横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

ブラックペアン2についての感想(続き)

2024-08-09 14:37:32 | 心臓病の治療
 ブラックペアン第5話 ストーリーには手が込んでいましたが、注目の心臓手術シーンでは、流れるようなスムースな展開でした。こうした医療ドラマはプロがみても楽しめるように、わざとちょっとした違いを作ったりしてくれていて、そこがまた見ていて楽しめる部分の一つです。
 前回のブログに「続き希望」のボタンを頂きました。推してくれた方、ありがとうございます。
 その前に記載したブログでは、通常上行大動脈に挿入するこの送血管、いったいどこに入っているのだろう?との疑問に、ある仲良しの心臓外科教授から、「遠位弓部送血!」と高難度の手技の答えを頂きました。それが正解だとすると、たしかに世界一の外科医にしかできない高難度手術です!でも管の中の血液が静脈血の色なんですけど・・・。
 問題のシーンは以下

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Herald Bleeding 大動脈から気管・気管支または消化管への瘻孔形成への前駆出血

2024-07-29 10:02:11 | 心臓病の治療
 大動脈から気管・気管支や消化管へ瘻孔を作って大出血を起こすことがあります。この場合は即死してしまう可能性があるが、多くの症例では、前駆出血を呈します。この特徴的な前駆出血は“herald bleeding”と呼ばれ約2/3の症例で認め,致死的な大出血に先行することが知られてそうです。
 “Herald bleeding”の機序としては,一時的な血圧低下と瘻孔部の局所的な血流低下の結果,血管攣縮と血栓形成が起こり一時的に瘻孔が塞がれ止血されるが,瘻孔の閉鎖による正常血圧への復帰により血栓が飛ばされ大出血に至ると考えられているようです.前駆出血から大出血に至るまでの時間は,50%が24時間以上,29%が1週間以上と比較的時間が経ってから大出血が起こる症例も少なくないとのことです。
 いずれにしろ、放置した場合は致命律100%ですので、致死的大出血を起こす前に何らかの外科的治療をする必要があります。
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ブラックペアン2第2話 左室破裂の臨場感

2024-07-21 10:16:53 | 心臓病の治療
 ブラックペアン2始まりましたね。突拍子もないストーリーですが、いろいろ突っ込みどころ満載のところも医療関係者が楽しめるように作っている見どころだと思いますし、実際にとても楽しませでもらっています。
 実際の手術シーンでは、僧帽弁輪の石灰化を除去した後に、左室破裂して大量に出血があるシーン、まさにあの臨場感、実際に味わったことがないとわからないパニック感、実際そのものに表現されていて素晴らしかったです。しかも、修復したあとに遮断解除した瞬間、出血が止まっていなくて再度出血が湧き上がってくるシーン、まさに心臓外科医人生が終わってしまうって絶望感を感じるシーン、とてもよく表現されていました!
 今日のドラマ 第3話も楽しみにしています。
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OPCAB学会

2024-07-17 00:35:41 | 心臓病の治療
 OPCAB研究会からACVS/OPCAB学会と進化し、2024年は先週その学会が行われました。今回は大動脈弁を極めるプログラムで各エキスパートが集結して貴重な講演を通じて深く勉強することができるプログラムでした。
 筆者はポスターセッションの座長を仰せつかりましたが、このポスターセッションも大動脈弁と関連した発表です。横須賀市立うわまち病院からは大動脈弁置換術後PVFに対するApico-Aortic Conduit、およびMICSーAVRの治療成績について発表しました。
 来年は冠動脈外科学会とは切り分けて、沖縄で開催だそうです。是非行きたいです。
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横須賀のMICS比率

2024-07-15 06:24:29 | 心臓病の治療
横須賀市立うわまち病院では積極的に低侵襲アプローチを採用しており、201-23年の平均の心臓胸部大血管手術に対する側方開胸の比率は1/3ほどになっています。患者さんにとってベストなアプローチを選択することが安全な手術の第一歩です。すべてが小開胸アプローチできるわけではありませんが、かなりこの比率は高い方なのではないかと思われます。
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日本冠動脈外科学会2024 MICS-CABG

2024-07-15 06:11:49 | 心臓病の治療
今年の日本冠動脈外科学会は東京、京王プラザホテルで開催されました。数年前に山口で開催されたときにはじめてMCS-CABGのセッションが開催された感がありましたが、今年はMICS-CABGは主要テーマの一つになっています。横須賀市立うわまち病院からも、MICS-CABG導入によって循環器内科からのCABG紹介が増えるという内容の発表をさせていただきました。
 
2022年の全国のPCI件数24万件にたいして単独CABG件数11000件あまりでPCIに対する比率は22:1です。うわまち病院も筆者が再赴任した翌年が47.8:1だったのが徐々に比率が変化し2023年は6.2:1となっております。MICS-CABG開始により今まで紹介されてこなかった症例も紹介されるようになったと実感しています。CABG増加には院内より他病院からの紹介が増加しているこもと関係しています。
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ブラックペアン2 この管はどこに?

