Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

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ダンジーブログ

高カロリー輸液

2006-05-04 | 医療・病気・いのち
 長期にわたり食事が出来ない人に栄養を補給する手段の一つとして、高カロリー輸液があります。心臓近くの大きな静脈まで管を入れておき、十分な栄養を点滴で補給する方法です。

 先日新聞に、緩和ケアの方法の一つとして、この高カロリー輸液のことが書いてありました。確かに癌末期の方で栄養が摂取できない場合、この方法を選択することがあります。でも気をつけないといけないのは、時にはこの高カロリー輸液が、ご本人を苦しめることもあると言うことです。

 終末期が近づくと、体の代謝自体が低下しているので、通常より必要エネルギーが減っています。また、肝臓や腎臓の機能も落ちています。そこへ無理に高カロリー輸液を行うと、血糖が上がる、浮腫が起こる、肺に水がたまり呼吸困難感が強くなったり痰が増えたりする、電解質のバランスが崩れる、などなどの好ましくない影響が出てくることが多いのです。

 一旦高カロリー輸液をはじめたものを途中から減らしていくのは、本人をはじめ家族や医師も治療からの撤退というイメージが生じると思います。でも緩和ケアの目的は、苦しみを緩和することです。点滴がかえって苦しみを助長する可能性を常に頭に置き、点滴を絞っていくことも時には(しばしば)大切なケアであることを認識しておく必要があります。