営業担当者の独立開業は、企業にとって致命的な痛手である。
急遽採用した、にわか仕立ての新任営業は、ベテランの彼らに翻弄され戦意を喪失し、得意先は思うがままに彼らに浸食されていった。
経験の差というより販売に対峙する面相が違っていたように思う。
好況期にどっぷり浸るうちに、企業の体質はもろくなり、それらを鍛え直す経営力は成長を止め停滞していた。
拝啓 社長様(昭和45年社内誌より抜粋)
私が会社で不安に感じております事を手紙にて申し上げます。
私の不安感を一掃して下さいますようお願い申し上げます。
私の会社に対する不安焦燥感は日を追って強くなるばかりです。
これは自分だけが持つ感情かと思っていましたが、周りの仲間のほとんどが同じ悩みを共有している事をしり驚きました。
順風満帆とも見えるわが社においてそうなのでございます。
私は医療機器業界の洋々たる前途に何一つ不安を感じていません、しかし取り扱う商品が大きく変わる中で会社は従来のままで良いのでしょうか。
社員の共通する願いは将来を照らす明るい展望です。しかし会社にはそれが存在しません。
ただ、現在だけがあるように思えて仕方が無いのです。
又 仕事に取り組む仲間の投げやりな姿勢に不安を感じます。
それは社内に厳しさが欠けていることに起因するように思います。
販売をのばしなさい、回収を徹底しなさいという事と厳しさとは別だと考えます。
厳しさはピラミットの頂点より下に向かって伝搬されるものだと思います。
「厳しさ」と「優しさ」は両輪であり、会社にとってかけがえのない財産です。
この財産が将来の飛躍のエネルギー源になることを確信して私の手紙を終わります。
種々の暴言なにとぞお許しください。 憂士