もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

気球撃墜の閣議決定に思う

2023年02月19日 | 防衛

 本朝のTV番組で「気球撃墜」のテーマでの応酬を観た。

 論点は、気球の撃墜における自衛隊の武器使用を閣議決定に依ったことの是非に関してであったが、橋下徹氏は非とし櫻井よしこ氏は是とする立場に立たれていた。
 武器使用範囲は自衛隊法で規定されているので、その範囲を拡大するには閣議決定ではなく自衛隊法改正によるべきとする橋下氏は正しく、気球の浮遊を急迫の不正と捉えて時間を重視する櫻井氏の意見も軍事オプションの常識からは正しいように思う。
 両者ともに正しい意見の応酬を観て、かねてから危惧している軍事オプションに対する小田原評定の一種であろうと思ったが、自分では櫻井氏に軍配を上げるものである。
 所属や目的は何であれ、気球の浮遊が軍・官・民航空機の飛行を阻害する危険性はあるので政府としては無害化や排除は当然行わなければならないが、橋下氏の正論に従えば自衛隊法改正実現まで数か月かかるが、万が一、その数か月間のうちに民間機が被害を受けたとしても、それは法治の大原則から許容すべきとするものであるのだろうか。
 一般的に法律は、顕在化した事象に対する対策として作られるものであるために、後追い整備されることは否めないとともに細部まで事細かく規定できるものではない。そのために、細部については政省令に依ることが多く、更に個々のケースについては行政手続きとして閣議決定による場合も多い。自衛隊法の武器使用範囲についても、改正時には無人機の実戦運用は研究開発段階であり、偵察気球の運用は全くの想定外であったことを思えば、閣議決定に依る武器使用範囲の拡大も止むを得ないように思うとともに、諸事に逡巡して「十日の菊」となりがちの岸田総理としては珍しくタイムリーに行い得たと評価している。

 気球の危険性に対しても「たかが気球」の意見もあるし、米軍がアラスカ沖で撃墜した気球が個人で飛ばしたものであったとも報じられているが、秋葉原の自動車暴走がテロ企画者に「自動車が有効な武器になる」との認識を与えたともされていることを思えば、安価に製造できるとともにコントロールできる気球はテロ兵器としても活用される可能性があるように思える。
 探知困難とされる気球は今後とも世界中に現れるだろう。なにしろ、あの中国が次世代の隠密兵器として本腰を入れているのである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