横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

心室中隔穿孔の手術のコツ

2019-11-28 17:39:54 | 虚血性心疾患
心室中隔穿孔は現在も手術死亡率50%の非常に危険な心筋梗塞合併症です。
左心室と右心室の間にある心室中隔に心筋梗塞で壊死した心筋が左室圧に耐えられず右室に向かって穴が開いてしまい、大量の左室内血液が右心系に流れ込んで心不全を起こします。

この心室中隔穿孔に対する救命手術はパッチでこの穴をふさぐことにあります。この手術の難しさは、心筋梗塞を起こした心筋組織が脆弱で容易に組織が崩れてしまい、パッチを縫着した部分でさらに裂けたりして穿孔部が残存し、術後もシャント血流が残って心不全から離脱できないことにあります。また脆弱な心筋組織が崩れたところからの出血制御に難渋することもあります。

このパッチ縫着のコツはなんといっても、より正常に近い心筋にパッチを縫着し、縫着した部分がしっかりとパッチを固定できることです。このためには中隔の壊死心筋を切除、除去して健常心筋がより判別でき安くする必要があります。またこれを縫着する糸を結紮するときは締めすぎて組織を決して断裂させないことです。この組織を断裂させない注意は左室切開線を縫合するときも同じです。この二つのコツを実施できれば救命の可能性は高くなります。これによって筆者の場合の心室中隔穿孔の救命率は90%となっています。

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高度石灰化した冠動脈への冠動脈バイパス術

2019-11-25 09:17:59 | 虚血性心疾患
 動脈硬化は粥腫によるソフトプラークだけでなく、動脈壁の石灰化も伴うことが多く、こうした石灰化は外科医泣かせの病変でもあります。石灰化はすなわち骨のように固い石灰化した板状の病変のため、遮断したり切開、縫合など全ての外科的な吻合作業を不可能にします。これは大動脈壁の場合は人工血管置換術の際に針が通らず、また人工血管とのフィッティングも悪くなるので吻合を困難にしますが、冠動脈バイパス術の際には吻合できる場所が見つからない自体に陥る可能性があります。
 術前のCTで高度の石灰化がある場合は、それを予測した上で手術に臨む必要があります。石灰化がひどい場所を切開すると冠動脈壁を壊してしまった上、吻合できないので術前よりも血流状態を悪化させるリスクがあります。冠動脈バイパス術のカテーテル治療に対する優位性として、病変部位を触らずに健常な部位に吻合することですので、健常な部位が見当たらない患者さんには有効なバイパス術が出来ません。術前の患者さんへの説明で、もしかしたらつなげる場所がないかもしれない、ということも伝えておく必要があります。

 経験的には心臓は常に拍動しているので、その拍動にあわせて冠動脈も動きます。この動きを可能にするために、固い部分と固い部分の間には間接のように必ず柔らかい部分があり、この関節部分ならなんとか吻合可能なことが多く、今まで予定の枝を石灰化のために血行再建できないということはありませんでした。関節部分がなくとも、心尖部には石灰化していない部分が見つかることも多々あります。
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冠動脈バイパス術に使用する大伏在静脈の内視鏡的採取:Vasoview

2019-09-04 23:21:56 | 虚血性心疾患
 冠動脈バイパス術に使用するグラフトとして未だに大伏在静脈の使用は非常に使いやすいため広く使われています。
 この採取方法として一般的には、大伏在静脈に沿った長い皮膚切開で採取することが多いのですが、特に下腿は皮膚の縫合不全やリンパ瘻などが起きやすく、より小さい創で採取する方法として内視鏡的採取があります。
 専用のデバイスとして、Vasoview(Getinge社)と、バードサフ(TERUMO社)があります。発売されてから10年以上経過していますが、保険召喚されないために使用している施設の持ち出しになり、普及していません。横須賀市立うわまち病院および関連施設では、下肢の閉塞性動脈硬化症や透析患者など、特に総省治癒に問題がある可能性の高い患者さんに限定して使用しています。定価22万円で納入価が18万円強とは、90万円の手術手技料に対して高額です。やはり限定して使わざるを得ません。
 それでも手術のクオリティがもっとも大事であると信じているため、必要な症例では持ち出しが大きくても使用していきます。
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AFIRE試験 冠疾患に対するDOACの有用性

