大戦末期 建物の白壁が黒く塗りつぶされ、全ての窓ガラスにX印に障子紙の短冊を張りつけた。
塗りつぶしは、敵爆撃機から日本の白壁はよく目立ち、空爆の標的にされるからという理由であったし、ガラス戸に紙を張るのは、空襲によるガラス破片の飛散防止が目的だったらしい。
又電燈に蛇腹式の覆いが取り付けられて、空襲警報発令で、外に光が漏れださないようあわてて蛇腹を引き延ばした事を鮮明に覚えている。
戦争が終わっても、長い間黒い白壁が残っていた。
白壁を煤で汚すことは簡単に出来たけれど、煤がしみ込んだ白壁は拭いても拭いても白壁に戻る事はなかった。
高い日当を払って左官屋に塗り替えを依頼するしかない。あの当時どこも貧しかった。
ここ 2,30年の間に黒壁の残る古い家はことごとく建て替えられた。
もし残っていたら貴重な文化財である。