福井市などの発達障害や知的障害のある人の保護者や支援者でつくる団体「にこにこクラブSUNFISH」は、成長の過程や生活の様子を記録するライフサポートファイルと災害時手帳を作った。「成長した子供が親と離れた時も、自分の望む生活をしてほしい」。メンバーで自閉症の子供を持つ母親のこんな思いに他のメンバーも共感し、一年近くをかけて作り上げた。
ライフサポートファイル「クローバー」はA4判で三十九ページのファイルとじ。医療情報、障害の種類や程度などの福祉情報を記入するほか、意思疎通ができる方法を書き込むページなどもあり、必要な部分を選んで使う。
災害時手帳「らいと」はA6判で二十六ページ。医療情報などをライフサポートファイルから転記するほか、避難先で周囲の人と意思疎通する助けになるよう、欲しい食べ物や体調などを指をさして伝えることのできるイラスト一覧のページも設けた。
にこにこクラブは、知的障害や発達障害のある人のための水泳教室や障害者への理解を深めてもらうための講演会などを開いている。大人のメンバー十人ほどで昨年八月から構想を始め、メンバーの子供が通う特別支援学校の教師らのアドバイスも受けながら、今年三月に完成させた。
こだわったのは「本人の視点」。会長の市岡公子さん(55)によると、ライフサポートファイルは自治体なども製作しているが、家族や支援者が医療や福祉情報の引き継ぎのために記入するタイプが多いという。「本人自身も生活の様子を残すことで、将来、自分がやりたいことを選ぶ手掛かりにしてほしい」との思いから、思い出の写真を貼ったり、買い物の記録を書き込んだりするページも作った。
内容が分かりやすくなるよう言葉遣いやイラストにも気を配った。言葉遣いは「支援の必要なこと」ではなく「てだすけしてほしいこと」などのように、本人の視点に立った分かりやすい表現を徹底した。災害時手帳のイラストは、避難所などの状況に適した絵をインターネットのフリー素材から探すため、一つのイラストを選ぶのに二、三時間かかったこともあったという。
市岡さんは「日頃から使ってもらい、障害のある人が一人で生活するようになったり、災害時に保護者と離れ離れになったりした時、少しでも自分らしく生活できる助けになれば」と願っている。
ライフサポートファイルを千五百冊、災害時手帳を千冊、希望者に無料配布する予定。ハピリン内の市総合ボランティアセンターや福井口腔(こうくう)保健センター(福井市大願寺三)などで受け取れる。
「にこにこクラブSUNFISH」が作ったライフサポートファイル「クローバー」と災害時手帳「らいと」
(問)にこにこクラブSUNFISH=nikoniko.sunfish@gmail.com
2017年5月28日 中日新聞