おもしろくって,「なるほどー!」と思わずうなずいてしまう,そんな工夫が館内のあちこちにあれば,来館者はこころがくすぐられます。「へぇー,そうなのか!」と見入ってしまう工夫があれば,来ただけの値打ちがあったと思っていただけます。日々,そういう積極的な仕掛けづくりを忘れたらおしまいだと気を引き締めています。
仕掛けは新しい価値を「つくる」行為そのものです。わたしがミュージアムづくりの柱にしている,3C(「クリエイト(創造)」「チャレンジ(挑戦)」「コミュニティー(地域)」)の1つにあたります。
「つくる」といっても,大きなものでなく,まずはささやかな工夫を描いています。工夫は館内に新しい風を呼び込みます。新しい風は来館者を刺激します。
近頃の小さな工夫を1つご紹介しましょう。
壁面に直径60cm程の円い穴が開けられたところがあります。館ができた当初からあるもので,設計上のデザインによります。そこを子どもが通り抜けることがしばしばあったようで,それを防ぐために段ボールで蓋をしていました。展示の関係で,そこを通られると支障があるのです。そうかといって,段ボールが貼られたままでは無粋に思えます。「このままではこの壁面は勿体ない。なんとかしなくては……」と,わたしなりに思案を重ねていました。つまり,「近いうちになんとかしたい」という気持ちだったのです。
地球科学をテーマにしたミュージアムなので,いっそ太陽系を構成する星々の大きさを表示してはどうかと着案。だれでも思いつきそうな素朴な案です。
それで,段ボールを使って直径65cmの円をつくりました。もちろん,太陽です。できた円に赤い絵の具を塗って仕上げました。
途中でスタッフの提案があり,各惑星は太陽をもとにして比例した大きさで印刷して貼ることに。これはスタッフが担当しました。円形に切る作業も任せました。太陽の直径を65cmにすると,いちばん小さな惑星「水星」は直径2mm! この小ささを円で切り抜くのは,視力がよくなくてはうまくできません。
こうして,水星から金星,地球,……,海王星がすべて揃いました。それらを一列に貼り,名前シールを貼って完成。地球の直径は6mmです。太陽の直径の109分の1なので,大きさの比例はぴったり。
この仕掛けはベンチの背面にあります。太陽系を感じていただける一助になるでしょう。
これを見たスタッフの声。「まちがいなく,地球を109個並べると太陽になります」(メジャーで計りながら)。「絵の具がいかにも太陽が燃えているようですね」「ミュージアムの展示物らしくって,いいですね」。簡単な手づくりでも,力を発揮しそうです。
スタッフには,このあと提案を1つしておきました。多くの人が「あっ!」と驚く展示内容かと思います。近く実現しそう。いずれ報告しましょう。