カエル 失格

カエル　失格

カエルは　池や小川にて

ただ鳴いていさえすれば

それで良かったのかもしれぬ


でも　慣れぬ文字を使い

自分の思いを　たどたどしい文で

いろんな相手に伝えようと試みる

まるで　風車に向かうドンキホーテのように


百年前に　この世に生まれ

「人間失格」などを著した太宰　治は　

戦前　戦後に生きた己の人生を辿り

かつ　社会の矛盾やつながりを

一見やさしそうな文体で　深く追求した


社会に厳しく　そして　己には　

もっと厳しく向き合い　果ては

知り合いの女性と玉川上水に入水した

文豪　それは　かの　太宰　治


夫唱婦随で仕上げた名作の数々は

今も若い人やいろんな人たちに愛読されている

かつて　学生のころ　愛読者の一人だったカエルは

今　彼程に　己に厳しく向き合っているか？！


「カエル　失格！」

草葉の陰から　そう呟いて　

文豪は　笑っているかもしれぬ


PS　２００９.6.1８草稿　６月１９日の桜桃忌に想う