2024-07-15 06:01:04 | 心臓病の治療
二宮君主演のブラックペアン2 先ほど録画を見ましたが、今回も左室破裂の出血シーンの臨場感、恐怖感、演技も演出も素晴らしかったです。遮断解除すると血が沸き上がって来て、オランダ少年になるところ、そしてそこから命を救うところ、まさに心臓外科の醍醐味です!ステージにOPE室を持ってくる演出も奇抜でした。実際の心臓をテレビに出すわけにはいかないことから模型を使ってOPEを再現しているのでしょうけど、送血管に見える、あの管、どこに入っているのでしょうね?主肺動脈でしょうか?色は静脈血になっているので、肺動脈なのかもしれません。また、心筋保護回路がエア抜きされていないがとても気になりました。また、僧帽弁手技は右側左房切開アプローチではないかと思われますが、いきなり右房を切り出していました。ダイレクトアナストモーシスはLMT(左主幹部#5)をインターポーズするはずですが実際の置換した部位は前下行枝(#6)でした。使っている糸は8-0といっておきながらどう見ても5-0または4-0でしょうか。けっこう太かったです。こうした間違い探しをする楽しみをつくるところも、最近の医療ドラマの面白いところです。
 毎週楽しませてもらっています。
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J-MICS2024 日本低侵襲心臓手術学会

2024-07-07 09:20:03 | 心臓病の治療
 今年のJapan MICS Summitは、大分で開催されました。大分市は意外に大きな町で、その気候から大分の優しいおおらかな人柄はこの土地からつくられるのだと思いました。
 今回のテーマはDevils I met。MICS手術中に遭遇したトラブルについての情報共有のいい機会になりました。MICS特有のものから、正中アプローチでも発生しうるトラブルなど、多くの情報共有ができました。
 特に僧帽弁形成において、弁輪の糸掛けで左冠動脈回旋枝を閉塞してしまう経験およびその詳細な検討は大変勉強になりました。発生頻度は1%以下でも、一度発生すると致命的になったりその後の生活に大きな支障が出てしまうリスクを含んでいるので、重要です。
 当院からはCygnet遮断鉗子による遮断不十分のリスクについて発表しました。Cygnetとは白鳥の幼鳥のことを指す言葉のようですが、この鉗子のフレキシブルなシャフトがその首に似ていることから命名したのではないかと想像します。
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5年ぶりの市民公開講座再開 足のむくみと静脈瘤

2024-07-07 09:14:56 | 心臓病の治療
 横須賀市立うわまち病院ではコロナパンデミックが終息して日常生活が戻りつつある昨今の状況を鑑みて、今年度から市民公開講座を再開することとしました。まず最初の皮切りに、①足のむくみと下肢静脈瘤、続いて②循環器内科副部長山脇医師による、弁膜症とTAVI、そのあと③心臓血管外科の低侵襲治療について、と年内に三回を予定しています。
 横須賀市立うわまち病院は三浦半島でいち早く静脈瘤の治療を2009年の診療科開設時から開始し、最近ではほぼすべての治療が外来手術となっています。最新の静脈瘤治療、それと鑑別が必要な足のむくみの話を交えて、当科の玉井医師にしてもらいます。質問コーナーも設けますので、ご興味のある方は、うわまち病院での最後の公開講座になりますので、是非ご来場ください。

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成人大動脈縮窄症の手術

2024-06-11 00:55:42 | 心臓病の治療
 大動脈縮窄症は先天性の大動脈異常がほとんどで、成人期まで無症状のこともありますが、その場合は下半身の低血圧、上半身の高血圧を呈して、そのための大動脈解離を発症したり、高血圧に伴う頭痛などの随伴症状が出たり、また、狭窄部位で発生するジェット血流が当たる遠位弓部に狭窄後拡張→大動脈瘤を呈することもあります。また、下半身への血流低下を補うために側副血行が発達し、特に内胸動脈や肋間動脈が太くなっているため、手術の際は予想外の出血に遭遇することもあります。
 保存的治療としては、上半身の高血圧を是正して二次的な疾病を予防することが基本手で鵜が、根治治療は狭窄部位を解除して下半身の血流を増やすことにあります。これには解剖学的もしくは非解剖学的バイパスが一般的です。狭窄部を切除して置換することは周囲の癒着や反回神経、横隔神経の損傷のリスクがああり、また発達した側副血行路からの出血も無視できませんので、お勧めできません。一般に左鎖骨下動脈が拡張している症例が多いので、この場合は左鎖骨下動脈~下行大動脈バイパス術が一般的です。この手術では下行大動脈吻合部に部分遮断鉗子をかけて吻合することで、下半身の血流を維持しながら血行再建できるため人工心肺不要で、より低侵襲です。多くは左第3肋間開胸アプローチです。ほかには、上行弓部大動脈が拡大している場合は特に適応となりますが、正中アプローチからの弓部大動脈再建です。遠位側吻合は加工大動脈に端側吻合し、狭窄部を閉鎖するのが肋間動脈からの出血を最小限にできるため一般的です。ほかの方法では非解剖学的バイパスは腋窩~両大腿動脈バイパスや、開胸を伴う場合は上行大動脈~両大腿動脈バイパス術などが考慮されます。また上行大動脈~下行大動脈バイパスも一案です。腋窩~両大腿動脈バイパスは開存率がやや落ちると考えられていますが、下半身の血流デマンドが大きいため、通常は長く開存します。
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血管外科学会総会 In 大分 2024 大動脈解離の断端形成

