高齢者の心臓疾患が増加するなか、低侵襲な心臓手術「MICS」の需要が高まっている
心不全パンデミックといわれるように、高齢化に伴い心不全の患者さんが激増しています。同時に高齢者に対する心臓手術も増加しています。実際、当院では心臓血管外科で開心術を行う患者さんの30%以上が80歳以上の高齢者です。
特に、大動脈弁狭窄症は高齢者数に比例して増加する特徴があります。そのため手術の対象患者さんは今後も増加し続け、年齢もますます高齢化していくと考えられます。そこで、「MICS(低侵襲心臓手術)」が、近年徐々に広まりつつあります。MICS(ミックス)とは、「Minimally Invasive Cardiac Surgery」の略で低侵襲心臓手術という意味で
横須賀市立うわまち病院におけるMICS
当院ではMICSが適応となる患者さんに対しては、以下の手術をMICSで行っています。
大動脈弁置換術
僧帽弁形成術/置換術
三尖弁形成術
冠動脈バイパス術
心内腫瘍・血栓切除術
左心耳切除術
メイズ手術(肺静脈隔離術)
多くの病院では、冠動脈バイパス術は胸骨正中切開で行われることが多いですが、当院では左小開胸のMICSで行っており、3枝病変まで対応しています。また大動脈弁と僧帽弁疾患の同時手術にもMICSで対応しています。
2018年に当院で行った全110例の心臓手術のうち41例(37%)はMICSで行っており、大動脈弁置換術は40%、僧帽弁置換術は66%、僧帽弁形成術は57%がMICSによる手術でした。
横須賀市立うわまち病院におけるMICS-AVR−ストーンヘンジテクニック
それでは、当院におけるMICS-AVRについてご説明します。MICS-AVRとは、小開胸大動脈弁置換術*の略です。
当院では「ストーンヘンジテクニック」という方法を用いてMICS-AVRを実施しています。術野が、イギリスにあるストーンヘンジという遺跡に似ていることから、このような名称で呼ばれています。
大動脈弁置換術…大動脈弁狭窄症(弁が狭くなること)や大動脈弁閉鎖不全症(弁が閉じにくくなること)に対し、壊れた弁を人工弁に置き換える手術
ストーンヘンジテクニックは、心膜を糸で吊り上げて、心臓を右胸壁方向へ引き寄せる方法です。大動脈弁はMICSの切開創からは約12〜15cm離れており、そのままでは大動脈弁に手が届きません。そのため、柄の長い特殊な持針器や鑷子
せっし
を用いて行われることが多いです。
しかし、ストーンヘンジテクニックで心臓を引き寄せることで、そのような特殊な機器を使用する必要がなく、胸骨正中切開と同じようにMICS-AVRを行うことが可能です。
またMICS-AVRでは、血流が漏れないように糸でしっかりと結ぶことが重要ですが、通常の方法ではノットプッシャーと呼ばれる機器で間接的に糸を結ぶため、感覚が分かりづらいことがあります。しかしストーンヘンジテクニックは、手で直接糸を結ぶことができます。MICS専門の手術器具なくても、糸結びをしっかりとできる点は、大きな特徴といえます。
右小開胸が難しい場合には、胸骨部分切開のMICS-AVRを行います。最近では、大動脈弁狭窄症の90歳以上の症例に対してもMICS-AVRを行っており、術後およそ1週間後にはご自身で立つことができるまでに回復されています。
これから先、高齢化がさらに進んでいくことによって、治療法はどんどん低侵襲化していくと考えられます。そのなかで、カテーテル治療であるTAVIが進化していく一方、MICSも今後さらに進化していくことでしょう。
心不全パンデミックといわれるように、高齢化に伴い心不全の患者さんが激増しています。同時に高齢者に対する心臓手術も増加しています。実際、当院では心臓血管外科で開心術を行う患者さんの30%以上が80歳以上の高齢者です。
特に、大動脈弁狭窄症は高齢者数に比例して増加する特徴があります。そのため手術の対象患者さんは今後も増加し続け、年齢もますます高齢化していくと考えられます。そこで、「MICS(低侵襲心臓手術)」が、近年徐々に広まりつつあります。MICS(ミックス)とは、「Minimally Invasive Cardiac Surgery」の略で低侵襲心臓手術という意味で
横須賀市立うわまち病院におけるMICS
当院ではMICSが適応となる患者さんに対しては、以下の手術をMICSで行っています。
大動脈弁置換術
僧帽弁形成術/置換術
三尖弁形成術
冠動脈バイパス術
心内腫瘍・血栓切除術
左心耳切除術
メイズ手術(肺静脈隔離術)
多くの病院では、冠動脈バイパス術は胸骨正中切開で行われることが多いですが、当院では左小開胸のMICSで行っており、3枝病変まで対応しています。また大動脈弁と僧帽弁疾患の同時手術にもMICSで対応しています。
2018年に当院で行った全110例の心臓手術のうち41例(37%)はMICSで行っており、大動脈弁置換術は40%、僧帽弁置換術は66%、僧帽弁形成術は57%がMICSによる手術でした。
横須賀市立うわまち病院におけるMICS-AVR−ストーンヘンジテクニック
それでは、当院におけるMICS-AVRについてご説明します。MICS-AVRとは、小開胸大動脈弁置換術*の略です。
当院では「ストーンヘンジテクニック」という方法を用いてMICS-AVRを実施しています。術野が、イギリスにあるストーンヘンジという遺跡に似ていることから、このような名称で呼ばれています。
大動脈弁置換術…大動脈弁狭窄症(弁が狭くなること)や大動脈弁閉鎖不全症(弁が閉じにくくなること)に対し、壊れた弁を人工弁に置き換える手術
ストーンヘンジテクニックは、心膜を糸で吊り上げて、心臓を右胸壁方向へ引き寄せる方法です。大動脈弁はMICSの切開創からは約12〜15cm離れており、そのままでは大動脈弁に手が届きません。そのため、柄の長い特殊な持針器や鑷子
せっし
を用いて行われることが多いです。
しかし、ストーンヘンジテクニックで心臓を引き寄せることで、そのような特殊な機器を使用する必要がなく、胸骨正中切開と同じようにMICS-AVRを行うことが可能です。
またMICS-AVRでは、血流が漏れないように糸でしっかりと結ぶことが重要ですが、通常の方法ではノットプッシャーと呼ばれる機器で間接的に糸を結ぶため、感覚が分かりづらいことがあります。しかしストーンヘンジテクニックは、手で直接糸を結ぶことができます。MICS専門の手術器具なくても、糸結びをしっかりとできる点は、大きな特徴といえます。
右小開胸が難しい場合には、胸骨部分切開のMICS-AVRを行います。最近では、大動脈弁狭窄症の90歳以上の症例に対してもMICS-AVRを行っており、術後およそ1週間後にはご自身で立つことができるまでに回復されています。
これから先、高齢化がさらに進んでいくことによって、治療法はどんどん低侵襲化していくと考えられます。そのなかで、カテーテル治療であるTAVIが進化していく一方、MICSも今後さらに進化していくことでしょう。