重厚な石積みも塀の海鼠壁も何となく近寄りがたい。
午前中の激しかった雨が昼食の間に上がり、時折雲の切れ目から薄い日が射して、一同から思わず歓声が上がった。
それでも船頭さんのはからいで、テルテル坊主のような奇妙な形のビニール製貫頭衣型雨合羽を纏って乗船した。
この貫頭衣は風よけに効果があり、その上この濠に住む河童の悪さから我々を守ってくれた。酔っ払いが時々川に引きづり込まれることがあるらしい。
どんこ舟に二列に行儀よく並んだ、10人の坊主は互いのユーモラスな出で立ちに笑い転げた。
この掘割は昔柳川城の濠であったという、船頭は細い竿一本で船を自在に操る、海鼠壁の影を水面に映す米蔵の連なる脇を抜け、領主の別邸である瀟洒な洋風建築が立つ広大な敷地をぐるっと巡った。
諏訪湖の四手網に似た漁具
船客のために時々網を上げるという この水辺に魚影は濃く、いろんな魚が揚がる。
どんな魚が捕れるのですか?
「そうさなあ ここに住む魚は全部捕れるわ」
捕った魚は食べられますか?
「そうさなあ わしらと同じで、煮ても焼いても食えんでしょうよ」