昭和7年に寺が創建されたことをネットで知った。白道寮はその後、間もなく建てられたのではないだろうか。オイラがお世話になった昭和42年当時、すでに古い建物だった。庭に大きなキンモクセイの木が植わっていた。
夏休みになると寮生のほとんどが里へ帰った。それでも6名ほどが残っていた。ある夜、歩いて、否、走って5分ほどのところで盆踊りがあった。オイラと小池さんは覗きに行った。若い女の子がたくさんいた。二十歳前の若者である。江戸時代だったらすでに所帯を持って子作りに励んでいる頃だ。しかも男くさい寮と予備校の往復。当然異性を求める気持ちが湧いてくる。というよりそれ一途だ。
オイラは恥ずかしくて踊りの輪に入れない。どうしようか?と、そこで小池さんが酒を少し飲もう、と提案した。盆踊りが終わらぬうちにと二人で居酒屋へ走った。10分ほど上り坂を走った。少し飲むところが、ちょと時間が掛かりすぎた。すでに9時。オイラはあわてて会場へ急ぎ戻った。間に合った。
ところが二人は気分が悪くなってしまった。馴れないお酒と、転がるように坂を走ったため、すっかり元気がなくなってしまったのだ。賑やかな会場を後に、二人はすっかりしょげて帰った。
ある夜、小池さんがこっそりオイラの部屋を覗きにきた。本堂横の庭にアベックが来ているから見に行こうというのだ。真っ暗な坂を二人は息を潜めて登った。「居たいた」と言う。小池さんには見えるのか、おいらは暗くてよく見えない。白いものが動いている。二人は徐々にその白いものに近づいた。
3メートル程近づいたところで男が気づいた。「だれだ!」大きな声で怒鳴られた。二人は一目散で坂を転げ降りた。寮に飛び込むと、何もなかったような静けさだった。食堂で先輩二人が話し込んでいる。そこでオイラは小池さんが居ないことに気がついた。
心配になったオイラは、高下駄を大きく鳴らし、口笛を吹きながら本堂へ向かった。境内で小池さんに出会った。小池さんはいったん捕まったが、男を殴って逃げてきたのだという。捕まったことは本当だろうが殴ったことは眉唾ではなかったのか。
立ち入り禁止の境内に入ったアベックが悪かったのか、それを覗きにいったオイラが悪かったのか。まあ、無事でよかった。そんな真夏の夜の出来事だった。
夏休みになると寮生のほとんどが里へ帰った。それでも6名ほどが残っていた。ある夜、歩いて、否、走って5分ほどのところで盆踊りがあった。オイラと小池さんは覗きに行った。若い女の子がたくさんいた。二十歳前の若者である。江戸時代だったらすでに所帯を持って子作りに励んでいる頃だ。しかも男くさい寮と予備校の往復。当然異性を求める気持ちが湧いてくる。というよりそれ一途だ。
オイラは恥ずかしくて踊りの輪に入れない。どうしようか?と、そこで小池さんが酒を少し飲もう、と提案した。盆踊りが終わらぬうちにと二人で居酒屋へ走った。10分ほど上り坂を走った。少し飲むところが、ちょと時間が掛かりすぎた。すでに9時。オイラはあわてて会場へ急ぎ戻った。間に合った。
ところが二人は気分が悪くなってしまった。馴れないお酒と、転がるように坂を走ったため、すっかり元気がなくなってしまったのだ。賑やかな会場を後に、二人はすっかりしょげて帰った。
ある夜、小池さんがこっそりオイラの部屋を覗きにきた。本堂横の庭にアベックが来ているから見に行こうというのだ。真っ暗な坂を二人は息を潜めて登った。「居たいた」と言う。小池さんには見えるのか、おいらは暗くてよく見えない。白いものが動いている。二人は徐々にその白いものに近づいた。
3メートル程近づいたところで男が気づいた。「だれだ!」大きな声で怒鳴られた。二人は一目散で坂を転げ降りた。寮に飛び込むと、何もなかったような静けさだった。食堂で先輩二人が話し込んでいる。そこでオイラは小池さんが居ないことに気がついた。
心配になったオイラは、高下駄を大きく鳴らし、口笛を吹きながら本堂へ向かった。境内で小池さんに出会った。小池さんはいったん捕まったが、男を殴って逃げてきたのだという。捕まったことは本当だろうが殴ったことは眉唾ではなかったのか。
立ち入り禁止の境内に入ったアベックが悪かったのか、それを覗きにいったオイラが悪かったのか。まあ、無事でよかった。そんな真夏の夜の出来事だった。
