自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ずっと向こうまでススキ

2012-11-09 | 旅行

ススキの原を訪れました。この日は,白穂が木枯らしに揺れ,肌寒く晩秋近しと思う日になりました。

山の峰までススキが覆い尽くしていました。人工の景観としては自然と共生したすてきな空間だと思われました。 

“人工” とはどういうことかといえば,ここは人手が入って作られたところだということです。元々は西日本特有の落葉樹林だったはずです。その証拠に,点々と残された木々はすべて落葉樹です。峰近くの,濃く見える森はスギやヒノキの植林です。木々が勢ぞろいして林立しているのが遠望できます。落葉樹と針葉樹との違いが明瞭です。

案内板を見ると,ここは以前軍の放牧地として開拓されたようですが,結局使われなかったとか。開拓後,維持管理のために春先になると山焼きが行われ,この景観が保たれてきたのです。そのうちにススキが繁茂し,綿毛を付けた種子があちこちに広がって,繁茂の上に繁茂を重ねたというわけです。

そうして,今は多くの人が訪れ,映画やテレビ劇のロケ地にもなっているといいます。

景観維持の努力にはたいへんな苦労がついているようです。もし何も手を加えず放置していたら,どうなるでしょう。明らかに,雑木が生え始めて林になり,いずれは荒廃した落葉樹林が形成されることでしょう。これは植生遷移の原理からはっきり言い切れることです。自然の摂理と向き合いながら,憩いの場としてこの空間を適正に保持していく営みはたいへんでしょう。

わたしが訪ねた日,平日ながら結構人の姿を見ました。ハイキングのグループを見ていると,うらやましくなったほどです。歩くっていいものです。散策の途中小雨が降ってきたので,あわてて下山しました。秋晴れのさわやかな平日,いつかまた来たいなあと思いながら帰路に着きました。