第二次トランプ政権で、日米安保の片務性が蒸し返された。
トランプ大統領は「一体、誰が(片務性を)認めたのか」と不快感を示し、政権の中枢からは「駐留軍経費の増額」や「軍事費の対GDP比3%超」を求める声が高くなっている。
日本では、「極東最大の基地を提供していることで、釣り合いが取れている」とする意見が多いが、どうだろうかと考えてみる。
日米安保締結時や新安保改定時は東西冷戦の真っ最中で、極東の赤化防止のためには、日本の地勢位置が大きな要素を占めており、米国も日本に軍事基地を置き地上兵力を常駐させることに安保の片務性以上の価値を見出していた。
しかしながら、中露はもとより北朝鮮も核兵器とその運搬能力も得ている現在では、日本の地勢的強点も相対的・総体的に低下している。核兵器以外でも、長距離を飛翔できる無人機や巡航ミサイルの登場によって、発射母体を作戦地域に近い同盟国陸上基地としなくても艦艇・潜水艦で対応可能、特に無人機については米本土からでも運用することが可能となった。
また、地上の楽土を約束した本来の共産主義についても、ソ連を始めとする共産主義国が相次いで市民圧政の悪しき全体主義と化して自壊したことも有り、それにつれてイデオロギー戦争に備える必要性も低下したように思える。
第一次トランプ政権時にもあった同様の事態を乗り切れたのは、安倍総理の交渉術と日米首脳の信頼・盟友関係であったとされている。
トランプ大統領は石破総理との会談を列国よりも後回しにしたように日米首脳会談にも消極的で、石破氏を盟友安倍氏の芳しからぬ政敵と捉えている節が垣間見える。更には、国務・国防省内部でも石破総理の政治信条をパートナーとするに疑問視する声も大きいとされる。
まさかそこまでやるとは思わないが、日米安保の有効期限は1年であり、もしトランプ大統領が破棄を決断すれば、その1年後には消滅する(それに伴って識者が嫌悪感を露わにする日米地位協定も解消されるが)。
日米安保はNATOとともに約80年間継続しているが、世界情勢が目まぐるしく変化する近世で、これほど長期にわたる軍事同盟は珍しいのではないだろうか。しかしながら、トランプ大統領に危険を感じたNATOは域内の抑止力に英仏核兵器の独自使用の途を模索し始めている。
研究者石破総理の、胸中・打算は如何に。