川柳・ボートっていいね!北海道散歩

川柳・政治・時事・エッセイ

しなやかな翼・・・佐藤容子

2007年10月06日 | 川柳
      現代川柳『泥』第三号 大会・句会での課題について

 共通のテーマで、各人各様がイメージを膨らませ作句しているときの雰囲気はピリピリとした中にも、大会や句会ならではの楽しさがある。

 そして、それらの作品が披講されるときの期待感は、未知の世界を覗くような好奇心にも似て、課題吟ならではの醍醐味を味わう瞬間でもある。

 それらの一句一句に耳を澄ませていると、ある作品からはミクロの世界へと、またある作品では巨大な宇宙へと、聞き手たちの無限の空間へといざない、一方では現実味を帯びた作者の声や、厳しいまなざしから、リアルな世界に連れ戻されたりと、五感をしなやかに浮遊させながら、作者のイメージと表現の自由なはばたきに感嘆してしまうときでもある。
 そして、ひとつのテーマへ、同等に向き合い句作することは、より豊かに鮮やかに個性の差異を観る愉しさでもあり、雑詠吟の個性とはまた違った個性の発見がある。

 それは課題と取り組む作者の発想力や表現力などに、すでに個のたましいというようなものが、移入されるからなのではないだろうかと思える。

 そう言いながらも、実は課題吟には同想句が集中してしまうという現実が確かにある。

「課題に忠実であれ!そして翔ぼう!」とは思いながら、翔ぶに翔べないことがある。

 その理由のひとつとして、概念的で、一定の城から作句者としての怠慢という指摘があるかも知れないのだが、そうばかりとは言えない。

 ここ数年前から大会や句会でイメージ吟という、従来にない課題方法が各地で、ひとつのブームになってきているのだが、これは、同想句を避けるには良い方法ではないかと思っている。

 始めて、こうした大会を経験したのは、青森の「北の広場」でのことだった。それは、箱の中の見えない物体に触れることと、朗読された一遍の詩からと、鉢に植えられた花を視て、の三題だった。参加者の触覚、聴覚、視覚に委ねられた課題には、同想句が殆どみられず、それにも益して、きらきらした作者の新鮮な個性の響き合いに心地よい刺激を受けたものだ。

 川柳とは個の文学であり、孤を表白するものだから、課題吟は不要なのだと言う意見がある。分からなくはないが、個人の内面世界にばかり終始している作品では窒息してしまう。時には自由につばさを拡げ仮想の世界を飛んでみたい。

 課題吟の連帯感は、大会には不可欠な存在である。あくまでも課題に忠実に、そして自由に。
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意欲をかきたてるもの・・・池さとし

2007年10月06日 | 川柳
        現代川柳『泥』第三号 大会・句会での課題について

・・・続き。

 全国的に見ても、きわめてユニークで魅力的な大会と思われている「北の広場」の大会での「課題」を眺めて見ると、平成13年は「心」「色」「観る」「聴く」「触れる」であり、席題は「水槽の中にめだか数匹」「植物の種の入った細長い楽器」「小さなかごに  炭化した松かさ」を、見たり聴いたり触ったりしての連想吟でその中から次のような作品が誕生した。
 
          聴き役にまわろう春の目鼻立ち   はる香
          観覧車児のおしっこよ虹になれ   州 花
          渡来仏とぼとぼ行けば水けむり   作二郎
          さむいからみんなで名前呼び合うの 裕 子
          僕の戦史です歯形がずれている   一 車

    また14年度は、「波」「気」「狂」「間」「土」「唄」であった。

 北海道大会のここ数年の「課題」を観てみると、平成11年、「移動」拘る」「捏れる」「笛」「馬」「匙」

         寸劇は終わった回転木馬の眼    青葉テイ子

 平成12年、「来た」「海」「道」「昇る」「実る」「響く」「試す」
   
         スイカ完熟 八月の死者呼びにゆく 大橋百合子

 平成13年、「しっとり」「せっかち」「きっかけ」「紙」「血」「鏡」「箱」「トンネル」。

         再生紙わたしの昭和史を包む    佐藤 容子

平成14年、「刻む」「捨てる」「信じる」「利」「礼」「涼」「風」で、

         最果てを人間臭くする風車     干野 秀哉

 作品は、知事賞を獲得した作品で、課題それぞれの特選句を、さらに第二次選考にかけてのものであり、かなりの討論の時間をかけて決定していると聞いている。

 テーマからは、まったく離れて横道に逸れてしまうのだが、最近特に、充分な話し合いのもとで決定されたであろう筈の作品が、後日違う場において、選考委員に真っ向から批判されているとの噂が耳に入ってくる。

 そんなことから推測すると、第二次選考会では、十二分な討論がなされていないために起きる現象なのではなどと思ったりしてしまう。

      本論に戻ろう。
 
平成15年の課題は「占める」「返る」「住む」「音」「夢」「路」である。

 作者は、課題と言えども、ひとつの題に誘発されて、自由なイメージを思い描くことになる。それこそ、創作吟とまったくおなじように、自分自身の魂を投入しながらの創作活動である。
 
 作者のイメージが、大空にはばたく鳥のように自在に百態を演じる風のように伸びやかに、そんなきっかけを与えてくれるような課題であるならば、そこから産み出される作品は、創作吟と同一化がはかられたと考えられるような作品に結びつくこと、おのずから明白である。
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