真夜中にこんばんはぼくがへちま細太郎です。
水嶋先輩は、クーラーボックスをドカッとテーブルに置くと、
「誰かと思ったら、ひな人形のドスケベなオッサンか…」
と近衛少将さんに、オッス、オラ水嶋と挨拶した。
近衛少将は、苦笑い。
「いつぞや、須庭寺におった農民のおのこじゃの」
「豪農といってくれちゃう?」
殿様だろうが幽霊だろうが、全く遠慮のない人だったな、この性格のすこぶる悪いイケメンは。
「何しにきたんすか?」
と、たかのりはクーラーボックスを叩いた。
「あ、これこれ、田舎のオヤジからの差し入れのおすそ分け」
と、ふたをあけて中から肉の塊を取り出した。
「ほほお、これはこれは…」
いつの間にか、鎧かぶとのおじさんが水嶋先輩の背後にふわりと近寄っていた。
いきなりの登場に、
「背後を取るとは、ひきゃうである」
と、一緒に取り出したニンニクをおじさんにぶつけた。
「ぬかったな、わしは吸血鬼ではないぞ」
「落ち武者め」
「おのれ鎌倉武者に向かって」
二人ともノリが良すぎる…。
「でな、これイノシシの肉…」
突然本題に入られても、困るんだが。
「秋の勉強合宿、覚えてっか?」
「うわあ、思い出したくもねえ」
たかのりは、頭をかきむしった。俺だって思い出したくねえよ。
さんざん歩いたあとに勉強なんて、正気の沙汰じゃねえ。
「今年、伝説の体育教師清原が現れて、合宿所に突っ込んできたイノシシ退治したんだと、だからこれ…」
と、肉の塊を叩いた…。
イノシシの肉かよ~。てか、清原って誰だよ~。