在宅の重症心身障害児・者の地域生活を支えようと、関係者がざっくばらんに話し合う「ざっくばらん会」が、活動を始めて四年を迎える。当初は、医療職中心の集まりだったが、福祉、教育などの専門家も加わるようになり、職種を超えた連携や支援に向けて取り組みを進めている。
会の発足は一三年夏ごろ。入院患者には症例を検討する機会がある一方、在宅患者にはなかったことから、県立小児保健医療センター(守山市)や重症心身障害児・者の入所医療施設「びわこ学園」(本部・野洲市)の医師や看護師ら医療職六人が、気さくに症例を話し合う場として設けた。
二~三カ月に一回、飲食店などで集まり話し合う中で、重度の障害者が地域で生活するには、さまざまな課題があると気付いた。患者の多くは、身近なかかりつけ医がおらず、ある患者は風邪をひくなどした際、近くに診てもらえる診療所や病院がなく、自宅から一~二時間かけて総合病院まで通っていた。別の患者を介護する家族は、家族の休養を目的とした「レスパイト入院」や、日中一時預けられる施設がなく困っていた。
発起人の一人で、びわこ学園医療福祉センター草津の小田望医師(44)は「医療分野だけでなく、福祉や教育分野など、幅広い関係者と情報共有しなければ支援が進まない」と感じたという。
六人が他職種の人らに声を掛けていったところ、保健師や薬剤師、ソーシャルワーカー、理学療法士、特別支援学校の教諭、県職員など幅広い職種の人が加わり、現在は百十四人が登録。うち、三十人程度が会議に参加している。
会で寄せられた情報は、県の「小児在宅医療体制整備事業」の一環で、重度障害児の在宅医療について考える委員会に提供され、課題の具体的解決に向けて検討されている。レスパイト入院に関しても、受け入れ先として手を挙げる病院も徐々に増え、支援の輪が広がりつつある。
小田医師は「他職種の人たちと交流することで、患者の普段の生活がイメージできるようになった」と会のメリットを話す。会の代表で、びわこ学園医療福祉センター草津の口分田政夫施設長(59)は「医療的ケアが必要な子どもや家族が普通に生活できるよう、会のネットワークを通して地域を変えていければ」と期待している。
<重症心身障害児・者> 重度の肢体不自由と知的障害が重複している人のことで、近年、新生児医療や在宅医療が進む中、重度の障害があっても自宅で医療的ケアを受けながら生活できるようになってきた。県などによると、2016年4月1日現在、県内に882人いるという。
重度障害児・者の在宅医療についてざっくばらんに話し合う参加者たち
2017年5月20日 中日新聞