自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ツワブキと昆虫

2012-11-26 | 昆虫と花

ツワブキは晩秋を彩る刺激的な色合いをした花を付けます。真赤・真青ということばからは真黄を連想できますし,深緑なら深黄ということばが浮かびます。 誠に黄色を主張しているといった感がします。これだけ強烈な色彩をした花は,今の時節数少ないのではないでしょうか。

このツワブキが,我が家の庭の片隅で今満開です。これがたくさんあり過ぎる光景は「これでもか,これでもか」といった意地を感じさせ,見る者にある種の疲労感を抱かせるように思います。逆に程ほどの場合だと,引き締まった美すら漂います。過ぎたるは及ばざるが如し,の類いでしょうか。実際,たくさん咲く年は自分で花茎を間引くほどなのです。今年は,4,5本の花茎が伸びただけなので,そんな手入れをする必要はありませんでした。

そして,それぞれの先に花を複数付けています。庭に今ある花は,これだけ。

秋晴れの穏やかな昼下がり。目敏い昆虫がそれを見つけないわけはありません。

オオハナアブが一匹。腹のオレンジ色の帯が目立ちます。頭部はお椀型の複眼ですっぽり覆われています。複眼の模様がひときわ目立ちます。その間に3個の単眼が見えます。花の色がからだを照らし出しているようで,からだ全体が何だか黄色っぽく見えます。翅脈の一部が黄色くなっているのが印象的です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

キゴシハナアブが来ました。脚先を広げて,爪でからだを固定して……。薄い翅が太陽光を反射します。複眼には粒の紋が無数に見えます。胸の縦縞の筋もまた,この種を同定する決め手です。毛で覆われたからだには,花粉がどっさり付着しています。ツワブキの作戦にうまくのっかかってくれたようです。

ツマグロキンバエ。黄色の世界に入り込むと,もうからだがすっかり黄色っぽく見えます。背中にも花粉がいっぱい。自分が送受粉に役立っていることを知るや知らずや,餌を貪り舐めていました。花から花に移るのは歩いて。何ものにも邪魔されない静かな小風景が広がります。 

キタキチョウも一頭。口吻をグーンと伸ばして,おいしそうに吸蜜中です。近寄っても逃げませんでした。 

そのうちに舞い上がったかなと思ったら,また元に戻って来て,すぐに蜜を吸い始めました。この味がお気に入りのようです。触覚がピンと伸びて,機能しています。関節の曲がり具合からは,腰の落ち着けようが伝わってきます。実にゆっくりとした動作に見えます。のんびりした風景です。 

昆虫たちは晩秋を満喫しているように思えました。わたしもまた,彼ら彼女らと共に過ぎてゆく秋から,ひとときこころの滋養をいただけたように思います。 

 


白菊と訪花昆虫(1)

2012-11-26 | 昆虫と花

暖かな昼下がり,庭の白菊にたくさんの昆虫が訪れていました。

キクに近づくと,香りが漂ってきました。匂いもたしたものですし,真っ白な花弁とそれに囲まれた黄色の花が,一気に虫たちを誘っています。気配を感じると,虫たちは一斉に羽音を立てて舞い上がります。そうして,しばらくするとまた戻ってきます。

今度はそっと近寄って,撮影を試みます。すると,虫たちは安心してモデルになってくれます。

昆虫の名は,大抵はとっさには浮かんできません。,わたしは,そこまで記憶力のある観察家ではありません。実に大雑把に,経験的に「〇〇だろう」とか「〇〇の仲間だろう」という次元なので,間違いやら誤解やらはいくつもあると思っています。わからなかったら,保留のままにするしかありません。

そんないい加減な立ち位置で,レンズをとおして被写体の動きをとらえる時間をたのしんでいるのです。

では,この日,30分ばかりで見かけた昆虫たちをご紹介しましょう。

ガの幼虫が蕊を貪り食っています。どちらが頭か,尻か,定かではありません。これは送粉者の役目を担っているのでなく,害虫としての迷惑行為を行っていることになります。 からだには花粉がたくさん付いています。多少は送粉に貢献するのでしょうか。

そのすぐ脇に,ツマグロキンバエ(オス)が訪れていました。

 

このハエは数の上からいちばん目立ちます。長い口吻をしっかり使っています。からだに付いた花粉が目立ちます。複眼にも付いています。

ヒラタアブが訪れました。どうやら,ナミホシヒラタアブ(メス)のようです。数は多くありません。アブの眼は頭を包み込むようにして付いています。視覚が生存にとっていかにたいせつかを物語っています。

翅を動かす胸の筋肉も,このからだなりの丈夫さを有していることでしょう。 こういうふうに想像を巡らすのもまた観察のたのしさです。

お馴染みのホソヒラタアブ(オス)もいました。複眼が頭をすっぽり覆うようにして付いています。その先にある触覚もまた,重要なはたらきをしているのです。 

花弁に付いた甘味の成分にまで口吻を向けたのには驚きました。

風のほとんどない時間帯で,心地よい光が花を照らしていたようで,キクには次々と昆虫が飛来してきました。続きは次回に。