巻十五(恋歌五)は 1336~1434。恋歌五巻のうち、同時代の作品が11首で最少、読人しらずのものは27首で最多。現代詠は仮定形で難産し、「声に出して詠う」という目標から遠い。
ひらかなy107:こいやぶれ のはらのつゆと きえさっても
はかのくさばを みるひともない
ひらかなs1339:こひわびて のべのつゆとは きえぬとも
たれかくさばを あはれとはみん
【略注】○草葉=墓に生い茂る草葉。
○藤原公衡(きんひら)=公能(きんよし)の子。
十一月十五日は「七五三」(しちごさん。しめ=標)。女児は三歳で「髪置の儀」(かみおき)、七歳で「帯解の儀」(おびとき)、男児は三歳、五歳で「着袴の儀」(ちゃっこ)。きょうは各地で小さな紳士淑女が見られる。
「帯解きの日」は七五三、「日は高く晴れ」は秋晴れ。紫式部の枝が垂れかかって、幼児の「神となり、髪(長髪=長命)となるように」との願いを込めた。両親の了解を得て載せる。写真のNちゃん、おめでとう!
ひらかな:おびときの ひはたかくはれ むらさきの
しきぶのたれて ながかみとなれ
☆今朝の朝日新聞の「花おりおり」は、小紫式部! 有職故実の家では婚姻の儀。
男を待つ間に、月日が過ぎて齢(よわい)を重ねていく、寂しさ・空しさ。特別な技巧のない、実に素直な心の表出である、と思う。式子百首からの入集。「本歌の嘆きをいまさらのようにかみしめさせられた哀感が、温雅に流露している。」(小学版)
ひらかなy106:それでもと そわそわまって みたけれど
つきひはすぎて はなもしおれて
ひらかなs1328:さりともと まちしつきひぞ うつりゆく
こころのはなの いろにまかせて
【略注】○さりとも=(然りとも) そうであっても。それにしても。それでもなお。
○心の花の色=野山の花のように、移ろいやすい人の心。「移り」も、「花の色は
うつりにけりな」に同じく、縁語。
○式子=悠 011(07月09日条) 既出。
【補説】1328の本歌 色見えでうつろふものは世の中の
人の心の花にぞありける (古今・恋5 小町)
1329式子詠 生きてよも明日まで人はつらからじ
この夕暮を訪はば訪へかし
1328関連 世の中の人の心は花染めの
うつろひやすき 色にぞありける (古今・恋5 読人しらず)
忘れられたり捨てられたりしたら、もう生きてはいけないわ、とまで思いつめたのに、簡単にはそうさせてくれないのが、世の常というものかしら。やっと一首、成りすましではない、本物の女性の歌。
ひらかなy104:わすれられ いきてはいない はずなのに
よのしがらみで それもできない
ひらかなs1296:わすれなば いけらんものかと おもひしに
それもかなはぬ このよなりけり
【略注】○忘れなば=男が私を忘れた時には。捨てられたら。
○大輔=悠 019(07月20日条) 既出。
歌集この前後の作品は、男性が女性の心理に託して詠んだものがほとんどである。
【略注】○忘れじといひしばかりの=「忘れないよ。必ず行くからね。」と言ったきりの。
○その夜の月は=共に過ごしたあの夜の月は。
○藤原有家=重家の三男。本名は仲家。選者の一人。19首。
ひらかなy103:「かならず」を しんじながめた あのときの
つきがのぼって さびしいきもち
ひらかなs1277:わすれじと いひしばかりの なごりとて
そのよのつきは めぐりきにけり