・韓国軍が副司令官、陸・海司令官は韓国軍・米軍が副司令官、空軍は司令官は米軍、副司令官は韓国軍とされているが、NATO軍から一歩も二歩も引いたトランプ政権では在韓米軍司令官放棄する等の影響力減少を計ることも十分に考えられる。
 EU欧州委員会の白書は、再軍備の概成目標を2030年としている。アメリカ製武器に加え独自の兵器体系を併せ持つ欧州にして完成まで5年の長時日と130兆円の費用を見込んでいる。
 自衛隊の新鋭装備を観ると、自前の装備は0に近く殆どが米国製であり、日米安保破棄が通告されたら、失効の1年後を俟たずにその日から多くの戦力を失い、継戦能力については1週間程度になってしまう。導入武器に関しては、付帯条件があって、戦時若しくは緊急事態にはブラックボックスまで製作が可能な設計図が含まれているそうであるが、図面さえあれば何でもできるものでは無いだろう。まして国防生産法 の概念すらない日本では資源の集中さえできないために、急速な拡充などできないだろう。
 そんな時にも、政府・国会は「安保破綻の説明責任・戦犯探し」に明け暮れるのだろう。

EUの本気度

2025年03月20日 | 防衛
 ウクライナ和平で親露姿勢を隠そうともしないトランプ外交に危機感を持ったEUでは、アメリカ主導のNATO軍とは一線を画した戦略判断・指揮統制を持つ有志国連合構想が大きく動き出したように思う。
 発起人的フランスは、ドイツ国境に近い空軍基地を有志国連合の拠点にするとして、同基地に大量の次世代戦闘機と超音速ミサイルを配備すると発表した。
 ドイツは、兵器の調達・増産に必要な巨額資金を得るための国債発行を可能とする基本法(以下、憲法)改正を行った。
 ドイツの憲法改正については、主導した保守政党(キリスト教民主・社会同盟)に、中道左派政党(社会民主党、緑の党)が賛成したとされている。脱原発・風力発電推進・二酸化炭素削減などの環境政党と思っていた緑の党が賛成したのは、所詮「命あっての環境政策」と現実的な選択によるものであろうか。現在、連立政権に参加しているとはいえ、党議拘束が希薄な欧州で緑の党までが賛成したことは、他山の石と捉えなければならないように思う。
 憲法改正、それも今そこにある危機の緊急事態条項の審議まで及び腰、集団安全保障を違憲とするものの自前の国防に無頓着・無定見の日本国中道左派政党を観るにつけ、今回の独仏の対応「これぞ国民の安寧と幸福を考える政治」と思わざるを得ない。
 夫婦同姓原則が国民の生命まで左右する事か、10万円の商品券授受が国民の命を危うくするのか、国会議員諸氏にあっては、国政レベルの議論をお願いしたいものである。政治への失望・無関心は、国会論戦が我々最下層がする低次元の居酒屋談義・井戸端会議的議論に多くの時間を割いていることに起因すると思う。
 立憲民主党の野田代表は、商品券問題に対して「石破総理が退陣する事での幕引きは言語道断」と声を荒げたが、真意は「不人気の総理で参院選を戦いたい」という政局・政争に起因するとされている。立民恒例である会期末の内閣不信任案も提出されないだろう。何故なら、立民としては不信任案可決で内閣総辞職、自民党の顔が変わるのは何としても避けたいであろうから。
 これほどまでに野党から大事にされ、存続を懇請される総理大臣は、これまでに例を観なかったのではないだろうか。