2019-09-04 03:13:54 | 虚血性心疾患
 心房細動に対する抗凝固療法が必要な患者さんが冠動脈病変を合併している場合、抗凝固療法に加えて、抗血小板薬を投与されていることが現在はほとんどです。
 AFIRE試験はこうした心房細動と冠動脈病変を合併した患者さんに対して、リバロキサバン(Xa阻害剤)のみ処方するのか、リバロキサバン+抗血小板薬を投与するのかを比較した、日本人を対象に行われた大規模臨床試験です。
 この試験の結果、リバロキサバン単独投与のほうが、生存率、心事故率、出血性合併症率、ともにリバロキサバン単独投与のほうが有意に有利であることが示されました。

 抗血小板薬重視の今までの常識が覆され、今後の処方事情に大きく影響する研究結果となりました。

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フローコイル(内シャントチューブ)の特性

2019-07-15 22:15:35 | 虚血性心疾患






内シャントチューブの特性について、冠動脈外科学会でセッションがありました。横須賀市立うわまち病院で担当したのは、ゲティンゲ社で取り扱う、フローコイルという内シャントチューブです。
 
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大伏在静脈のNon-Touch Technique

2019-07-15 21:53:41 | 虚血性心疾患
 冠動脈バイパス術に使用する下肢の皮下静脈である大伏在静脈を、静脈壁をさわることなく、周囲の脂肪組織ごと採取して、グラフトとして使用する方法を、近年、Non-Touch Techniqueと称し、長期開存が期待できるとして話題になっています。
 しかし、皮膚の感染、創部離開などのトラブルが従来の方法の4倍以上ともいわれ、また、術後1年んも時点での確認造影で、有意差はないが、開存率が良好であるとのデータもあるようです。しかしながら、1年後の開存率が90%前後とすると、そもそも最初の手術が、質がいいとは言えないと思います。こうしたデータでは、Non-Touch Techniqueのほうが開存率がいいという証拠にはまだ不十分と思われます。5~10年の長期間において開存率が良好である事が証明されるのを待つ必要がありそうです。
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左小開胸の冠動脈バイパス術における静脈グラフトの中枢側吻合

2019-07-15 21:12:48 | 虚血性心疾患
 左小開胸の冠動脈バイパス術、いわゆるMICS-CABGにおいて、大伏在静脈の中枢側吻合は、通常は上行大動脈に部分遮断鉗子をかけて、MICS用のMicro持針器、攝子などを使用して行います。第4~5肋間からでは、上行大動脈は斜めの視野になるので、ちょっと技術的には難しい吻合になります。左内胸動脈、静脈グラフトの組み合わせで行う場合、手技として最も難しい吻合は、この上行大動脈への中枢側吻合です。この中枢側吻合ではKnot Pusherを使用した縫合糸の結紮が必要になることも、また出血した場合の止血操作も非常に難しい場合があります。また、この斜めの視野である為、自動吻合器のPAS-PORTや、中枢吻合デバイスであるEnclose-IIなども使用できません。Puncherも長めの専用のものが必要です。PAS-PORTで中枢側吻合を行う場合は、下行大動脈になら、創部をやや大きくすれば可能です。大動脈に静脈を吻合する際に、小開胸の創部から表在エコー(Epi-aortic Ech)で大動脈の内膜のプラークなどの性状評価はできないため、事前に造影CTで精密に評価しておくことが必要です。

 上行大動脈の性状が不良な場合は、部分遮断鉗子をかけることが脳梗塞などの危険性がある為、吻合操作ができません。この時の他の中枢側吻合の方法として、左腋窩動脈に静脈グラフトを吻合して、そこから肋間を通して胸腔内に誘導する方法があります。この場合は、冠動脈への距離があるため、通常よりも長めに静脈採取する必要があります。大腿全長よりも10cm近く長く採取することが必要です。
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冠動脈バイパス術に使用する無いシャントチューブの流量特性

