横須賀うわまち病院心臓血管外科

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differencial hypoxia

2023-03-11 07:11:20 | 心臓病の治療
differencial hypoxiaとは、periferal ECMOにおいて、肺水腫や肺塞栓を合併しているなど、自己肺の酸素化が不十分なときに、自己心から拍出される血液が冠動脈や脳を灌流して、心筋虚血や脳虚血を起こしてしまう病態をいいます。心源性ショックの場合には大腿動静脈からカニュレーションしてECMOが開始されることが多く、このあと自己心の機能が回復してくるタイミングで発生します。このため、酸素化の移行ポイントがどこにあるのか、常に監視が必要になり、右上肢の酸素化が悪化してきたら対処が必要です。筆者も過去に肺塞栓の患者さんで、大腿動脈送血によるECMO管理中に突然自己心が動かなくなり、瞳孔も散大して失った経験があり、それ以来、これに対する対応のタイミングを注意深く観察してきました。
このdifferential hypoxiaに対する対応としては主に三つあります。
①肺の酸素化能改善=肺血栓除去、肺浮腫改善、気道の異物除去など
②送血路変更=central ECMO=上行大動脈から冠動脈や脳に直接人工肺で酸素化した血液を送血
③V-AV ECMO=VA ECMOの送血路を二股にして一部を静脈に返血することで、肺動脈の血液の酸素化を改善する。

①は常に同時並行で治療が進むので多くの場合は、こなdifferential hypoxia はそれほど影響しないことが多いのですが、重症ほど関係してくるので注意が必要です。
この辺の知見を日本で最も詳しいのはおそらく九州大学の塩瀬教授です。以前、横須賀市立うわまち病院に手術指導に来ていただいた時にも、このECMOに関することや、これにインペラを組み合わさたヴァヴェクペラ=V-AV ECMO+インペラのことについて詳しく教えていただきました。先週京都で開催された第50回日本集中治療医学会のランチョンセミナーでも、塩瀬教授がこのdifferential hypoxiaについて詳しく講演されて、たいへん勉強になりました。短い時間でしたが、講演終了後にいろいろ質問させていただき、さらに深く教えていただき感謝しています。心臓外科医向けにもこうした講演などを通して勉強の機会が増えることを期待します。

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