山口県知的障害者福祉協会と県弁護士会が、障害者施設での虐待防止を目的に包括協定を結ぶことが29日、決まった。2015年に発覚した同県下関市の知的障害者福祉施設「大藤園」での虐待事件を検証してきた同協会の最終報告書がまとまり、「虐待はどの施設でも起こり得る」として、外部の目を入れる必要性を提言した。弁護士が施設の職員や利用者の相談に応じたり、職員研修のため講師を派遣したりする。
下関の事件は15年5月、複数の職員が利用者を平手打ちしたり暴言を吐いたりする動画が報道されて表面化。協会は原因究明と再発防止のため、大藤園の職員・利用者からの聞き取り▽協会加盟の県内約100施設の職員の意識調査--などを実施し、最終報告書にまとめた。それによると、施設には当時、社会福祉の国家資格保有者がおらず、専門性に欠けていた。また利用者の作業場所は密室性が高く、職員による「支配的な対応が強まった」などと指摘した。
一方、会員施設の全従業員の69%に当たる約1700人が回答した意識調査で、約4割が「不適切な行為を見たり聞いたりした」、約3分の1が「無意識のうちに不適切行為をしてしまう」と答えており、報告書は、事件は「ひとごとではなく、どの施設でも起こり得る」と結論付けた。
報告書は改善策として、県弁護士会との連携の必要性を提言。弁護士会側が29日に応じることを決め、7月にも包括協定を締結することになった。知的障害者福祉団体と弁護士会の協定は全国初の試み。
協会の古川英希会長は「山口県だけでなく全国の施設の虐待根絶に役立つことを期待している」と話した。
毎日新聞 2017年6月30日