はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
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癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

内田樹・困難な成熟

2016年02月10日 | 読書


昨年の8月が初版ですので内田樹の最新作でしょう。
前回アップした、" ためらいの倫理学 " では、彼のデビュー作ということもあって、かなり苦労させられましたが、この本はスラスラと読み終えることができました。
しかし、私が内田樹をじわじわと尊敬していくという傾向に変わりはありません。

とにかく語彙が豊富なうえに、私が知っている単語でも、見たこともない使いまわしを、さらっとやってのけるのです。

たとえば、信憑性という単語がありますよね。
私は、この単語は、信憑性がある、とか、信憑性に欠ける、なんていう使い方しか思い浮かびません。
しかし、内田樹の手にかかると、
「善」と「悪」という二つの超越的な力の拮抗のうちに世界は秩序づけられているという信憑抜きには「罪」というものはありえない。
となります。
信憑抜きには....ですか。カッコイイですよね。

また、以前にこのブログで取り上げた、 " 貶 " という字も
物神という言葉を貶下的な意味で使っている.....
となります。
当然、ヘンゲテキでいくら変換キーを叩いても絶対にヒットしません。

(毀誉褒貶の貶を復習しておきます。)
貶める(オトシメル)
貶す(ケナス) は確実です。
他に可能性として、貶む(サゲスム)
貶る(ソシル) があります。


それから、読むのは簡単ですが、自分で使うことが無く、それでも使い慣れると、とても便利そうな漢字2つが目に留まりましたのでアップします。
訊いて回る (きいてまわる) と
赦し (ゆるし) です。

この本のタイトルの一つの落としどころですが
成熟というのは、仲裁する立場に立たされたときに、
それらしく振る舞えることが、一つの目安になるようです。(私の個人的な解釈です。)

とにかく、肩もこらず、ユーモアに富み、なるほどと思うカタルシスも提供してくれるというオイシイ本です。