2019-07-09 18:17:38 | 虚血性心疾患




 いわゆるオフポンプCABG=人工心肺非使用で心拍動下で吻合する冠動脈バイパス術において、吻合中の視野確保および末梢心筋への血流確保を目的に内シャントチューブを使用することがおおいのですが、この内シャントチューブ、あまり今まで深く考えたことはなく、ただ、先輩医師に教えられた通りになんとなく使用していました。 
 吻合中の血行動態が崩れやすい、前下行枝や右冠動脈(#2~3)の吻合時に主に使用し、対角枝、回旋枝、後下行枝、房室枝などの吻合時には単純に遮断して吻合しています。最近は多くの施設で内シャントチューブは全く使用しない、というところも多いと聞いています。

 横須賀市立うわまち病院では、Getinge社のフローコイルという製品を使用しており、全国ではこの製品の使用数が5番以内に入るらいしいのですが、今回、この製品特性を勉強して初めてフローコイルの有用性などを考えるようになりました。

 他に内シャントチューブは4社から発売されており、国内では合計5社の製品が使用可能です。流量特性を発表しているのはこのフローコイルとメドトロニック社製のクリアビューという製品です。クリアビューが太い内シャントチューブを使用したときに、フローコイルに比較してより多くの流量を出すのに対して、フローコイルはより細い内シャントチューブを使用した際に、より多くの流量を出すという特性の違いがあります。中間の2.0mmの場合はほぼ両者が同じ流量となります。
 日本人の場合は、より細い内シャントチューブしか入らないことが多く、こうした細い症例に対してよりしっかりとした流量が出せるフローコイルのほうが、日本人には適しているといえます。
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膿胸術後のMID-CAB・癒着が予想される症例の左開胸低侵襲冠動脈バイパス術

2019-06-28 06:00:50 | 虚血性心疾患
 膿胸の術後といえば、石灰化した胸膜を持つ結核性胸膜炎の次に最も胸膜が肺に癒着していることが予想される状態です。これに対して、再開胸してMID-CAB(左小開胸低侵襲冠動脈バイパス術)が可能かどうか。
 実は、MID-CABは、左第5肋間で開胸し、その直下が心臓であるため、最初に肺とコンタクトするのは、心膜表面を少し剥離してからということになります。心膜をあけるだけであれば、肺が癒着していても左開胸で十分到達可能です。あとは左内胸動脈の剥離ができるかどうかです。左内胸動脈は胸郭の前面に走行しているため、その走行に沿った前面が肺と胸膜の癒着がはがせれば、採取可能です。
 経験した症例は、膿胸に対して3回の手術歴があり、肋骨も一部切除されていて、肋骨弓が離断されたままの状態となっていたため、開胸器をかけることができない症例でした。このため、通常のMedtronicの開胸器が使用できず、工夫として、胸壁にたくさんの1号絹糸をかけて、この糸を前方に牽引することで胸壁全体を釣り上げて視野を確保、不足分は腹部大動脈瘤の手術時に使用しているKondorのリトラクターを駆使して視野を確保しました。Kondor以外の、Omnitractなどのリトラクターでもいいと思います。スタビライザーにも装着部位に工夫が必要でした。
 しかし、そうした工夫が奏功すれば十分可能な手術と実感しました。
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MICS-CABGにおけるフローコイルの有用性

2019-06-26 21:16:39 | 虚血性心疾患



 オフポンプ冠動脈バイパス術において、視野の確保、吻合中の心筋への血流維持を目的に内シャントチューブを使用することが多いのですが、当医局の方針として、前下行枝の吻合の際は内シャントチューブを挿入して前壁領域の血流確保しながら吻合し、その他の吻合の際は、リトラクトテープなどで、牽引することで血流を遮断したまま吻合することとしています。
 しかし、最近、横須賀市立うわまち病院でも増加している左小開胸での複数の冠動脈バイパス術(MICS-CABG)においては、下壁や側壁においての吻合の際、より出血による視野不良を防ぐために内シャントチューブを挿入して吻合することがほとんどです。
 最近は内シャントチューブを使用しないで吻合する施設が多いと聞いています。そのためか、当院で採用しているフローコイルという商品名の内シャントチューブ(ゲティンゲ社)は全国で5番以内にはいる使用量の多さだということでした。
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MICS-CABG:左小開胸心拍動下冠動脈バイパス術のクラフト採取