春闘を学ぶ

2025年03月19日 | 世相・世論
 今年の春闘は、連合傘下の760組合で2年連続5%超の高い賃上げを獲得し、中小企業に限っても33年ぶりに5%を超えたと報じられた。
 デフレ下では賃金の引上げを望む声が多く、韓国にも抜かれたとの嘆きも聞こえてきたが、昨今の物価高騰の原因の一つに「人件費の高騰」を挙げる声を聞けば、「賃上げはインフレの第一歩」と云うことが実感できる。長く公務員であったので、春闘勝利の余慶も人事院の勧告と国会決議を経た年末まで待つのが例であった。
 春闘と云えば、父島からの休暇時に国鉄労組の順法闘争の煽りを食った思い出しかないが、今更ながらに春闘を勉強した。
 Wikipediaを頼りに春闘の来歴を辿ると
〇1954年 5単産共闘の賃上げ交渉始まる。
〇1955年 3単産が加わり8単産共闘会議結成
1959年 総評と中立労連により春闘共闘委員会結成-春闘の言葉が定着
〇1974年 狂乱物価を背景に物価や税制、社会保障問題なども取り上げられるようになり「国民春闘」と名付けられた。
〇1975年 共闘会議の名称も「国民春闘共闘会議」とされ、ストライキ等を伴う実力闘争から労使トップレベルによる交渉が主体となった。
〇1988年 連合の前身となる民間連合が結成され賃上げ闘争は「春季生活改善闘争」と呼ぶようになった。
〇1989年 連合が結成され春季生活改善闘争を「春季生活闘争」としたが、全労連・純中立労組懇は「国民春闘共闘委員会」を、全労協・全港湾は「けんり春闘全国実行委員会」と銘打っている。
 この来歴を眺めると、メディアが現在使用している「今年の春闘・・・云々という表現は必ずしも正しくないように思えるが、まァ1960年頃から使われ始めて半世紀以上も人口に膾炙すれば、歳時記としても認められるであろうように思える。
 上記の来歴には出て来ないが、自分では春闘の山場は4月であったように記憶している。何故に4月と思っているかと云うと、かって艦艇には「燃料告知」と云う制度があり、概ね3月には年度当初に与えられた燃料告知量を使い果たし、航海訓練もできない状態に置かれるのが常であった。4月に入ると新年度の燃料告知があって、一斉に個艦・隊・群訓練が行われて母港を留守にするのが通例で、陸上勤務者を除いては順法闘争の余波を受けない暮らしに終始したためである。更には、この燃料告知と訓練に伴って4月初めの年中行事「満開時の花見」ができないことも多かったが。

新型鳥インフルエンザ出現か

2025年03月18日 | 世相・世論
 アメリカで新型の鳥インフルエンザが検出されたが、既に野鳥から乳牛に感染し、更に乳牛(牛乳)を介して人にも感染しているらしい。感染者は40人程度で何れも軽症であるとされているが、新ウイルス検知から哺乳類への感染期間が短いことからウイルス変異が急激で、中国コロナの再来すら危惧されているらしい。
 複雑に進化した高等動物では、進化に百万年単位の長時間と突然変異と云う僥倖を要したが、単細胞生物はその変化を極めて短期間で成し遂げるようである。
 ウイルス感染症に致死率80~ 90%とされるエボラ出血熱があるが、発症がアフリカの一地域に留まって世界的なパンデミックに至らないのは、エボラウイルスの毒性、致死率、症状の重篤化があまりにも高いために、保菌者が遠出する前に死亡してしまうためとされている。そのため、中国コロナのように致死率1%以下で潜伏期間が10日程度の所謂「毒性は弱いが死ぬこともある」ウイルスのほうがパンデミックを引き起こしやすいそうである。
 冒頭の鳥インフルエンザウイルスには既にワクチンもあり、抗ウイルス薬の有効性も確認されているらしいが、野鳥から乳牛への感染を防ぐことは困難であることから感染範囲は徐々に拡大していくことは確実とされている。さらに、トランプ政権ではワクチン懐疑派が保健相を務めていることもあって、アメリカのウイルス抑制・封じ込め対策は期待できないように思われる。
 高い知能と複雑な機能を備えた高等生物、就中人類が短期間に変異・増殖する単細胞生物に脅かされるのは、奇妙ではあるが自然の摂理とされている。願わくば、暗い3年間を強要された中国コロナの再来が無いことを祈るばかりである。