2024-06-04 01:46:05 | 心臓病の治療
 血管外科学会総会のため大分に行ってきました。今回は急性大動脈解離の断端形成のシンポジウムに始まり、この断端形成の話が多かったです。ニッチなテーマにちょっと疲れたという意見もありましたが、他施設の工夫を勉強する貴重な機会となりました。それでいて、自施設のやり方が間違っていないとの確信も得ることが出来ました。
 急性大動脈解離の断端形成に関して、多くの施設でバイオグルーをいまだ使用しており、その中で数%に仮性瘤が発生しているようですが、それでいいと思っている施設と、当グループのように仮性瘤を一例でも作りたくないことから使用を辞めている施設もあり、千差万別ですが、おおむね6割以上の施設でいまだにバイオグルーを使用しているようでした。
 また当グループでは内外二重にフェルトを巻いて断端形成しており、これによって組織のカッティングによる出血、新たなエントリー形成を予防しておりますが、内側のフェルトを使用していない施設も少なくないようでした。おそらく手技が上手な外科医が執刀すると内膜のカッティングなどで新たなエントリーを作ることはないのかもしれませんが、初心者でもそうした心配のない内外二重の補強が最強と思われました。
 当施設ではこの内外二重の断端形成を新しいPTFE織布のニットパッチを使用して行っており、これによって従来の不織布のフェルトに比較して針孔出血が少なく止血効果としては高まり、また内側のニットパッチは従来のフェルトに比較して薄いため内腔に突出して狭窄したり溶血をおこすことがないというのもメリットです。今後普及していくものと思われます。
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MICSにおけるトラブル対策④ ペーシングが効かない!

2024-05-26 05:39:37 | 心臓病の治療
 MICSアプローチでは正中アプローチとちがい、簡単に心外膜ペーシングができない。このため確実な心外膜ペーシングを遮断解除前に設置しておくことが肝要である。遮断解除してからペーシングが効かないことが判明した場合は、心外膜リードの追加設置が必要になることがあるが、人工心肺中であれば血管内ボリュームを脱血して心臓を虚脱させることで可能になる場合がある。このため、人工心肺離脱までにペーシングが有効であること、特にその閾値を確認しておくことは極めて重要である。
 人工心肺離脱後にペーシングが想定外のタイミングで効かなくなることは稀に経験する。側方開胸アプローチでの心臓マッサージは有効にはできない可能性があり、悪夢の時間が到来する。筆者は心嚢ドレーン設置した際に、ペーシングリードが引っかかって抜けてしまった瞬間に心停止となった経験がある。この時は、カウンターショック用に設置してあったパッドから体外ペーシングすることで循環維持が可能で、この間に経静脈から右室に一時ペーシングを透視下に設置することで解決した。
 体外ペーシングが確実に出来る位置にバッドを貼っておくことは安全なMICSにおいてきわめて重要である。
 ある施設では、二つの対外パッドを患者背部に貼付して心臓を挟む位置にしていないことがある。この施設において手術終了時に突然発生した完全房室ブロックにより心停止となった経験がある。この時に辛うじて心外膜ペーシングが不安定ではあるが効果があるうちに、大腿静脈から透視下に経静脈的一時ペーシングカテーテルを挿入して難を逃れたことがあった。
 筆者の施設では、ペーシング付きスワンガンツカテーテルを留置して心外膜ペーシングとともにあらかじめ閾値などをチェックしているため、確実な二重の安全策を設置している。それと確実な体外ペーシングの位置にパッドを装着して三重の安全策を設置している。
 強調したいのは正中アプローチと比較して体外ペーシングの位置は非常に重要で、必ず心臓を挟む位置に設置しておくことである。筆者の施設では右は肩甲骨、左は左のニップルの尾側である。
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MICSにおけるトラブル対策③ 送血圧上昇