2019-06-21 17:57:40 | 虚血性心疾患


左小開胸の冠動脈バイパス術=MICS-CABGは、写真のように左の小開胸から特殊な長い手術器具を使って内胸動脈を剥離し、それを冠動脈にフンゴウする特殊な手術で、特に左内胸動脈を前下行枝を繋ぐものをMID-CABと呼び、複数のバイパスするものをMICS-CABGと使い分ける場合もあります。
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内シャントチューブに関するシンポジウム = 冠動脈外科学会

2019-06-13 02:45:54 | 虚血性心疾患


 人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術 = オフポンプCABG(通称 OPCAB)では、心拍動下に冠動脈を切開して吻合する際に、出血に対していくつかの工夫をして実際の吻合を行っています。
 この工夫とは
① 内シャントチューブを挿入
② 炭酸ガスを吹きかけて血液を飛ばす
③ 中枢側をスネア(閉鎖) = クリップで閉鎖、または、リトラクトテープなどの牽引糸をかけて牽引
などをいいます。

 来月行われる冠動脈外科学会(金沢市)では、そのうちの、内シャントチューブに対してのシンポジウムが行われるようで、筆者はその中の指定縁者を頼まれています。
 実際には国内では4社の製品があるらしく、横須賀市立うわまち病院では、そのうちで内部にスプリングが入った構造の製品を全症例に使用しています。この製品に関して国内で三番目に多く使用しているからという理由で当施設が指定縁者に選ばれたようです。内シャントチューブは、施設によっては全く使用しないところも最近は多いようですが、自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科医局のグループでは一貫して、前下行枝の吻合の際は、原則使用しています。その他の部位の吻合の際には、中枢側の遮断のみを行うことが多いのですが、噴出する出血を減少させて視野を確保する目的で使用することがあります。

 この内シャントチューブ、内部に血流が通るようにチューブ状の構造をしていて、吻合中の末梢への血流を少しでも確保して、吻合中の血行動態を安定させ、また切開口から噴き出す血液を減少させて、吻合の視野を確保する目的で使用します。より大きな口径のチューブの方が末梢への血流がより確保されますが、大きい口径のものは、実際の血管の内面との隙間がなくなり、血液の漏れがなくなる一方、その間隙に縫合針を挿入して吻合する操作に邪魔になります。かといって、実際の内径よりもかなり小さい口径のものを挿入すれば、吻合はやりやすくなる一方、隙間から噴出する血液が多くなり、視野が悪くなり、出血量が多いと輸血が必要になったり、凝固因子や血小板が失われて止血困難に陥るリスクも増えます。
 内シャントチューブのほぼ中央部には、糸が結び付けられていて、その末梢にタグが装着されています。これによって、内シャントチューブが誤って血管内に入ったり術野などに落下して見失うリスクがなくなります。また、このタグおよび糸を牽引することにより吻合中の微妙な視野や針を刺入する冠動脈壁を調整することが可能です。

 製品の特長として、万が一、血管吻合の際にこの内シャントチューブに針糸が貫通してしまったまま吻合してしまっても、8-0ポリプロピレンの糸よりも弱いため、糸を牽引する、もしくは内シャントチューブを牽引すると、内シャントチューブの方が裂けて、糸は切れずに除去することが可能です。

 かなり冠動脈の吻合に関するニッチな部分のディスカッションが行われることになると思いますが、冠動脈外科学会ならではのいかにも専門性の高い、マニアックなシンポジウムになりそうです。

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側側吻合ならどこから見ても狭窄には見えない。

2019-06-13 02:40:37 | 虚血性心疾患



冠動脈バイパス術で実際の外見は足首がくびれてブーツ型に見える吻合が、術後の造影で角度によっては、狭窄に見えてしまう現象は循環器内科の受けが悪いという結果になりかねません。こうした結果を防ぐ確実な方法は、最初から吻合の形態を側側吻合にしてしまうことです。側側吻合にしたあと、残った先端にはクリップをかけて閉鎖することで、そうした狭窄に見える現象を防ぐことができます。
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見栄えの良い冠動脈バイパス術の吻合形態にするには

