独活の花
田畑を荒らす獣と農家の戦いには長い歴史があるのだという。
各地に残る猪土手の遺構がそれを物語っている。
猪土手は山側に深い溝を掘りその土を里側に盛り上げて土塁を構築する。
溝の底から見上げる土塁の高さは2メートルを越え、更に必要に応じて土塁の上に垣根を作って三重の備えとした。
山麓に沿って延々30キロに及ぶという大工事である、人力あるいは畜力に頼ったとしても、この様な大工事を遂行することは生半可なことではない。
当時も害獣の生存数が多く、人間との生存競争の激しを物語るものである。
猪土手の効果維持に関わるメンテナンスも重い作業であったことは間違いない。
農家にとって獣害から作物を守る猪土手の建設は、自らの生死に直結する重大事だったのだろう。
現在 防獣フェンスの敷設工法はは基礎金具を地中に打ち込み、その金具に支柱を差し込んで金網を張ってゆく、猪土手構築とは比較にならない簡便さである。
一度猪土手の遺構を見たいと思っている。