キバナアマナ
明け方 おぼろの半月が黒い影絵のような山並みの上にぼんやりとかっかって、息切れした口笛のようにトラツグミが思い出したように鳴いた。
ある時 か細く金属がきしむような奇妙な鳴き声の主を確かめたくて、夜の山に入ったことがある。
とぎれとぎれに聞こえる音を頼りに鵺を追った。
追っても追っても、距離を詰めることができない。
おいでおいでと、深山に誘い込まれる。
踏みしめる枯葉が鳴って恐怖が足元から忍び寄る。
木立がひと時ざわめいて、星の空に小さな影が飛び立った。
春の妖精キバナノアマナが咲いて、早春のまだ暗い森ではスプリングエフェメラルな鳥の鳴き声がしばらく続く。値千金の日々である。