数字の魔力

2025年03月16日 | 社会・政治問題
 米教育省が、少数派(マイノリティー)の人種を優遇している疑いで約50の大学を調査することが報じられた。
 マイノリティーの権利を擁護すべく法律等で、新入生の人種比率などを義務付けた結果、却って白人やアジア系の門戸を狭める逆差別が顕著になるとともに、過度のマイノリティー擁護思想は、博士号審査や奨学金受給審査にまで及んでいるらしい。
 古来から法規制には数字を掲げることが一般的・かつ有効であり、日本でも男女雇用機会均等法などは当初の努力目標から数値目標に改正されている。
 しかしながら、年月を経ると法令等に定められた数字は策定当初の理念や合理性から離れて独り歩きを始めるのも、また古今東西を問わないように思える。
 独り歩きを始めた数字の魔力が、国民の不利益となったり個人の人権を損なったりするケースも多い。
 かって日本には防衛費を対GNP比1%以内(シーリング)とする閣議決定があった。決定当初は、国際情勢は比較的に安定、米軍の盾は堅固と云う状況下で過度の防衛費支出が国民福祉や国家事業を圧迫することを防ぐため、いわば「身の丈に合った軍備」を目指すものであったが、シーリングが独り歩きを始めると、国際情勢の変化や為替の変動にお構いなくという事態に陥って、自衛隊は張子の虎の装備しか保有できなくなってしまった。
 ソ連時代は何事につけても「ノルマ」が設定されていた。シベリア開発で示されたノルマは、多くの抑留日本人の命を奪った。農民についても集団農場(コルホーズ)に課せられたノルマを達成するために、帝政時代の農奴もかくやと思える生活であったとされる。
 策定時において、ある程度の合理性と説得力を持っている数値目標に反対することは、「人でなし」の大合唱を浴びせられること確実で困難であるが、数値の弊害が顕在化した場合は、躊躇なく改正また方向を転ずべきであると思う。
 全米証券取引委員会は、マイノリティーに関する条項を上場要件から外した。
 トランプ氏は、DEIに過ぎると沿岸防備隊司令官を更迭した。
 自分を含め「小遣い〇円」と規定(命令)されている方も多いだろうが、何年かの年月を経て独り歩きしている数字の改正は不可能に近い。
 魔力を持った数字の改正は事の大小を問わずに大変であるが、国政に与る方々の奮闘を期待して、終演。

石破総理限界か

2025年03月15日 | 与党
 石破総理が1年生議員を中心に配った、商品券が物議を醸している。
 石破総理は「ポケットマネーでの手土産」としているが、永田町の相場は知らないものの手土産は寿司折が定番の階層の目には些かに高額に映る。
 石破総理は、法的には問題ないとしているが、衆目は「グレー」としているようである。パーティー券の還付金不記載議員に対しては、公式処分を超えた公認取り消しなどの加重処分まで科した人とは思えない行為であり、今国会で政治資金規正法が論議されているさなかの脇の甘さは政治家・総理としての器量の限界を示しているように思える。
 石破政権は、予算案や法案の成立のために野党の協力を仰がざるを得ない状況とは言え、その対価として長らく自民党が保持していた「譲れない一線」すら差し出している。野党との修正協議に追われて「石破カラー」が出せない状況と擁護する向きもあるが、「石破カラー」とは何だろうか?更には国家百年の経綸に対する理想(カラー)などはもともと持っていないのでないだろうか。
 参院議員総会で西田昌司議員が「石破総理の早期退陣」を発言したものの、周囲は冷ややかな反応であったとされている。自民党議員は、石破氏の何処に魅力を感じ、どの点を宰相に相応しいと判断して、素人目にも下三白の小物に映る石破氏を宰相として担いでいるのだろうか。定見の無い人物を「神輿に乗るのは軽い人が良い」理論で担ぎ続ければ、共倒れすることは明らかであるように思うのだが。
 最近の政党支持に関する世論調査では、国民民主とれいわ新選組が一歩抜きんでて、自・公・立・共は一桁台とするものもあるが、消去法で行けば政策立案能力と実行力は未知数ながらも国民民主やれいわ新選組に辿り着くのではないかと思っている。
 古人は「馬鹿な指揮官敵より怖い」と喝破しているが、自民党と石破総理の現状を観ると、言い得て妙に思える。石破総裁・総理を担ぎ続ける限り、自民党の衰退は避けられないように思える。かっての社会党が凋落したのは、土井たか子氏という盲いた指導者を担ぎ続けたことも一因と思っている。

