胃の出口や十二指腸が癌によって狭くなり、食事が摂れなくなることがあります。そのままにしておくわけにはいきません。しかし狭くなるほどの癌であれば、その多くは進行がんなので、治療方法の選択を慎重にする必要があります。◆遠隔転移などがなく、切除可能ならば根治を目指して切除する場合が多いでしょう。◆遠隔転移はないけれど、腫瘤が大きくて切除可能かどうか判断がむつかしい場合は、開腹して切除の可能性を探るか、まずは抗癌剤治療をして明らかに切除可能となれば手術を行うかという選択肢になると思います。◆しかし遠隔転移があるような場合には、既に切除の対象とならない場合がほとんどです。そのような場合でも食事摂取を可能とするため、そしてできればキードラッグであるTS1を服用してもらえるようにとの願いも込めて、バイパス術を行うことがあります。逃げ道として短絡路を消化管に作るということです。具体的には、狭くなっているところより口側の胃と下流の小腸(空腸)とを吻合してしまうのです。これを胃空腸バイパス術といいます。すると食べ物は胃から小腸へと流れていくことができます。癌自体の治療にはなりませんが、再び食事ができるようになるのです。◆ただ、胃癌が胃の上部まで進展している場合や、腹膜播種などのために下流の小腸にも狭窄部位があるようなときには、バイパス術すらできないことがあります。そのような時はTS1以外の抗がん剤を使用してその効果に期待する、ということになります。