障害者自立支援法 /京都
<NEWS NAVIGATOR>
◇全国すべての訴訟は終結、財源確保が問題
なるほドリ 障害者自立支援法を巡って、全国で訴訟が起きていたよね。最近、すべて解決したんだって?
記者 08年10月の集団提訴以降、全国14地裁に障害者71人が訴訟を起こしていました。3月24日、さいたま地裁で原告側が提訴を取り下げたのを皮切りに、京都府内の原告9人も4月13日に京都地裁で和解。同月21日の東京地裁での和解を最後に、全国すべての訴訟が終結しました。
Q 障害者の人たちは何を訴えていたの?
A 障害者自立支援法は、障害者が自立した生活を送れるよう支援することを目的に作られ、06年4月に始まりました。それまでは収入に応じて福祉サービスの利用料を支払う「応能負担」でしたが、収入に関係なく原則1割を自己負担する「応益負担」に転換されました。多くの障害者が福祉サービスを受けられなくなったり、負担が増えたりするなどの影響があり、訴訟では、原則1割負担は「障害者の生きる権利を侵害する」として、負担撤廃を求めていました。
Q 障害者に負担が大きいっていうことは悪い法律なの?
A そうは言い切れません。例えば、身体、知的、精神の3障害に分かれていた施策が一元化され、「精神障害への支援は手薄だったが、支援が受けられる人が増えた」「NPO法人でも運営が認められて施設の数が増え、就労支援の体制も強化された」と評価する声もあります。
Q 何で和解することになったの?
A 政権交代直後、長妻昭厚生労働相は同法廃止を明言。その後、原告・弁護側と国が交渉を始め、13年8月までの新制度制定に障害者が参画する▽障害の範囲見直しを新法の論点とする▽低所得者の医療費負担を課題とする--などの「基本合意」を今年1月に結びました。和解条項に合意の確認などが盛り込まれたため、原告側は訴えを取り下げました。
Q これまでの障害者自立支援法はどうなるの?
A 新制度ができるまで継続する予定です。同法廃止までの措置として負担軽減策が打ち出され、10年度は低所得者に対してホームヘルプの費用などを無料化する予算が組まれました。しかし、国の財政難で医療費については見送られ、財源の確保が問題になっています。原告の男性は「新制度の確立に向け、更なる努力を」と訴えました。新制度は、障害者や家族が6割を占める政府の「障がい者制度改革推進会議」で本格的に話し合われますが、低成長時代に障害福祉予算を確保するには増税も議論の対象となりそうです。
毎日新聞 2010年5月2日 地方版
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◇全国すべての訴訟は終結、財源確保が問題
なるほドリ 障害者自立支援法を巡って、全国で訴訟が起きていたよね。最近、すべて解決したんだって?
記者 08年10月の集団提訴以降、全国14地裁に障害者71人が訴訟を起こしていました。3月24日、さいたま地裁で原告側が提訴を取り下げたのを皮切りに、京都府内の原告9人も4月13日に京都地裁で和解。同月21日の東京地裁での和解を最後に、全国すべての訴訟が終結しました。
Q 障害者の人たちは何を訴えていたの?
A 障害者自立支援法は、障害者が自立した生活を送れるよう支援することを目的に作られ、06年4月に始まりました。それまでは収入に応じて福祉サービスの利用料を支払う「応能負担」でしたが、収入に関係なく原則1割を自己負担する「応益負担」に転換されました。多くの障害者が福祉サービスを受けられなくなったり、負担が増えたりするなどの影響があり、訴訟では、原則1割負担は「障害者の生きる権利を侵害する」として、負担撤廃を求めていました。
Q 障害者に負担が大きいっていうことは悪い法律なの?
A そうは言い切れません。例えば、身体、知的、精神の3障害に分かれていた施策が一元化され、「精神障害への支援は手薄だったが、支援が受けられる人が増えた」「NPO法人でも運営が認められて施設の数が増え、就労支援の体制も強化された」と評価する声もあります。
Q 何で和解することになったの?
A 政権交代直後、長妻昭厚生労働相は同法廃止を明言。その後、原告・弁護側と国が交渉を始め、13年8月までの新制度制定に障害者が参画する▽障害の範囲見直しを新法の論点とする▽低所得者の医療費負担を課題とする--などの「基本合意」を今年1月に結びました。和解条項に合意の確認などが盛り込まれたため、原告側は訴えを取り下げました。
Q これまでの障害者自立支援法はどうなるの?
A 新制度ができるまで継続する予定です。同法廃止までの措置として負担軽減策が打ち出され、10年度は低所得者に対してホームヘルプの費用などを無料化する予算が組まれました。しかし、国の財政難で医療費については見送られ、財源の確保が問題になっています。原告の男性は「新制度の確立に向け、更なる努力を」と訴えました。新制度は、障害者や家族が6割を占める政府の「障がい者制度改革推進会議」で本格的に話し合われますが、低成長時代に障害福祉予算を確保するには増税も議論の対象となりそうです。
毎日新聞 2010年5月2日 地方版