不良在庫の処理について、あるお店にレポート出すので、思いつくところを少し書いておきます。
買い切り商品、返品不能の色褪せた在庫が、文庫、新書、児童書など、どこの店にも多くみられます。
「店に出しておかない限り売れない、減らない」現実は確かにあります。
しかし、売れ残りや色褪せた商品が、棚に並んでいることは、
(1)、まわりの商品も古く見えてしまう
(2)、棚回転が上がらない売り場になってしまう。
(3)、店全体の商品情報密度と鮮度を下げてしまう。
などのデメリットがあります。
店に出し続けるのと一気に処分するのと、どちらが得かは意見がわかれることもありますが、
これから在庫を減らして売り上げを伸ばす店づくりをするためには、これらの返品不能品を「火をつけて燃やしてでも処分する勇気」が必要です。
さらに、ロスを抱え込まないためのコストをきちんと店が抱え込む覚悟は、そのまま店頭の商品をより大事にする姿勢にもつながります。
ロスの発生、処分は、担当者レベルで決断することは確かに難しいので、5年10年その商品を店におく価値など、会社としての考えをはっきりさせ、決算棚卸し前に思い切って台帳引き落とし処分することをおすすめします。
また、廃業出版社在庫などは、今後もより大きな版元の倒産などで大量に発生する可能性があります。
これらの在庫を特価処分販売するときは、常設的なコーナーにはしないで期間を限定しておくことで、お買い得感も増し、棚が薄暗くなる印象も減少させることができると思います。
* この考え方を徹底できるかどうかは、より効率のよい顧客満足度の高い新刊仕入れの絞り込み決断にもつながります。
「売れるかもしれない」、「売れるかどうかわからない」商品は極力おかず、顧客に明快な情報とメッセージを伝える棚にすることで、在庫のない商品があっても確実に「客注取り寄せ」になる店づくりにつながっていくものと考えます。
このことは、「売れる本」のみ置くことを勧めることではありません。
管理されていない本を排除することを強調するもので、売れ行きが悪くても「売りたい本」であれば、ただ放置することなく、それに相応しい販売、展示方法をとるべきだということです。
ところで余談ですが、みなさんは本を実際に燃やしたことってありますか。
本を燃やすなんてとんでもないことですが、どうしようもない古い本とかは、ちり紙交換にもだせず、古本屋でも値がつかないので、やはり燃やすという選択肢はあると思います。
ところが、本というものは紙でできているものには違いないのですが、現実にはなかなか燃えないものです。
ページが閉じた状態では、間に空気が入らないので、木よりも燃えにくいというのが実態です。
それを燃やすには、紙を一枚一枚広げるという手間をかけないと、なかなか燃えないものです。一枚一枚開くことができれば、かなりのエネルギーを出します。
本を燃やすといえば、先になくなったアメリカのSF作家レイ・ブラッドベリの代表作『華氏451度』(1953年)がありますね。 言論統制の危険性を、紙が燃え始める温度(華氏451度≒摂氏233度)をタイトルにしたものです。
本を所有することを禁じられた社会を描いています。
このことは、本というものがただ単なる紙の情報というだけでなく、実際にものすごい物理的エネルギーの塊であることも意味しています。
1冊の本がもつ莫大なエネルギーを、私たちは読書とともに摂取しているのを感じます。
と思うと、「本を燃やす」という行為は、食の「安全」の代償に行なわれる家畜の殺処分と同じような罪悪感を感じますね。
(2012年にアップした記事を加筆訂正致しました)
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