実孝だ。
かごの中で、うろうろうごめくのは、カワウソどころかイタチだ。
「カワウソって、絶滅したろうが」
「コツメカワウソだって、言い張ってきかないんですよ」
「あん?」
コツメカワウソって、少し前から大問題になっている密輸入されている動物だろ?イタチ科の動物で、日本産ではないはずだ。ペットとして大人気なんだが、しかし日本の自然界にはいるはずもなく、日本カワウソだって、もはやその姿もない。
「あいつ、YouTubeでコツメカワウソみて、欲しがっているんですよ。でも高いのは100万くらいするでしょ?買えないから捕まえるって。逃げたのがいるはずだって」
後藤が呆れている。
「てか、イタチいるんだ、ここには…」
ぼつりとつぶやいたのが荒波だ。
「おう、たぬきだろうが、いのししだろうが、なんでもいるわ。文句あんのかこらあ」
後ろでドスの利いた声を出したのは、副住職のおっさんだ。離婚されて出戻って、何やってんだ、このゾク上がりのバカが。
「あ、都会では…」
荒波は、田舎が嫌いだ。ならなんでつくばった大学に入学したんだ。
「とにかく、おまえ、逃がしてこいや。いつまでも入れて置いて最後っ屁かまされるようになったら、たまらん」
後藤と荒波の二人は顔を見合わせて、いったいどうすればいいんだ?と途方に暮れている。
「山ん中に持っていって、離してこい」
何でいちいち指図してやらにゃならん。
「そうじゃなくて、キチローが暴れたら嫌だし」
キチローのやつ、後輩ができたせいで偉ぶってるとみた。
「おまえら、俺様についてこい」
おっさんは、そこに置いてあった一輪車にかごをのせ、二人に押してついてこいと言わんばかりに先に立って歩きだした。
「大丈夫でしょうか?」
ゆうきは、不安そうに3人と1匹の後ろ姿を追ったが、
「ほっとけ」
という俺の言葉に、ですよねえ、とつぶやき、仕事に戻っていった。
俺も、ゆうきも懸命な判断だったと、今では思っている。
荒波には、かわいそうなことしたな(笑)
さんざんひっぱっておいて、つづく。。。
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