ツワブキは晩秋を彩る刺激的な色合いをした花を付けます。真赤・真青ということばからは真黄を連想できますし,深緑なら深黄ということばが浮かびます。 誠に黄色を主張しているといった感がします。これだけ強烈な色彩をした花は,今の時節数少ないのではないでしょうか。
このツワブキが,我が家の庭の片隅で今満開です。これがたくさんあり過ぎる光景は「これでもか,これでもか」といった意地を感じさせ,見る者にある種の疲労感を抱かせるように思います。逆に程ほどの場合だと,引き締まった美すら漂います。過ぎたるは及ばざるが如し,の類いでしょうか。実際,たくさん咲く年は自分で花茎を間引くほどなのです。今年は,4,5本の花茎が伸びただけなので,そんな手入れをする必要はありませんでした。
そして,それぞれの先に花を複数付けています。庭に今ある花は,これだけ。
秋晴れの穏やかな昼下がり。目敏い昆虫がそれを見つけないわけはありません。
オオハナアブが一匹。腹のオレンジ色の帯が目立ちます。頭部はお椀型の複眼ですっぽり覆われています。複眼の模様がひときわ目立ちます。その間に3個の単眼が見えます。花の色がからだを照らし出しているようで,からだ全体が何だか黄色っぽく見えます。翅脈の一部が黄色くなっているのが印象的です。
キゴシハナアブが来ました。脚先を広げて,爪でからだを固定して……。薄い翅が太陽光を反射します。複眼には粒の紋が無数に見えます。胸の縦縞の筋もまた,この種を同定する決め手です。毛で覆われたからだには,花粉がどっさり付着しています。ツワブキの作戦にうまくのっかかってくれたようです。
ツマグロキンバエ。黄色の世界に入り込むと,もうからだがすっかり黄色っぽく見えます。背中にも花粉がいっぱい。自分が送受粉に役立っていることを知るや知らずや,餌を貪り舐めていました。花から花に移るのは歩いて。何ものにも邪魔されない静かな小風景が広がります。
キタキチョウも一頭。口吻をグーンと伸ばして,おいしそうに吸蜜中です。近寄っても逃げませんでした。
そのうちに舞い上がったかなと思ったら,また元に戻って来て,すぐに蜜を吸い始めました。この味がお気に入りのようです。触覚がピンと伸びて,機能しています。関節の曲がり具合からは,腰の落ち着けようが伝わってきます。実にゆっくりとした動作に見えます。のんびりした風景です。
昆虫たちは晩秋を満喫しているように思えました。わたしもまた,彼ら彼女らと共に過ぎてゆく秋から,ひとときこころの滋養をいただけたように思います。