2024-05-26 05:31:30 | 心臓病の治療
 MICSの多くは大腿動脈送血が選択され、一部は腋窩動脈送血とするのが一般的である。これら抹消動脈からの送血ではしばしば送血圧が上昇してしまうことを経験する。送血圧上昇は人工心肺回路出口で通常測定するため、回路そのものの抵抗で実際の動脈圧と数値が解離していることが多いのを知っておく必要があるが、それでもカニューレの先当たり、角度の問題などで上昇したのを放置して手術を続行することは、大動脈解離や溶血、組織低灌流などのリスクがある。
 一般には送血路の追加によって圧を低下させることが第一選択である。大腿動脈送血追加が一般的である。そのため、送血路を二本に分けられるような速やかな手技が必要であるし、回路のそれに対応したものとしておくことが望ましい。
たとえば術前から腸骨動脈に狭窄がないことなどを造影CTで確認しておくことが必要であり、安全な手術のためには術前の造影CTは必須と考える。
 MICSアプローチから上行大動脈送血を実施している施設があるが、この手技に習熟していない施設の場合はリスクを伴うため、場合によっては正中アプローチへの変更も躊躇すべきではないと考える。
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MICSのトラブル対策② アプローチする肋間が思ったより低かった

2024-05-26 05:23:26 | 心臓病の治療
 多くのCT撮影では、両上肢を挙上した姿勢で撮影しているため、MICSにおいて右上肢を挙上して手術している施設は大きな差はないかもしれないが、右上肢を挙上せず、背側に進展する位置で固定し手術している施設に関しては、CTの予測とは違う視野となる可能性がある。僧帽弁手術においてはそれほど差がないが、大動脈弁手術における腋窩アプローチ第4肋間においては、思ったより尾側でのアプローチになる可能性があり、筆者も第3肋間に変更した経験がある。特に皮膚切開がより正中側になると、肋間の位置が尾側になるため、第4肋間での大動脈弁手術は、より腋窩側を皮膚切開することで、頭側よりのアプローチとなることを知っておくべきである。
 思ったよりも尾側にあって上行大動脈が遠くなってしまった場合は、皮膚切開の延長による創拡大、第3肋間への変更、肋軟骨付着部から肋骨を外すことによる肋間開大幅の増大などで対応可能で、術後の疼痛に関してはこれらの追加処置をしても影響ないことを経験している。
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MICSの術中トラブル対策① Signet遮断鉗子

2024-05-26 05:16:08 | 心臓病の治療
 MICS(側方小開胸アプローチによる心臓手術)が広まる中、安全な心筋保護が注目されている。僧帽弁手術では、ルートカニューラからの間歇的な心筋保護液注入において、エアーの混入、大動脈弁逆流による注入量不足、注入間隔不適切等が指摘されている。MICS特有の注意点を熟知することが安全な手術には必要である。
 加えて、遮断不十分だと漏れた血液が冠動脈に灌流してしまい、心静止が得られない、またはすぐに心臓が動き出すという事象が発生する。ソフトクランプは組織に優しい反面、遮断不十分が発生しやすい。
 臨床現場で頻用されているSignet遮断鉗子では不十分な大動脈遮断となりやすく、その対応について考察する。
 経験した症例① 僧帽弁形成術において右肺動脈頭側でSignet鉗子で遮断後、ルートカニューラから心筋保護液注入し十分な注入圧にも関わらず、心静止がえられないため、注入を中止し、ルートカニューラの接続を開放すると血液逆流が持続し遮断不十分と判明。遮断鉗子の頭側に別のフレキシブル鉗子で二重に遮断したところルートカニューラからの逆流が消失。再度心筋保護液注入し心静止得られ手術可能となった。
 経験した症例② 上記と同様の事象が起き、遮断部位を右肺動脈頭側から心膜横洞に架け替えて心静止が得られた。
 経験した症例③ 同様の事象に対して遮断鉗子の噛みを強くすることで逆流が停止した。
 経験した症例④ 心拍動のまま遮断する施設において、遮断鉗子をかけても動脈圧が消失せず遮断不十分であることが判明した。大動脈周囲をさらに剥離し、遮断鉗子の挿入角度を変更して再度遮断したところ、動脈圧が消失し遮断が確実にできたことが判明した。
 
 遮断不十分な事象は新しくMICSは初めて間もない施設で発生しやすい印象がある。特に大動脈切開しない僧帽弁MICSにおいてその認識と重大事故につながる。遮断不十分を検出するにはルートカニューラからの逆流以外に経食道エコーで検出される可能性もある。特にSignet鉗子は遮断力が弱いため発生しやすいことを念頭におく必要がある。また、周囲組織を巻き込んだり、大動脈に直角に遮断されないことで発生しやすくなる。正中切開とは異なる、遮断に関する注意点があることを熟知して臨む必要がある。
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