相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が刺殺された事件で、現場となった「津久井やまゆり園」の入倉かおる園長(60)と現役職員が、事件から1年を目前に思いを語った。19人が刺殺されたその場所で、職員たちは事件後も入所者たちを支えてきた。「守れなかったのか」。自責の念が残る中、元の生活を取り戻そうとしている。
昨年7月26日午前3時過ぎ、入倉園長は職員からの連絡で車を走らせた。「うちの子は無事か」「どこの病院に運ばれたのか」。事務所には家族らからの電話が殺到していた。職員たちが状況を報告しようと駆け回るが、追いつかなかった。
園生活は一変する。多くの入所者は施設内の体育館で避難生活を始めた。多くの職員も一緒に寝泊まりした。
ある職員は被害者家族に会うと号泣して謝った。「やらなきゃいけないことはたくさんあって、感情を押し込めながら何とか働いた」。神奈川県警の実況見分は約2週間続き、職員らは血だまりの脇を通ることもあった。別の職員は「献花の菊やユリの匂いに混じった血の臭いを思い出し、怖くてたまらなくなる」と語った。
1カ月が過ぎた8月25、26日の夕、園内で犠牲者を悼む時間が設けられた。職員も入所者も共に手を合わせ、夜は線香花火を見つめ、スイカを食べた。入倉園長は「初めての一つの区切りで、しめやかな祈りの時間だった」と振り返る。
職員たちが事件について話し合ったのは、今春になってからだ。「職員も加害者意識を持たなきゃ」。そんな意見が出た。職員たちは、殺人罪などで起訴された元やまゆり園職員の植松聖被告(27)が昨年2月までの在職中、障害者を否定する発言を繰り返したのを知っている。注意し、相談に乗ろうとしたが、変わらなかった。ある職員は顔をゆがめる。「彼がなぜ事件を起こしたか分からない。自分たちの何かがまずくて彼をつくったんじゃないか。彼を変えられたんじゃないか。多くの職員も罪悪感を抱えていると思う」
園は4月、横浜市の仮園舎に引っ越し、事件直後に約130人いた入所者のうち約110人も移った。入倉園長は「入所者は被害を受けながら、今も目の前にいる。このままくじけるわけにはいかない」と話す。
相模原市で24日行われた追悼式。入倉園長は祭壇に向かって「守ってあげることができなかった」と声を震わせ、こう呼び掛けた。「これから私たちは何を目指していけばいいのでしょうか。立ち止まるなと、高い空から、どうか教えてください」
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事件後、全国から園に寄せられたぬいぐるみや千羽鶴、手紙をまとめたファイルを前に語る入倉園長
毎日新聞 2017年7月24日