さて、今朝、事務室の俺のデスクには、朝早く登校したと思われる女生徒からのかわいいチョコのプレゼントがおいてあった。
いいな、こういうの。
…にもかかわらず、桜井は今年も食いかけのチョコを投げてよこし、タコ壺はとりにこないとやらないとぬかした。
悪いけど、あんたらからもらったってうれしくもなんともないからね。
俺は、いつも以上に期待をこめて学園めぐりをはじめた。わざと休み時間にぶつかるように高校の校舎に行けば、
「近藤さあん」
と、取り囲まれチョコを渡される。
ほらね、チョコはこうしてもらうもんさ、と内心にんまりしたら、
「細太郎君にあげてくださあい」
と、いちばんかわいい子がいうではないか。
「え?なに?細太郎?」
いやあ、びっくりしたね、というかショックだ。
「なんで、うちの息子を知ってるの」
「だって、藤川先生がよくサッカー部につれてきますよ。私、サッカー部のマネージャーだから」
と答えた。 そういえば、そうだった。
「じゃあ、私も細太郎君に」
「私も」
「私も」
次から次へとチョコの相手から俺から細太郎へと変わっていく。
「なんだよ」
俺はプライドをズタズタにされた気分だった。 細太郎がいつの間にか、俺のライバルになっている!! あんなに目の中に入れても痛くないほど可愛がっていた、俺の命だった細太郎が、俺の地位を脅かしている
細太郎、俺に勝負を挑むには、まだまだ早すぎるぞ。 父はおまえを崖から突き落とし、這い上がってきた時、はじめてライバルと認めよう
俺は、決意した。
細太郎、今日からは厳しい父となるぞっ
…と、ひとり燃える俺の後ろから、
「な~に、巨人の星やってんの」
「あんた、星一徹か」
「似合わねー」
と声が聞こえてきた。 藤川、久保田、桜井があきれた顔をして立っていた。
「うるさいっ」
俺は、強い父となることを自覚したせいか、やつらに対し強い態度に出た。が、
「どんなに頑張ったって、息子は父を越えて行くもんさ」
「今までが今までだからね、どうせ腰くだけ」
と、さんざん悪態をついてきやがった。
「黙れっ」
俺は、完全に頭にきた。
細太郎よ、おまえは今日から俺の息子ではないっライバルだっ
…と、カッカッとする頭で家に帰れば、おふくろと細太郎が山と積まれたチョコを前にして、
「こんなにいたらお返し困っちゃうね」
「大丈夫、おばあちゃんがたくさんクッキーを焼いてあげるからね」
と、会話していた。
「が、が~ん」
ショックで立ちすくむ俺に、
「なに、鐘なんかついてんの、さっさとチョコをお出し」
と、おふくろが冷たい言葉を投げかけた。
「知ってんのよ、チョコは細太郎あてだって?」
が・が~ん…(((゜д゜;)))。
藤川め、しゃべったな~。
崖から突き落とされた気分だ…。
が・が~ん~))))) 。
は、はいあがれね~。