藤川だよ。
こ~いっちゃんのおふくろさんが風邪で寝込んでいるというので、食料を買い出しして細太郎の家に行った。
そしたら、台所は洗い物がたまっている、鍋をのぞいてみりゃ不気味な煮物が入っている。
「なあんだあこりゃあ」
細太郎がそばで情けない顔をしている。
「ぼくがやるっていったんだけど、おじいちゃんがうまいもん食わしてやる、と言って作ってくれたんだけど…」
「…」
鍋の中の残骸は、もはや食欲をそそるような代物ではなかった。
「細太郎~、こ~いっちゃんは作ってくれなかったのか~」
「うえじにしたって作ってくれないよ」
俺はこのうちの男どもの情けなさに腹がたってきた。 人間の糧となる食事をないがしろにするなんて、許さん
「細太郎、俺様がうまい鍋を作ってやるからな」
「うん」
細太郎は、嬉そうに俺の顔を見上げた。かわいいなあ。俺は、細太郎の頭をぽんぽんと叩くと、
「手伝ってくれるか?」
と聞けば、
「いいよ、何からやるの?」
と、わくわくした顔をした。
俺は、結婚しなくてもこんな子供ができるのなら、嫁なんかいらないと思った。どうせなら細太郎を養子にしてもよいな、とも思う。 そしたら、こ~いっちゃんは大騒ぎするだろうなあ。
俺は、鶏の挽き肉でだんごを丸めながら、そんなことを思った。
ま、無理だろうけどな。
こんちのじいさんは昼間からうだうだし、こ~いっちゃんは台所をうろうろと役にも立たないのに歩き回った。おふくろさんが苦労するわけだ。
「ぼく、おばちゃんと食べていいかなあ。一人じゃ寂しいと思うから」
「そうだな。起きるのが辛けりゃ小さいテーブルを出して、そこで食べればいいから」俺はテレビの前でうだうだするバカ父子をみて、こんなやつらのために俺様のカニ鍋を食わせてたまるか、と怒りがこみ上げてきた。
俺は人数分の倍あったカニを2つだけ残し、すべて俺たち用にと分けて、やつらの嫌いな人参を厚切りにして大量にぶちこんだ。 さらに、真っ赤になるほどキムチを入れた。 手伝わないのと、飯をないがしろにした罰だ。
俺は、まっかな鍋をやつらの前におき、
「めし」
と言い、そのまんまかにを持っておふくろさんの部屋に向かった。
「ここで食べるの?恥ずかしいなあ、こんなかっこで」
おふくろさんは、はんてんの前をあわせて少々恥じらった。目が細太郎にそっくりだ。このおばさんにも、そんな女らしい面があったんだ、とちょっと見直したな。
うちの母親は、あんまりこういう弱みを見せないからな。
「今夜はカニ鍋ですよ~」
俺は、
「から~っ」
「なんだこれー」
という悲鳴を遠くに聞きながら、カニの足をぱきっと折った。
「へんだ」
こ~いっちゃんのおふくろさんが風邪で寝込んでいるというので、食料を買い出しして細太郎の家に行った。
そしたら、台所は洗い物がたまっている、鍋をのぞいてみりゃ不気味な煮物が入っている。
「なあんだあこりゃあ」
細太郎がそばで情けない顔をしている。
「ぼくがやるっていったんだけど、おじいちゃんがうまいもん食わしてやる、と言って作ってくれたんだけど…」
「…」
鍋の中の残骸は、もはや食欲をそそるような代物ではなかった。
「細太郎~、こ~いっちゃんは作ってくれなかったのか~」
「うえじにしたって作ってくれないよ」
俺はこのうちの男どもの情けなさに腹がたってきた。 人間の糧となる食事をないがしろにするなんて、許さん
「細太郎、俺様がうまい鍋を作ってやるからな」
「うん」
細太郎は、嬉そうに俺の顔を見上げた。かわいいなあ。俺は、細太郎の頭をぽんぽんと叩くと、
「手伝ってくれるか?」
と聞けば、
「いいよ、何からやるの?」
と、わくわくした顔をした。
俺は、結婚しなくてもこんな子供ができるのなら、嫁なんかいらないと思った。どうせなら細太郎を養子にしてもよいな、とも思う。 そしたら、こ~いっちゃんは大騒ぎするだろうなあ。
俺は、鶏の挽き肉でだんごを丸めながら、そんなことを思った。
ま、無理だろうけどな。
こんちのじいさんは昼間からうだうだし、こ~いっちゃんは台所をうろうろと役にも立たないのに歩き回った。おふくろさんが苦労するわけだ。
「ぼく、おばちゃんと食べていいかなあ。一人じゃ寂しいと思うから」
「そうだな。起きるのが辛けりゃ小さいテーブルを出して、そこで食べればいいから」俺はテレビの前でうだうだするバカ父子をみて、こんなやつらのために俺様のカニ鍋を食わせてたまるか、と怒りがこみ上げてきた。
俺は人数分の倍あったカニを2つだけ残し、すべて俺たち用にと分けて、やつらの嫌いな人参を厚切りにして大量にぶちこんだ。 さらに、真っ赤になるほどキムチを入れた。 手伝わないのと、飯をないがしろにした罰だ。
俺は、まっかな鍋をやつらの前におき、
「めし」
と言い、そのまんまかにを持っておふくろさんの部屋に向かった。
「ここで食べるの?恥ずかしいなあ、こんなかっこで」
おふくろさんは、はんてんの前をあわせて少々恥じらった。目が細太郎にそっくりだ。このおばさんにも、そんな女らしい面があったんだ、とちょっと見直したな。
うちの母親は、あんまりこういう弱みを見せないからな。
「今夜はカニ鍋ですよ~」
俺は、
「から~っ」
「なんだこれー」
という悲鳴を遠くに聞きながら、カニの足をぱきっと折った。
「へんだ」