へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

衣笠米穀店の2番めの娘

2006-06-20 21:05:17 | ひるまのもめごと

ワールドカップを徹夜観戦して、その気になってオランダチームのユニフォームを買い揃え、あまりの配色に周囲も何とコメントしてよいのかわからずただ笑うしかない、困ったヤツ。
オレンジのシャツに、白のパンツブルーのストッキングはないだろう・・・と思う、俺の名はけんちゃんである。
。。。

衣笠米穀店の本宅は、さすが昔は江戸は豪農、明治は地主の大邸宅である。長屋門から中に入れば、家なんて見えやしない。しばらく植え込みが続き、やっと家かな、と思ったら蔵だった。
「やばいねえ、こんなうち、入ったことがねえよ」
俺は、身震いした。ところが、白いやつは、ふうん、といったっきりだ。
「何、あんたんちも、こんなうち?」
といやみったらしく聞いてやると、
「俺んちじゃないよ、藤川んちだよ。あいつんちは、すっげーぞ。あれで若様だから」
と、まじめな顔をして答える。
「若様?」
「あのふざけたナンパ野郎の藤川が?」
俺と、旧姓依田はびっくり。人は見かけによらないというか・・・、
「うそなんじゃない?」
俺は、日ごろのあのバカの行いからつい、疑いの声を出してしまった。
「あいつ、元ヤンキーだろ?いいのか?そんなヤツが若様で・・・」
「いいんじゃない?他人のことだから」
白いヤツは、平気な顔だ。
家がでかいとか金持ちとか、こいつは興味がないみたいだ。
ま、俺も、どーでもいいけどね。ただ、嫁にもらうんだったら、金持ちがいいに決まっている。薄給でも困らない。
なんてさもしいことを考えていると、玄関から狆が花粉症になった顔をした若い娘が出てきた。
ここの2番目の娘だが、父親は誰だ。。。
「あら?事務の近藤さんでしょう?何か御用ですか?」
「いや、あの、お母さん、おられますか?」
俺は、どぎまぎしながらたずねた。
なんで、こんな花粉症の狆にどぎまぎしなくちゃいけないんだ。
「あ、もしかして、前田先生のことですか?」
と、花粉症の狆が逆に聞いてきた。
「あ、そうそう、なんだか、大切な蘭の鉢を割ってしまったということで、謝りにきたそうなんですが」
白いヤツが、てきぱきと受け答えをしている。
さすが事務職。こういう時には、大変役に立つ。
「そういえば、来たような来なかったような・・・。」
仕種だけは、かわいらしい。
旧姓依田は、あくびをかみ殺して、蔵の周辺をじろじろと見ている。
旧姓依田は、面食いなんである。本来ならば、地元に帰って県庁の職員になるというのが夢だったのだが、大学の実習で出かけて果樹園の美人の娘に一目ぼれして、まんまと婿養子に入ってしまったやつである。
それだもん、花粉症の狆なんぞに興味がわくはずがないんだけど、でも、どこか魅力のある娘だ。
もしかして、なまはげの長女も、意外や意外、見てみる価値があるのかも・・・。

と、妙な期待が湧き上がってきたところで、

つづく。。。



コメント
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