2019-06-13 02:34:46 | 虚血性心疾患



冠動脈バイパスの術後造影は心臓外科医の腕の見せ所です。この術後造影で、循環器内科を唸らせるにはやはり、出来映えよいフンゴウ形態が最も重要です。一方、残念ながら、出来映えの悪いフンゴウとは、閉塞ではないにしても、フンゴウ部が狭窄してるように見えてしまうものです。こうならないためにはどうするか、なぜ狭窄しているようにみえるのか、詳細な分析が必要です。一般に吻合部の狭窄がないことを見るには、流量とその時の波形を数値化したPI(Pulsulty Index)が指標になり、流量>20ml/分、PI<5が一つの基準と言われています。しかし、こうした数値が良くても、術後の造影で見る角度によっては狭窄に見えてしまうことがあります(A')。一般にはAのような造影、実際にはBのような形態が理想で、Cobra Head Shapeとも言われます。A'のような、実際の吻合の形態ではB'のように、ブーツのような形態になっていると考えられます。B'のような形態になる原因として、B"のように、ブーツにおける足首の前関節部分にかかる糸が両外側方向に牽引して緊張するような位置および角度になっていることが考えられます。この現象を防ぐためには、Yのような位置関係にあるNative血管にある糸の位置をXのようにすることで防止できます。現実的には、気持ち的に糸の運針を、Graftを相対的に歩んで、Nativeを小さくとる、という風にする必要があります。また、この位置のNative側の糸の支出点が切開線から遠すぎても同様の狭窄形態になる可能性があります。また、特に周囲組織の多い静脈では、一見Cobra Headになっているように見えても、内部では狭窄のような形態をしていることがあります。ITAでも同様ですが、これを防ぐには、吻合後の圧をかけた形態のまま、外膜を少し剥離すると圧迫が解除されてCobra Headに直ることがあります。


こうした不安を感じなくていいのは、側側フンゴウにすることも一つの方法です。また、1本の糸で一周する連続縫合が関与している面もあるため、複数の本数の糸で、単結節縫合とすることも一案です。
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冠動脈バイパスの出来映えよいフンゴウにするには

2019-06-06 23:41:03 | 虚血性心疾患
冠動脈バイパスの術後造影は心臓外科医の腕の見せ所です。この術後造影で、循環器内科を唸らせるにはやはり、出来映えよいフンゴウ形態が最も重要です。一方、残念ながら、出来映えの悪いフンゴウとは、閉塞ではないにしても、フンゴウ部が狭窄してるように見えてしまうものです。こうならないためにはどうするか、なぜ狭窄しているようにみえるのか、詳細な分析が必要です。一般に吻合部の狭窄がないことを見るには、流量とその時の波形を数値化したPI(Pulsulty Index)が指標になり、流量>20ml/分、PI<5が一つの基準と言われています。しかし、こうした数値が良くても、術後の造影で見る角度によっては狭窄に見えてしまうことがあります(A')。一般にはAのような造影、実際にはBのような形態が理想で、Cobra Head Shapeとも言われます。A'のような、実際の吻合の形態ではB'のように、ブーツのような形態になっていると考えられます。B'のような形態になる原因として、B"のように、ブーツにおける足首の前関節部分にかかる糸が両外側方向に牽引して緊張するような位置および角度になっていることが考えられます。この現象を防ぐためには、Yのような位置関係にあるNative血管にある糸の位置をXのようにすることで防止できます。現実的には、気持ち的に糸の運針を、Graftを相対的に歩んで、Nativeを小さくとる、という風にする必要があります。また、この位置のNative側の糸の支出点が切開線から遠すぎても同様の狭窄形態になる可能性があります。また、特に周囲組織の多い静脈では、一見Cobra Headになっているように見えても、内部では狭窄のような形態をしていることがあります。ITAでも同様ですが、これを防ぐには、吻合後の圧をかけた形態のまま、外膜を少し剥離すると圧迫が解除されてCobra Headに直ることがあります。


こうした不安を感じなくていいのは、側側フンゴウにすることも一つの方法です。また、1本の糸で一周する連続縫合が関与している面もあるため、複数の本数の糸で、単結節縫合とすることも一案です。

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