ウクライナ和平の動きに思う

2025年03月13日 | 軍事
 ウクライナ紛争に和平の動きが報じられた。
 和平に至る停戦には既にウ・ロの双方が合意した模様ともされているが、和平には領土の割譲が必至とみられていることから、今後とも相当の紆余曲折を辿るだろうと考える。
 3年余に達する紛争で両国は疲弊し、特にウクライナではインフラの多くが破壊されたことや、人的被害の多さから厭戦気分と書けばウクライナ国民に失礼とは思うものの「幾ばくかの領土を割譲しての和平も已む無し」という空気も漂っているらしい。
 停戦⇒和平に至ったのは、主要支援国であるアメリカが、支援の停止に動いたことが大きいように思える。今日のウクライナを明日の我が身とするEUは支援の継続を表明しているものの、アメリカの肩代わり支援は自国経済に大きく影響することだろうし、トランプ大統領の関税恫喝の影響を加えると、停戦⇒和平に同意することだろう。
 幾ばくかの領土割譲しての和平に対しては、紛争当初に「ロシアの望むものを差し出しての和平」を唱えていた識者は「それ見たことか」と快哉を叫ぶだろうが、矢折れ弾丸尽きて膝をつくことを戦わずして屈することを同等に捉えてはならないと考える。
 日本にも、鋼の意志を持つ寡勢を以て衆に善戦した例は多い。
 楠木正成は、千名の守兵が籠る千早城で数十倍の鎌倉軍に抗し、真田昌幸は徳川秀忠軍を上田城に釘付けにして関が原参戦を食い止めた。
 主題に立ち返れば、数週間で陥落するであろうとされていたウクライナが、当初はゲリラ戦で、その後は西側の支援を得て強(狂)国ロシアに3年余も戦えたことは、歴史に大書される戦果と思う。これは偏に、ウクライナ人として生きたいというアイデンティティに基づく国民の継戦意欲に支えられたもので、児孫にウクライナの領土と文化を残したいという意思が結実した結果によるものと考える。
 確かに、ウクライナからも少なからぬ壮丁が国外に出たともされるが、多くは銃を執り、後方を固めて今日に至っている。
 ウクライナ人。良く戦えり!!
 日本有事に戦うと答える壮丁は20%に満たないとされる。残る80%の壮丁諸氏は、ウクライナの現状をどのように見ているのだろうか。

日産の新社長誕生に思う

2025年03月12日 | 防衛
 本日は、経済音痴の故に的外れな駄文で終わるだろうことをお断りします。
 日産の新社長人事が報じられ、後任の新社長はメキシコ人で、しかも現在の業績不振の責任を負うべき戦犯(?)の一人とも目されているので、カルロス・ゴーン氏の悪行・悲劇再来の予感さえする。
 解説記事を読むと、日産の取締役会の構成は12人中10人が社外或いは筆頭株主ルノー出身者で占められており、社長選任委員も全て社外メンバーであるらしい。取締役会は、ゴーン事件を契機に設立されたが、社外メンバーが大勢を占めるので経営に対する監督は独自の視線で行えるものの、どうも生産・販売の現場と乖離した存在と化しているらしい。取締役会が発議したホンダとの経営統合協議に対しても、経営側が統合の前提となる再建策を提示できずに不調に終わったのは、取締役会と経営陣の足並みが揃っていないことの象徴とされるとともに、著しくスピード感を欠く2階層統治の日産を業務提携では御しきれないと考えたホンダが吸収合併で統治の刷新まで図ろうとしたことが原因とされている。
 日産の針路が定まらない原因は2階層統治で、このシステムの温存・延長である今回の新体制発表も新鮮味に乏しく内外からは期待感は持てないとされているらしいが、果たして日産の立て直しや如何に。閑話休題・
 3月24日に自衛隊に「統合作戦司令部」が編成され、初代司令官には南雲空将(現統幕副長)が補されることも報じられた。これまで3自衛隊の統合運用は統幕議長が3自衛隊の幕僚長を介して行っていたので、3自衛隊を直接指揮できる統合作戦司令部の誕生によって、より迅速・効果的な部隊運用が期待できる。 
 3自衛隊の統合運用など簡単と思われる方もおられようが、発足以来70年、、それぞれ独自に進化した3自衛隊を一元指揮管理するのは容易ではない。まず、用語の統一、通信機能の統一、作戦思想の統一、重複機能の整理、人事管理、・・・。特にソフト面では数えきれないほどのハードルがある。多くの銀行を統合して誕生した「みずほ銀行」が、幾たびもシステム障害を起こしているのは、統合した銀行のシステムを統一しないまま無理やりに連結したために起きているとされる。今回の統合司令部誕生に当っては、よもや「みずほ方式」ではない通信等のソフト一元化が実現した上であって欲しいと願っている。
 昭和50年代、陸上自衛隊の無線交話訓練を観た記憶では、海自のそれとはまったくの別物であったことも記憶に蘇る。
 シスターシップ゚交換で知り合った一軍制であるカナダ駆逐艦の機関長からは、「カナダ軍では特殊な職種を除いて陸・空軍に出向するの当たり前。俺は特殊な職種であって出向する事なないが」と聞いたことがあるので、将来的には人的にも3自衛隊の垣根は無くなる若しくは低くなるのかも知れない。