悠山人の新古今

日本初→新古今集選、紫式部集全、和泉式部集全、各現代詠完了!
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日本初→源氏歌集全完了!

099 恋しさに焦がれ

2005-11-08 01:00:00 | 新古今集

 巻第十四(恋歌四)は、1234~1335。「恋の部五巻中、本集時代の[同時代の]歌人の作がもっとも多く、この巻の後部約七十首に集中して哀艶な情趣の歌境を展開している。」(小学版)
 これは作者が「少将滋幹[しげもと]に遣はしける」歌。かの谷崎潤一郎作品の、あの人である。現代詠に「恋焦がれる」「焦がれ死ぬ」を入れてみたが、死語集に登録済みなのかもしれない。
 ひらかなy099:こいしさに こがれしぬのを まつだけよ
          もしきかれたら いないとこたえて?
 ひらかなs1236:こひしさに しぬるいのちを おもひいでて
           とふひとあらば なしとこたへよ 
【略注】○読人=中務(なかつかさ)らしい。中務は悠 003(06月30日条)既出。

098 ねえあなた私の

2005-11-07 06:10:00 | 新古今集

 歌集のこの辺りは、恋の苦しさ・辛さ・恨みなどに、溢れる。
 こんな調子である。
  1224 つらしとは思ふものから伏柴の
      しばしもこりぬ心なりけり     藤原家通
  1225 頼め来し言の葉ばかりとどめ置きて
      浅茅が露と消えなましかば    読人しらず
  1226 あはれにもたれかは露も思はまし
      消え残るべきわが身ならねば   源雅通
  1227 つらきをも恨みぬわれにならふなよ
      憂き身を知らぬ人もこそあれ   小侍従
 ひらかなy098:ねえあなた わたしのどこが きらいなの?
          みじかいいのち さかせましょうよ
 ひらかなs1228:なにかいとふ よもながらへじ さのみやは
          うきにたへたる いのちなるべき
【略注】○なにかいとふ=(何か厭ふ) Why do you dislike me (so)?
    ○よも長らへじ=まさか、長生きしないだろう。
    ○さのみやは=そういつまでも。
    ○大輔=悠 019(07月20日条)既出。
【補説】評価。「恋慕の苦しさで死ぬ思いでいるのに、近寄らない男に恨みを訴え
    た作。」(小学版)


短歌写真2005-1105 宿駅の

2005-11-05 06:30:00 | 短歌写真

 今や乗降客数日本一(区の調べで、一日約350万人)の駅、新宿。でも、夜は少し淋しげ。「宿」を駅名と家庭に掛ける。
 ひらかな:しゅくえきの ひかりにつどふ ひとのむれ
       なにとさびしく はなれちるらん

097 だれからの遣いの

2005-11-04 04:45:00 | 新古今集

 女の気持ちになっての歌。「男なき家」の絵に詠んだ。(小学版)
 ひらかなy097:だれからの つかいのふみも ないけれど
        ひぐれておもう あのひとのこと
 ひらかなs1219:かけておもふ ひともなけれど ゆふされば
        おもかげたえぬ たまかづらかな
【略注】○かけて思ふ人=心に掛(懸)けて思ってくれる人。遣い文・贈歌をくれる人。
    ○夕されば=夕方になれば。日が暮れれば。
    ○玉かづら=「玉鬘。玉を糸に通して髪にかける女性の装具。」(同前)
    ○紀貫之=悠 012 (07月11日条)既出。

096 今日行くよ明日は

2005-11-03 05:10:00 | 新古今集

 続けて「読人しらず」。原歌は『伊勢物語』(二十三段)から。「男に飽きられたことを知りながら、なお、愛情をいだきつづける純真な女心」。(小学版) 今も変わらない、恋は男と女の駆け引き、という真実がある。時節は秋。変わりやすい心は、男?女?
 ひらかなy096:きょういくよ あしたはいくよの からてがた
          わたしのこいは まつだけなのね
 ひらかなs1207:きみこんと いひしよごとに すぎぬれば
          たのまぬものの こひつつぞふる
【略注】○頼まぬものの=頼りには(当てには)しないものの。
    ○読人=原歌に、歌の作者は河内の女、「君」は大和の男と。

095 夕暮れに命の

2005-11-02 06:00:00 | 新古今集

 久しぶりの無名歌人。じつは藤原時明(ときあきら)の、女性に託した歌か、と言われる。今夜、空いてる?などと、気楽に声をかける男(いうまでもなく貴族)への贈歌。
 ひらかなy095:ゆうぐれに いのちのはてる かげろうに
           どうしているか きくのはやぼよ
 ひらかな s1195:ゆふぐれに いのちかけたる かげろふの
           ありやあらずや とふもはかなし
【略注】○かげろふ=かげろう。蜉蝣(ふゆう)。蜻蛉。糸遊(いとゆう)。儚い・
    果敢無いものの譬え。「蜻蛉」の漢字は、「せいれい」「かげろう」「とん
    ぼ」の読みが当てられる。糸遊は、「漢語で <遊糸(ゆうし)> というところ
    から、早春や晩秋にクモの子が糸を引いて飛ぶものをいったとする説
    もある。」(三省堂版「大辞林」)
    ○ありやあらずや=(在りや~) 生きているのか死んでいるのか。to
    be or not to be。
    ○はかなし=(かげろうの、女の命は)儚い、果敢無い。

094 思い出す有明

2005-11-01 05:00:00 | 新古今集

 高名な僧の「思い出の中の、遠い日の後朝[きぬぎぬ]の別れ」(小学版)を詠った作品。リメイクしている筆者も、タイピングしながら走馬灯が脳裏をよぎる。
 ひらかなy094:おもいだす ありあけづきに ただよった
          あのよこぐもの わかれのあさを
 ひらかなs1193:ありあけは おもひいであれや よこぐもの
          ただよはれつる しののめのそら
【略注】○有明=夜明け(の月を見ると)。
    ○ただよはれつる=漂っている。to be lying。有明の月と横雲が、見る見る離れ
    ていくように、別れるのがつらい。
    ○しののめ=夜明け。暁。美しいやまとことばのひびきがある。漢字表記は「東
    雲」。ドイツ語では Morgenrot(モルゲンロート)、反対語は Abendrot(アーベント
    ロート)。山行などでもよく使う。英語では morning glow。やはり「しののめ」には
    かなわない。
    ○西行=悠 006 (07月04日条)既出。
【補説】しののめ/東雲 ①一説に、「め」は原始的住居の明り取りの役目を果してい
    た網代様(あじろよう)の粗い編み目のことで、篠竹を材料として作られた「め」が
    「篠の目」と呼ばれた。これが、明り取りそのものの意になり、転じて夜明けの薄
    明り、さらに夜明けそのものの意になったとする。
    ②東の空がわずかに明るくなる頃。あけがた。あかつき。あけぼの。
    ③明け方に、東の空にたなびく雲。
    ④曙色 明るい鮭色・夜明けの空の色。東雲色ともいう。
    ⑤曙色  明け方の空の色のような浅い黄赤色を言う。「東雲色(しののめいろ)」
    とも言われる。
    出典:①~③は「広辞苑」。④は和名色事典。
     http://www.amcac.ac.jp/~suzuki/03irojiten/04irowamei/irowamei01a.html
    ⑤は日本伝統色名(日本染織工芸愛好会、既出)。