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箸の位置・・・佐藤容子

2007年10月26日 | 川柳
              現代川柳『泥』第4号

 駄菓子屋の前にぽつんと錆びた影
       薄墨に溶かすひとつの影法師
   はずむ影あり古い帯を干す
                   掃除機の吸引力に負けた影
                     ざわざわと隠した影を揺らし秋
                        ひびわれた影も並んでいる本屋
声のするはがきを時々手にのせる
   大切にしたいいつもの箸の位置
     身のうちになに積もらせて夜の長さ
                        夜は透き許すかたちに伸びる爪
                   立ち上がるたびに零してしまう海
             ひかりあうために逢うこと話すこと
去年より小さく揺れて手の海は
    瓶に押すいっぽんきりの川の音
          雨音や詩人になれず狂女にも
                      無意識に閉じた目かがみ荒れている
                   風になる前に花くび切り落とす
             海見える部屋でたたんでおく尻尾
わたくしも防犯カメラに写される
     醒めた肌から発ってゆく夜汽車
          萩すすき死後のはなしは曖昧に
                        井戸のある町で洗っている背骨
                    正座して聞く過去形のオルゴール
                  約束の小指を流す夜の川
丁寧に今日の夕陽を手で洗う
   たっぷりと遊んだ足の裏は晴れ
      ワンテンポ遅れてビニール傘の息
                        あたたかい便座思想のない家族
                    夜の襞ひそひそ伸びる豆の蔓
              人ごみのひとりになって覗く穴



                    生きている限り眼に入る造り花  不凍

   造花にはなれぬ秘の花抱いて逝く
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